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2013年2月24日 (日)

困惑する家父長的アメリカ

 アメリカがヨーロッパの植民地から戦争で独立を勝ち取り、西部開拓を推し進めて大陸を横断、さらに西欧列強と肩を並べる帝国主義国の仲間入りをするのは、19世紀後半である。そして1898年には米西戦争でグァム、フィリピンまで手に入れアジアに迫る。

 アメリカは、植民地政策で自由、平等、人民主権といった「価値観」を掲げ、征服地の被支配者たちが秩序ある社会を形成し、自立していけるよう助けること――、これを西崎文子成蹊大教授は、「アメリカの意志に従う政権を『民主的』なものとして樹立、保護をしていく『家父長的』な帝国主義支配」としたとする(『アメリカ外交とは何か』岩波新書)。

 安倍首相がオバマとの会談を終えたことをメディアは一斉に伝えた。会談の映像にテレビのコメンテーターの印象は、「互いに笑顔で……」とする一方、「どことなくぎこちない感じもする」というのもあった。塾頭も後者の見方に賛成する。

 しかし、ぎこちないのは安倍首相の方だけで、大統領の顔は「親の心子知らず」、人前で盛んに強がりをいう子供をもてあましているという感じだった。日本の新聞は、読売の恥ずかしくなるような安倍首相ヨイショ記事以外は、一歩引いた感じで論評している。

 オバマの態度に、前述の『家父長的』アメリカを思い出した。父親は絶対、家風に沿わない子どもは何が何でも従わせる。「威張った言い方」(久間元防衛庁長官)で迫ることも一再ではない。しかし反面、「切っても切れない親子の縁」といって安心もさせる。

 残念ながら安倍首相は、「価値観」の合言葉さえ唱えれば父親と意志疎通ができるという、幼い子供を演じたぎこちなさであった。安倍首相の「美しい日本」は、オバマの「美しい世界」とステージが違うということに気がついていないのだ。

 しかも、アメリカ外交の伝統的精神基盤であった「家父長的」進出は、ここにきて大幅に見直さなければならない時期を迎えている。家父長の成功例は、今や唯一日本を残すだけで、あとはすべて失敗といった様相を呈している。

 おひざ元の中南米がそうだ。家父長といっても軍、CIA、関税撤廃、資本進出などあらゆる粗暴な手段を用いたため父親の権威はどこにも残っていない。半世紀を経ずしてキューバ、ベネズエラをはじめ、ほとんどといっていいほど反米国家になってしまった。

 近くはイラク、アフガニスタンで親米的な政権が民主主義的手続きにより生まれたはずなのに、国民の反米感情は強く、アメリカは何の果実も得ることなく撤退せざるを得なかった。その余波はアラブの春として中東・アフリカ各国に及び、アメリカの盟友・イスラエルは、イスラム原理主義勢力の包囲網の中で孤立することになってしまった。

 オバマはそういったアメリカの将来を揺るがしかねない難問を内外に抱えている。そんな時、尖閣には支援を、北朝鮮に制裁を、集団的自衛権で、などといっても、アメリカおやじは「勝手にどうにかしろ」と言いたくなるだろう。ただ、唯一の家父長的成功例、日本まで失うようでは、アメリカのフロンティア魂が大きく傷つくことだけはたしかである。

 日本の外交が大人になる日はいつ来るのだろうか。

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

自立する大人になるためにも、憲法9条を破棄し核武装です。

投稿: makoto | 2013年2月25日 (月) 10時20分

憲法9条に核武装を禁ずる規定はありません。

ただ、「ミサイル成功、核実験成功。大元帥様のおかげで強盛大国になった」と手放しで喜ぶ子供のような国をまねしたいのなら、その国に移住してはどうでしょう。

投稿: ましま | 2013年2月25日 (月) 13時03分

誤解を招く表現でしたね。
訂正します。
「9条を破棄し、さらに核武装です。」

核武装は、アメリカ、ロシア、イギリス、フランスなどの先進国もしていますが。

投稿: makoto | 2013年2月25日 (月) 18時22分

アメリカ・ロシアはすでに核軍縮を進めている国です。オバマはさらに思い切った核軍縮を進めるため先頭に立つ意向です。

逆に世界の冷たい目をよそに、核開発を強引に進めたいのがイランと北朝鮮です。

さあ、どっちの仲間に入りますか。

日本は、原子力爆弾の洗礼を2度も受け、福島でも放射能で苦労し、核に対する高い技術とブルトニュームなどの保有も高水準にあり、北のミサイルとは格段に違う衛星打ち上げ技術もあります。

核軍縮のトップで活躍する資格は十分にあります。つまり「先進国」なのです。核武装をしたがる国の仲間には入りたくないですね。

投稿: ましま | 2013年2月25日 (月) 20時10分

>アメリカ・ロシアはすでに核軍縮を進めている国です。オバマはさらに思い切った核軍縮を進めるため先頭に立つ意向です。

でも、持ってますよね。
無くすつもりはないでしょう。

>逆に世界の冷たい目をよそに、核開発を強引に進めたいのがイランと北朝鮮です。

何年か前に、その冷たい目に耐えて核武装したインドとパキスタンについては、今は誰も批判しませんね。

>さあ、どっちの仲間に入りますか。

アメリカですかね。
いったん核兵器を持って、そして世界が、特に中国が核廃絶するのなら、廃棄したらいいでしょう。
まあ、国の規模、人口から言って、イギリスやフランスなんかを目指すのもいいんじゃないですか。

投稿: makoto | 2013年2月26日 (火) 17時06分

アメリカがずば抜けて多い核弾頭を持っているせいで、それと張り合うのはばかばかしいからやめておこう、というのがロシアと中国です。

その意味でアメリカのは抑止力が働いていると言えますが、地球が何個も破滅するような数に達しているので、核競争には意味がなく、持っていても使えないことを知っています。

インドとパキスタンは、カシミール紛争拡大防止の両国間限定の抑止力です。イランはイスラエルと張り合う意味があるけど、それ以上ではなく、北朝鮮のような向こう見ずではなさそうです。

イギリス・ドイツもNATOの一員として配備してますがロシアの脅威が減れば縮小したいところです。

投稿: ましま | 2013年2月26日 (火) 18時06分

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