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2013年2月 9日 (土)

レーダー口撃「撃ち方止め」

 前回のエントリ「中国も困っている」では、「習総書記・軍事委員会主席が選択できる方法は、大きく二つに分かれる。ひとつは、今回の事件が国際的に中国の威信・信用を大きくそいだということで、指揮した責任者を処罰する、もうひとつはことをあら立てず黙殺するということだ」と書いた。

 その後の中国当局の発言をみると「顔に泥を塗った」「事実と異なるねつ造」(外務省)、自衛隊と遭遇したことを認めながらも「火器管制レーダーは使用していない」(国防省)などに加え、日米同盟強化を狙った国際プロパガンダであるという主張になっている。

 しかも、日本側の指摘から3日も時間を空けている。これは、上述の二者択一のうち後者の「黙殺」を選んだものと思われ、例により口汚いののしりや攻撃的用語をちりばめているが合理的反論としては弱い。連日のようにあった尖閣周辺の水域での挑発行動が、事件後はストップしているというから、軍を中心にかなりのリアクションがあったと考えるのが至当である。

 マスコミや関係筋による「中国中枢部の意向を受けたものではなく、軍下層部の跳ね上がり行動」という推測もほぼ定着してきた。党による文民統制をいかに確立していくかが習首脳部にとって大きな課題となるが、そのためには、日米韓などの軍事的圧力の強化や、日本の右傾化(靖国参拝などの)などで中国国内が不安定化すること極力避けなければならない。

 つまり、反日デモなどで軍強硬派の発言力を強めてはならないのだ。前回も指摘したが、来月行われる全人代を控えて、中国指導部にとってはまさに正念場に差し掛かっている。このような時、小野寺五典防衛相は今日午前、読売テレビで海上自衛隊護衛艦への射撃管制用レーダー照射を全面否定したことについて、証拠データの開示を検討するという意向を表明した。

 これは、中国政府の「黙殺」方針を荒立てようとする行為に他ならない。中国は「顔に泥を塗るようなことはしないでくれ」、と「周章狼狽」から「哀願」調になってきていることを察しなければならない。

 中国は「それが本当なら証拠を見せろ」などとは決して言わない。万一どっかが言ってきても「それは自衛隊の軍事秘密もあるのでできない」と応ずるべきだ。小野寺氏も外務省の経験を持つ人だ。当然そんな配慮はあるだろうが、国内あるいは閣内の右寄りタカ派向けのポーズだと見る。

 前回、習総書記にも花を持たせるべきだ、と書いた。本件の果てしない「口撃」合戦は、「撃ち方止め!」の号令を安倍首相が今下か時に来ている。オバマへの「みやげ」は、一円のカネもかからずこれが一番だろう。

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

この問題はアメリカが一番困っているかも知れませんよ。
安倍晋三首相は前回の首相就任時の靖国不参拝を痛恨の極みと国会質問で答弁しているので今年の参議院選挙の終わったあとの8月15日に参拝する覚悟のようです。
kレでは日中が大騒ぎになるの必定ですが、
今回はその前哨戦。
安倍晋三としては相手に叩かれる前に叩いた計算なのでしょう。
ただし、これは安倍晋三が自衛隊(防衛省)に騙された丸っきりの勘違い。
レーダー照射ですが、失礼で危険であることは事実ですが、現場では日常茶飯時の普通のことらしいのですよ。
小泉政権下で国会答弁の記録があるし、民主党政権下でも起きていた。
ソ連軍相手では日本側もロックオンしていたのです。
ですから今回だけ日本が大騒ぎしている真意を中国としても測りかねているのでしょう。
レーダー照射が起きたのは先月であり、自衛隊から外務省とか防衛省の大臣や首相に報告されたのが1週間後。
聞いた安倍総理は即座に好評を防衛大臣に指示、急遽その日のうちに緊急記者会見で明らかにしたらしい。

投稿: 宗純 | 2013年2月10日 (日) 16時41分

「らしい」だけでは説得力がありません。中国軍部は「ロックオン」が異常な事態であることを認め、照射を否定しているのですよ。過去のことは必要なら国会やマスコミが事態を明らかにしてほしいものです。

一番大切なことは、過去のことではなく今起きていることを間違いなく処理し、平和に導くことです。読売などは傷口を広げることに熱心なようですが、「撃ち方やめ!」を号令できるのは残念ながら今は、安倍首相しかいないのです。

投稿: ましま | 2013年2月10日 (日) 17時15分

>これは、中国政府の「黙殺」方針を荒立てようとする行為に他ならない。中国は「顔に泥を塗るようなことはしないでくれ」、と「周章狼狽」から「哀願」調になってきていることを察しなければならない。

なぜここまで気を遣うのでしょう?すべて先方の身から出た錆ではないのですか? 
上の世代のこういう姿勢が、いわゆる”右傾化”とされている反応を多くの人に生んでいると思います。ロックオンされた日本側が我慢するべき、としかとれないような異様な意見があるから、”左”に寄り過ぎている、と若い世代が思ってしまうのではないでしょうか。そういう意味では中国に気を遣い過ぎた人たちの態度が、”右傾化”を生んできたのではないかな、と思います。

投稿: herosu | 2013年2月10日 (日) 23時02分

『らしい』ではなくて事実ですよ。
ただ正式発表されていないだけ。
小泉時代の件は国会の記録にも残っているし、民主党政権下でも起きていたことは関係者が証言している。
ですから、レーダー照射事態は珍しくない。
今回だけ安倍晋三やマスコミが騒ぐのが珍しいのです。
日本では政府トップの総理大臣までが大騒ぎしているのですが、
それなら合理的に判断すれば、何か今回だけは別の発表されていない別の理由があったのでしょうね。
これは推測で『らしい』としか表現できない話ですいよ。
『○○だ』と言えば、それの方が無責任ででしょう。
今回の日中の騒動ですが、日本側は政府を挙げての大騒動だが、相手の中国は外務省の報道官だけですね。

今回、別に日中が軍事衝突したわけではないのですよ。
これは本来なら防衛省ではなくて外務省が前面に出てくるのが筋ではないでしょうか。
ところが不思議なことに外務省が脇役ですね。
外務大臣の発表が何も無い様に思うのは私だけでしょうか。
朝日新聞では防衛省の突出ぶりに辟易している外務官僚の恨み節みたいな記事もありましたが、
本来なら、『抗議は公表前が常識』であり『防衛省は騒ぎすぎだ』と考えているのです。

投稿: 宗純 | 2013年2月11日 (月) 09時53分

毎日新聞コラム風知草の最新の「証拠の示し方』で山田孝男が、
『証明によって得るものもあれば、失うものもある』と、
これ以上の騒動を起こさないとの、
このブログタイトルの『レーダー口撃「撃ち方止め」』
と同じ方針を示していますね。
多分、これは今の政府方針を忖度した記事でしょう。
それなら、そろそろ幕引きするでしょう。
ただ、この山田孝男は情報公開の弊害に30年前の大韓航空機撃墜事件を例に出しているが、
不思議なことに、記者なら間違うはずがない程度の明らかな間違いが書かれている。
内容的にはデマか明らかな間違いが多すぎますが、これが実力なら痴呆状態が末期症状ですが、故意の間違いかも知れませんね。

投稿: 宗純 | 2013年2月11日 (月) 12時04分

宗純氏が「中国も困っている」でコメントしている「挑発の記事は3年前には産経一社だけだったのが、今回は全マスコミにまで広がっている」と、読売の煽り。

そしてレーダー照射の実態の情報と日本のメディアの国民に対するいんペい体質。

元を辿れば、自らは一切核も持てないという無条件降伏だったことを忘れてしまっている”未だ地に着かない民”の一語に尽きる。

 いずれにせよ尖閣も領土とする琉球沖縄にとってはとんだ迷惑だ。

ドンパチなどあるわけない。

沖縄は離脱独立するため忙しい。

これまでのように頼らないでもらいたい。

マスコミの無節操な「沖縄周辺でドンパチ」想定報道は迷惑だ。

 そのような沖縄周辺だけの"有事"を前提とした騒動は、「アジアの一部の琉球列島が再度『国』として急激に現れ、3国自らの政治経済のバランスを崩すのではないか?」-という懸念の表れとして日中と米国が作った「琉球独立」を妨害するための虚構。

中国の艦船や航空機が日本の領海や領空を侵犯しているというのも「日米中の陰謀」。

こうなったらアメリカと中国へはこれ以上仮想ドンパチするなら琉球列島以外の「日本列島周辺で仮想ドンパチ」すること、と発信しておくとしよう。本村

投稿: 本村安彦 | 2013年2月11日 (月) 14時15分

宗純 さま

私はそういう「事実」を知りません。レーダー照射はどんな船でもやっています。それがどういう種類のものかで違います。公海上でいきなりロックオンという砲撃用のレーダーを複数回長時間照射したというのは、どうしても正当化できません。

だから、中国国防相は事実無根と否定せざるを得なかったのでしょう。過去、どのようなことがあったにしろそれが今に影響することはないと思います。

投稿: ましま | 2013年2月11日 (月) 14時21分

本村さま

「沖縄のそばでドンパチ」は迷惑、全くその通りです。アメリカは本来沖縄などどうでもいい。ただ沖縄の基地は居心地がいいだけでなく世界一安上がりですむから手放したくないだけ。

独立するかどうかは沖縄人が決めることです。しかしヤマトはそれを望んでいないし、ウチナーにとってもそれがプラスになるはずはないでしょう。

沖縄独立は、中国の保護国への道です。米軍基地をなくすための日本向けブラフとして使えるだけです。

投稿: ましま | 2013年2月11日 (月) 14時44分

herosu さま

まず最初に今回の両国の対応ぶりを見ましょう。一連の両国の応酬は、世界の受け取り方で<日本の方が勝っている>と見られていることです。本文では「周章狼狽」とか「哀願」という言葉まで使いましたがそう理解されなかったのでしょうか。
 
 口汚い日本攻撃の発言もそうです。「弱い犬ほどよく吠える」といいますが、北朝鮮も同じですね。その弱さは85%は内部に起因します。そこいらは、国際世論もよく見ています。

日本では、中国を一体として見てしまいますが、広い国土、雑多な人口、硬直化した党組織のなかで、党中央、軍部そして宣伝部、その下に位置する国務院などがあり、来月の全人代を前に熾烈な権力闘争が続いています。

習氏が国家主席に選ばれるはずですが、習氏の手腕はいかに軍の暴走をおさえて軍の行動を把握しきれるかにかかっています。毛沢東・鄧小平は軍出身ですからおさえが利きました。

軍を抑えきれなくなるとどうなるか、日本の歴史が証明していますね。日本としては、相手の弱みをついて軍の独断専行を促すような口実を与えてはなりません。

>「なぜここまで気を使うのでしょう?」

答えは、日本の国益になるからです。なお、世代云々は当たっていません。時間があれば
「中国の思想」
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-7472.html
なども見てください。別のコメントでは「右翼」と叱られたこともあります。


投稿: ましま | 2013年2月11日 (月) 16時16分

ましま 様

 そのような意見のソース情報。実は130万琉球庶民とはかけ離れたほんの1割の数といった極一部の者の意見。

しかもその僅かな意見でさえ、沖縄周辺だけの"有事"を前提とした官製報道に始まる。

そんな彼らとてみな、日中とアメリカの妨害がなければ、できれば自らのかつての国、琉球が「尖閣周辺の地下資源を財源にアジア諸国のど真ん中で独立」してもらいたいと心底願っている。だからこそ、そんな彼らの姿が「基地と経済のリンク」のためのブラフに映るのだろう。

 それと、130万琉球庶民は中国との関係について日本に対する距離感よりもむしろ、はるかにどころかアメリカに対するそれよりも離れていて、保護、被保護の関係は皆無。

また、130万琉球庶民は中国艦船や航空機が日本の領海や領空を侵犯しているというのも「日米中の陰謀」ということが分っているので、じつはそれはあまり迷惑ではない。

問題は、67年前のトラウマが蘇りPTSDに陥るから迷惑極まりない。

投稿: 本村安彦 | 2013年2月11日 (月) 17時01分

小野寺防衛相の「国際的な基準に合わせ間違いない対応を備えている」という発言をマスコミ(一部?朝日新聞とも言われていますが?)が曳光弾・信号弾などと表現。
中国メディアの質問ですから、小野寺防衛相も気を付けて発言したことでしょう。
その報道を受けた彭光謙少将が「日本が(警告射撃として)曳光弾を1発でも撃てば、それは開戦の1発であり、中国は当然、遠慮なく反撃せねばならない。(日本に)2発目は撃たせない」と発言しています。
ロックオンはあってもおかしくないでしょうね。
それと宗純さまが仰る日本によるレーダー照射ロックオンは、日本の領海領空侵犯における警告行為ではないですか?
無線・機体を揺らすなど何段階かの警告は国際ルールではないですか?
今回は排他的経済水域中間線より日本側とか、公海上と言われていませんか?

投稿: 有爺 | 2013年2月12日 (火) 00時53分

有爺 さま
こんにちは。

榎本武揚は五稜郭明け渡しに際し、官軍・黒田清隆に『海律全書』を手渡し「日本国のために役立ててくれ」といいました。

勝海舟も軍艦・咸臨丸でアメリカに向かう前から国際公法をしっかり勉強しているはずです。西欧文明の取り入れに熱心でした。

中国の海軍が外洋に出始めたのは、つい最近で「ルールも礼儀も知らない田舎者」と評する関係者もおり、中国側には「公法など列強侵略者が作ったもので、守る義務はない」といった人もいるとか。

ウソかホントかわかりませんが、中国にはいろんな人がいるという証左ですね。

投稿: ましま | 2013年2月12日 (火) 07時27分

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