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2013年3月19日 (火)

歴史認識が合わないわけ

 Dscf3805 写真は塾頭が不用意に買って後悔した本である。表紙に書かれた文字を帯を含めて書き写す。
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 日本・中国・韓国=共同編集
      未来をひらく
        歴史
   東アジア3国の近現代史
日中韓3国共通歴史教材委員会

日・中・韓の研究者・教師らが共同編集・執筆し作り上げた国境を越えた近現代史!
「第1版」発刊後、再び3国共同で細部の記述のズレを点検・検証、発刊一周年を記念して出版する3国完全修正版!
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 なぜ後悔したかというと、明治維新以降一貫して日本が加害者、中・韓が被害者という視点で書かれており、日本人が担当する部分でも「この天皇の政府のもとで、日本は近代化のための政策と、アジアへの膨張政策をすすめていくのです」というパターンになつていることである。

 塾頭は、日清・日露戦争は膨張政策でなく、西欧列強から侵略をふせぐ自衛の側面が強いと判断しており、中国・朝鮮の安定が主目的で大陸への膨張を企てるような実力はなかった、と見ている。

 したがって、明らかに侵略侵略に踏み込むのは、第1次大戦後の昭和になって、下火となる列強帝国主義に逆行するように、対華21カ条要求で大陸の権益を拡張しようとしたことに始まる。それまでの間、いろいろな人びとが3国の友好・協力関係を模索し努力した事実は、書かれていない。

 加害者と被害者にわけた歴史は歴史ではない。正確さもなければ公正さもない。悲惨な戦争を防ぐためにどうすればいいのか、という参考にもならない。アメリカとイラク・アフガンの戦争で見よう。

 アメリカは9.11でニューヨークの高層ビルなどを破壊された被害者である。襲ったのは、加害者・ビンラデイン配下のテロリストで、大勢の市民が殺された。テロリストは極悪人で抹殺すべきであるとする。同書でも5.15事件や2.26事件をテロリズムだけでかたづけている。
 
 「自爆テロがどうして起きたのか、なぜアメリカがテロリストの標的にされなくてはならなかったのか」の分析や、背景説明がない。これでは完全な歴史にならないのだ。

 本書は、日14、中17、韓23、合計54人の共同編集・執筆ということになっている。ドイツのフリードリヒ・エーベルト財団の支援と寄付が活動資金になっているらしいが、ドイツではナチスに対する深甚な反省が根についている。したがって近隣国から日本のような非難にさらされることはない。

 しかし、第1次大戦からヒトラー出現までの歴史すべてをナチスによる加害などと統括しているわけではないだろう。中・韓からの抵抗はあろうが、歴史認識を合わせるということではなく、日本の姿勢や知見は正しく主張し、場合によっては両論を併記する――。

 これがなければ「新しい教科書をつくる会」の主張に対抗でず、歴史認識に大きな亀裂が生じたまま、より対立が深まる。そのことの方を恐れるのだ。

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コメント

「日清・日露までは自衛の戦争、以後は侵略へ」という理解は司馬遼太郎流の歴史観にも通じるもので、専門家はさておき、日本の一般社会の人々の間ではいわば常識ですね(最近はもっと右巻きの人たちが増えて、ややこしいことになってきましたが)。そういう立場から見れば、塾頭様の御理解も妥当なところなのでしょう。
ただ幕末・維新当初から征韓論は存在したし、日清戦争以前から朝鮮・中国への強硬論や侮蔑意識が相当激しいものだったのも確かで、「中国・朝鮮の安定が主目的で大陸への膨張を企てるような実力はなかった」と簡単に言い切れるか大いに疑問です(まあ「実力が無かった」点はある程度確かでしょうが)。そもそも日本の近代化自体が覇権主義を抜きにしては成り立たない性質のものだった、という芝原拓自氏あたりの見解は今でも大いに説得力があると思いますよ。
どだいそうした拡張策が日本の自衛のために必要だったにしても、そのために特に朝鮮半島で行われた諸政策(江華島事件、壬午軍乱の事後処理、日清戦争開戦時の朝鮮王宮攻撃等々)が現地でどれほど歓迎される筋合いのものだったかは、謙虚に考えて損はないと思います。近代至上主義の独善の押しつけという点で、欧米植民地主義と日本の施策に本質的な違いはなかったのではないかという気がしますね。その限りでは、「朝鮮・中国は被害者、日本は加害者」という図式も虚構とは言い切れないし、先方の切実な心情を斟酌するべきだと思います。味噌も糞も「反日教育」のせいにして先方を罵倒してよしとするような昨今の風潮には、どうにも納得がいきません。
誤解なきよう付け加えておけば、私とて「だから先方の理不尽な要求もすべて受け入れろ」などと主張する気は毛頭ありません。それに上記の「加害者・被害者」の図式はあくまで過去のことであり、特に韓国などは経済成長のおかげで、今や欧米や日本に次ぐくらいの国際資本主義体制の「収奪者」側(苦笑)になりかわっているわけで、その辺は先方にも大いに自覚してもらう必要があるとは思っています。ただ過去の歴史認識という点に的を絞れば、日本側にまだまだ自省の余地は大いにあると感じています。

投稿: ちどり | 2013年3月20日 (水) 00時46分

日本の不幸がアメリカの飯のタネ  

だから

日米地位協定破棄し前原創価公明党テロ組織破防法消却して福一石棺桶化しよう!


日本人常民「独立と平和の真善美革命」

投稿: 通りがけ | 2013年3月20日 (水) 13時52分

コメントありがとうございました。

司馬遼太郎流の歴史観と同じだそうですが、塾頭のは文献などを調べていくうちにそうなったので、オリジナルと言わせてもらいます。(*^-^)

豊臣秀吉は論外として、幕末の吉田松陰、維新早々の征韓論の一部、あるいは山形有朋あたりが大陸侵略を口走ったことがありますが、「富国強兵」のスローガンには「侵略」を意図したものだとは思えません。

むしろ頭山満などの右翼をはじめ、大アジア主義を唱えるような逆の史料の方が多いように多いように思えます。

ただ、日清にしろ日露にしろ日本が外国に出ていってしたことですから、相手から「侵略」といわれれば返す言葉がありません。

それと、歴史を正確に把握することは別です。国が違えば「歴史認識」と違って当たり前。いいたいことをいわない、迎合するすれば平和だ、とするのは「歴史と正しく向き合う」に反し、むしろ本当の友好を損ねることになると考えたいです。

投稿: ましま | 2013年3月20日 (水) 21時12分

追而 「近代至上主義の独善の押しつけ」は、列強の帝国主義・植民地主義を跳ね返すために、日本のような「ご一新」がなければ対抗できなくなるという、それがまた日本の安全にとって大きな脅威になるという危機感もあったと思います。

ロシア軍の対馬上陸、イギリスの巨文島占領など英露の不穏な行動は、日米安保のない時代、朝鮮の腐敗した両班主導政治と責任をとらない中国の冊封体制では怖くて仕方がなかったのではないでしょうか。

投稿: ましま | 2013年3月20日 (水) 21時27分

御回答ありがとうございます。
色々思うところはあるのですが、歴史認識問題となると日韓、日中のみならず、日本人同士(あるいは韓国人、中国人同士も)でも不毛な水掛け論になりがちですので自重したいと存じます。ただ二点だけ指摘させて頂くなら、まず日朝修好条規が日米通商修好条約以上の不平等条約であったことの意味は象徴的だと思います。以後の朝鮮と欧米諸国の条約でもその内容が均霑されたわけで、日本の拡張策の一面の本質を表していると思っています。
また追而として述べられたお話は当時の日本側の認識としてありえたことだと思いますが、「だから仕方ないこと」と侵略を蒙った先方が納得する筋合いのことでもないわけです。先方には先方のやむにやまれぬ事情、立場があったわけですから。先方の立場に最低限の敬意、理解を行う努力はいわば人付き合いの基本であって、「迎合」とも、ましてや「自虐」とも違うものだと考えています。

投稿: ちどり | 2013年3月21日 (木) 00時48分

私もこの本の第一版最近中古で買いました。この本で問題だと思うのは、日・中・韓の歴史がとびとびで記述され、歴史の流れが余りにも理解しにくいという事です。また慰安婦の方が描かれた絵を載せていますが、人を鎖で縛り、これから銃撃しようとしています。勿論お気持ちはわかりますが、これは子供向けであれば余りにもやり過ぎです。
個人的には、日・中・韓の近現代史毎に教え、国が重なるところはその都度記述する方が良いと思います。
同時に太平洋戦争においては、「作戦と指導者が日本国民にとってもクソだった」的な記述は必要です。インパール作戦について載せている教科書が無いのはかなり右翼の基準で見ても左翼の基準で見ても問題です。
もしインパール作戦について国民的な知識があれば「東條がなぜ靖国にいる」と言う話になるでしょう。また、戦争における加害行為を記述する場合、戦場における異常心理や殺人的リンチについても記述するべきです。そうでないと、なぜ普通のおっさんたちがあのような残虐行為をしたのか誰も理解できません。丸山真男さんのいう「抑圧移譲」、小田実さんの言う「被害者が加害者になる」、ザ・ブルーハーツの言う「弱いものが夕暮れ、さらに弱いものを叩く」を教える必要があります。誰でもあんな目に合えば、凄まじい残虐行為をするに決まってます。「自分はどんな目にあっても、残虐行為をしない」という自信のある人なんていないはずです。むしろそんな人の方が疑わしい。
批判は承知で言いますが、いま日本軍の加害行為を告発している人たち(これは確かにとても大事)は、「
被害者に寄り添う」というよりも、「戦争に行った父親たち年長世代を批判する」為に、旧日本軍の加害行為を出汁にしている感が少しあります。

投稿: けんちゃん | 2013年3月21日 (木) 20時42分

追伸
批判は承知で言いますが、私自身日清・日露戦争の完全な受益者です。なぜならもしあの戦争が無ければ、朝鮮半島は間違いなくロシア・ソ連領になりました。シベリア鉄道が釜山まで敷かれ、ロシア・ソ連は日本を侵略しようとしたでしょう。最悪日本が共産化、もしくは分断され、朝鮮戦争に様なことが起きたかもしれません。良くて反共の防波堤、韓国が軍事政権下の悲惨な国になりましたが、日本がそうなりました。
植民地支配するにしても、せめて朝鮮半島だけで留め、創氏改名と神社崇拝を強制しなかったら、まだ良かったと思います。
ただどちらにしろ、誉められた行為をしていませんから、詫びなくてならないことだらけです。

投稿: けんちゃん | 2013年3月21日 (木) 20時58分

ちどり さま
けんちゃん さま

コメント、かさねがさねありがとうございました。

ベースになる事実認識には一致点が多く、それぞれに感想を申し上げなくてはならないのですが、未熟さもあって考えをまとめ切れません。そこで、とりあえず新投稿「尖閣&仏像盗難」をかわりに書きました。

乞、ご笑覧!。

投稿: ましま | 2013年3月21日 (木) 21時24分

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