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2013年4月12日 (金)

金正恩を拉致?

 前回に引き続き、10日の「北ミサイル、今日はないね」フォロー記事である。「今日はない」という理由のひとつに『中国・ロシアが軍を移動させたり厳戒態勢に入っているという情報もない』と書いた。

 今日の毎日新聞の片隅に、「香港の人権団体・中国人権民主化運動情報センターは10日、中国軍瀋陽軍区の部隊が中朝国境に向かったと伝えた。不測の事態を警戒するためとみられる」とある。

念のため「レコード・チャイナ」をネットで見ると、複数の外電情報筋がこれに類した話をのせているが、米軍が展開しているような「不測の事態を警戒」する以上のものではなさそうだ。つまり、難民の大量越境に備えることが主で、どこかに肩入れすることが目的ではない、というのが大方の予想だ。

 今回の、北朝鮮の常軌を逸した挑発行動に最も脅威を感じている国はどこだろう。塾頭は中国だと思う。もちろん国境からわずか3、40㌔に首都がある韓国には、60年前の苦々しい体験もある。前回は何も言わずに攻め込んできたのに、こんどは韓国どころか日本・アメリカまで「火の海」にするという超過激予告発言。

 慣れっこになっている韓国人にしてみれば、かえって現実離れしていて、恐怖心が薄くなったのかもしれない。アメリカはどうか。本土に核弾頭を打ち込む能力があったとしても、まだ机上計算の段階で実行不可能と見ているし、グアムにしてみても、それに対応する軍事力は北の比ではない。

 本当は、ノドンの砲火を警戒しなければならないのに、左右ともに「平和ボケ」が多いせいか、マスコミが騒ぐほど心配しているとは思えないのが日本だ。その点中国は、朝鮮戦争で共に血を流した盟友で共通する一党独裁体制だから、気心知れたお仲間なのだろうか。

 答えはNO。長い歴史の中で、中国の対日観は、倭寇など断片的な事件をのぞき、容姿温雅(『旧唐書』)、進止容(かたち)あり(『新唐書』)などと尊敬や好感を抱かれることが多かった。反日感情などというのはごく最近、わずかな期間である。

 それに対して朝鮮、特に今の北朝鮮にあたる高麗地方の民族と漢民族の対立・対抗には宿命的な歴史があり、今でさえ歴史・文化のすみわけができていない。聖徳太子の時代に交流のあった隋帝国は、高麗の執拗な抵抗で滅んだ。あとを継いだ唐帝国もさんざん手を焼いている。

 「最も警戒すべき国は中国」というのが、最近知られるようになった金正日の遺訓である。中国が恐れるのは北が韓国に同化されることではない。北の失政で内部に動乱が起きたり、同国が戦場になったりすること、つまりシリアのようになってしまうことだ。

 大量の難民が発生し、国境の川を渡って中国に渡ってくる。そこには、中国の少数民族である朝鮮族が大勢住んでいる。チベット族やウイグル族ほど数は多くないが、彼らが別の意味で漢民族に警戒されていることを訪中の際知った。

 ずばり、北朝鮮の不安定は中国の不安定につながる。北朝鮮が戦争を起こして戦場と化すようなことがあれば、真っ先に軍を投入してでも秩序回復をしなければならないのは、韓国でもアメリカでもない。中国をおいてほかはないのだ。

 そこで、非常事態がおきれば難民対策とかそんなことではなく、中国軍の精鋭が平城を占拠、金正恩の身柄を確保する。そして天津あたりまで拉致し、中国の意にそう臨時政権を樹立する。もちろんアメリカに事前の了解をとり、場合によれば国連安保理にも連絡しておく。

 「そんなバカな」というなかれ。130年ほど前に実際に似たようなことがあった。1882年、軍の不満分子が国王の父親、大院君を担いで反乱、宮廷や日本公使館を襲って実権をにぎった。逃亡した国王の妻・閔妃がひそかに清軍の出動を要請。首都を制圧した清軍が大院君を拉致して天津に監禁し、清(大)に仕える事大政権を作らせた。これを壬午の軍変という。

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コメント

自民党No.2の石破幹事長は『北が撃つといってミサイルを撃ったら、グアムだろうが日本だろうが、被害が出ても出なくても戦争だ』と発言しているように、
北朝鮮の話で日本中で大騒動ですが、これはどうも日本限定の特殊な話らしいですよ。
世界の関心事は北朝鮮の暴発では無い。
今にも現実化しそうなイスラエルのイラン奇襲攻撃ですよ。
そもそも世界(特にアメリカ)のマスコミに北朝鮮が載ることは滅多にない。
最近アメリカのマスコミが北朝鮮を頻繁に報道しているが、論調は日本とは逆でアメリカの軍事展開が挑発行為にならないかとの心配です。
日本とは逆さまなのです。
ケリー国務長官も12日『オバマ大統領は多くの訓練中止を命じた』と方向転換を示唆している。
3月1日から始まっている米韓軍事演習などは前任者のクリントン国務長官とかゲーツ国防長官の方針だが、軍事力を誇示して北朝鮮を押さえ込むとの考え方は矢張り危険であるばかりか成功する見込みはゼロですよ。

投稿: 宗純 | 2013年4月14日 (日) 08時16分

イスラエルにしろイランにしろ指導者は一応選ばれて出てきた人でそれなりに修羅場をくぐっています。また、世界で全く孤立しているわけでなく、どこかにルートをつなげています。

北の場合は、国連代表とアメリカの間に窓口はあるようですが格が違い過ぎてあてになりません。北と中国の間には正恩の叔父という線があったようですが、どう機能するのか、最近は全く不明です。

危惧されるのは大戦前の日本同様軍をコントロールする(できる)主体がどこにあるのか混とんとしていることです。筋書があるわけではありません。最大限の警戒をしておくのは当然でしょう。

投稿: ましま | 2013年4月14日 (日) 21時30分

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