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2013年1月21日 (月)

シェール革命がやってきた

 1975年、アメリカの原油生産高は30億5500万バーレルと、サウジアラビアの26億3700万バーレルを大きく引き離す世界一の産油国でした。しかしその年、すでに約600バーレルの原油・製品を輸入しないと国内需要を満たすことができない巨大消費国となっており、現在も世界の需要量の30%前後を北米で消費しています。

 しかし、原油の生産量はサウジが世界の12%、アメリカ7%と逆転、大量の輸入に頼らなければならなくなりました。ご存知のように、アメリカの富強はメジャーズと呼ばれる世界の石油市場支配が大きな力になってきたのです。

OPEC産油国の油田国有化などにより、メジャーズの威力は減少していますが、石油流通面での隠然とした力は維持しています。かつてはガルフ・コーストといって、アメリカ南部のメキシコ湾岸からの積出し価格が世界標準と決められ、現在はニューヨーク・マーカンタイル取引所やドバイなどの商品先物取引の一定期間平均価格が基準になっています。

 そういったことから、自前の資源や独自の取引先を持たない日本の電力会社は、LNGなどを福島の原発事故以前から割高な長期契約の固定価格で輸入せざるを得ませんでした。現在も原発再開ができないなら、当然買い付け量がふえるだろうと足元を見られ、高値に張り付いたままで、電気料金値上げの口実にされています。

 そこに、世界のエネルギー事情に大きな地殻変動をもたらす明るいニュースがあります。それはアメリカで開発が進んでいる「シェール・ガス(オイル)」の存在です。どんなものかは、テレビ・新聞などたびたび解説されているので、ここでは省略します。

 シェール・ガスの開発成功で09年にアメリカが世界最大の天然ガス生産国になりました。また、シェール・オイル(原油)は17年に世界最大の産油国になる、とIEAが発表しました。現在の100ドル/bl前後に高止まりしたままの原油価格が続けば、アメリカが中東からの原油依存を脱却し、自給できる日も遠くないとされています。

 日本はアメリカのようにはいけませんが、出光興産やJX・エネオスなど石油系のガス会社は、中東産の約半額でアメリカからLNGを輸入する契約をすでに締結済みです。また、鈴木宗男氏が喧伝するように、ロシアが日本向けのガス輸出に熱心で、今後ガス輸入に関してはバーゲニング・パワーとなりそうです。

 そこで、日本は国際的にどう立ち回らなければならないでしょう。まずアメリカの変化です。エネルギーの自給自足が見通せるようになればこうなるかも知れません。

・米国の貿易赤字が急速に減少し、ドルの価値が高まる。
・メジャーズに代わってインデペンデントと称される米国各地の産油業者が活況を呈し、石油化学その他製造業の復活により景気が立ち直る。
・アメリカ国内の原発新設が再び凍結される。
・石油利権確保のための外交努力や軍事力維持に関心がなくなる。

 中国・ロシアにも膨大なシェール・ガスが埋蔵されているとされています。しかし、開発には大量の水が必要で、その上開発のためのインフラ整備がなくてはならず、過去石油開発が進んでいたアメリカとは環境が違います。新規開発には水資源や環境関係の高い技術を持つ日本などの協力が必要でしょう。

 したがって、日本同様中国はエネルギーの安定供給が欠かせません。アメリカの後退を受け、中東産油国への影響力増大、シーレーン防衛などでとって代わろうとするかもしれません。日本にとっては厄介なパートナーということになるでしょうか。

 日本がこれから期待するのは海洋エネルギーです。潮力や波力といった再生可能エネルギーへのつなぎには「メタンハイドレード」採取技術確立が急務となります。メタン(天然ガス)は既に自動車エンジンや暖房のほか発電にも使われていますが、100%石油の代わりというわけにはいきません。

 以上のような世界のエネルギー事情の中で、原発依存を捨てないということがいかに無謀で保守的な考えだということがわかるでしょう。原発ゼロをはっきり目標として掲げ、変化する世界情勢を的確に把握し、経済外交を展開することや、国をあげて新エネルギー開発を急ぐことです。

 TPP参加が有効であるということなら、それも前向きに考えていいでしょう。日本は大変な危機に遭遇しているとともに、最高のチャンスにも直面してると言えるのではないでしょうか。

(数字等は『週刊エコノミスト』1/22、『石油便覧』日本石油、ほかを参照)

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