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2013年1月13日 (日)

「ビンタ」を深刻に考える

 大阪市立高校2年の男子生徒が、所属するバスケットボール部顧問の男性教師から体罰を受け、その翌日に自殺した件だ。報道はにぎやかだが、橋下大阪市長をはじめ非難は、「教育上すこしならいいが限度を超えている」というものと、いじめによる自殺と同様「学校の校長や教育委員会の隠ぺい体質」などに要約される。

 読売新聞社説は、「肉体的苦痛を与える体罰は、いかなるケースでも認められない」とした。塾頭の考えは違う。肉体的苦痛ぐらいで自殺などはしない。人としての尊厳を奪われ人格を無視されて我慢のできる年代ではない。基本的人権を教師の立場にいる者から簡単に否定されたからだ。

 東京新聞の社説は、「旧日本軍をほうふつさせる」と書いているが、その12文字だけで、とりたてて掘り下げているわけではない。塾頭はもっぱらこの面から警鐘を打ち鳴らしたい。戦争も軍も遠い歴史になった現在、共感が得られなくとも知識だけは持ってほしい。

 「面目」とか「面子」という言葉があるように、顔面は人にとってもっとも大切で真っ先に守るのが本能だ。そこを無防備にさらさせておき平手で張るというのは、相手に屈辱と無力感を与えることを目的としている。帝国陸海軍仕様の軍人に洗脳するための伝統的教育法だ。

 横隊に並ばせ、「○○一歩前へ」、「足を開け」、「顔を前に」、「歯を食いしばれ」と号令し、横っ面を張る。右手と左手交互に両面を張るのを往復ビンタという。原因は何でもいい。軍隊では衣服、軍装など決まった数の支給品があり、それを員数という。

 それを上官がこっそり隠しておき、員数点検をさせて足りないなどの言がかりをつけるとか、単に大学出で気に入らないというだけでもいじめの口実になる。「畏れ多くも天皇陛下からおさげわたしの品物を紛失するとは……」でビンタ。

 一兵卒も天皇の赤子(せきし)だからビンタを張るのは畏れ多い事だが「上官の命令は陛下の命令と心得よ」ということで、ビンタのあとには「有難うございました」と張られた方が礼を言う仕来たりだ。上官にとってはリクリエーションで快感があるのかも知れないが、これが許されるのは、人格を奪い去ることを目的としているからだ。

 人殺しが商売の兵隊に、人格とか意見とか同情心などがそれぞれにあってはならない。絶対服従の特異な世界だ。日本軍はこの特異な世界にいない世間一般を「地方人」といった。つまり、軍人になったら地方人としての人格、しきたり、常識は一切捨て去ることから始めなければならないのだ。

 「地方人」と言ったのは、天皇に召されてきた軍人こそ「本流・中央」であるという意識からきているのであろう。大阪の事件について他校の監督は、「王国のようなものをきずいていたのではないか」と言っている(「毎日」1/13」)。父兄などの部外者は、監督から見ると地方人扱いなのだろう。

 地方人とは言葉からして異なった。沢山あるが塾頭が経験したひとつの例をあげておこう。塾頭は中学生の時都会から地方の学校へ転校した。間もなく、地元の聯隊からの監察があり高級将校がやってきた。全校生を整列させ、その間を豹のような目で生徒の一人一人を見て回った。

 顔色や服装などで転校生だとすぐわかる塾頭の前でやはり足が止まった。なにか忘れたが質問を受けた。「はい、僕は……」に、「ナニィーッ?」「ボクゥ~……だと」「自分と言え、自分と」。ビンタは食らわなかったが、これが軍隊用語だ。

 余談ながら「自分」とは、もともと教育県で高級軍人を多く輩出した長野県のローカル用語だということを聞いた。いまでも体育会系では男女ともに「自分」が多用されているようだ。軍人でないから「本官」ではなく、「拙者」では女性に向かない。

 他の先進国では「ビンタ」などの風習があるのだろうか。あまり聞いたことがない。韓国では軍隊で横行しており、これか原因の自殺者も少なくないと聞く。これが日本からの輸出であれば自慢できたことでない。そして、戦後10年はこんな体罰は封印されていたように思うが、いつ頃から復活したのか。教育に熱心なはずの市長をいただく大阪市が、なぜなぜこのような舞台になったのか。

 塾頭が気になっていたのは、最近のNHK朝ドラをはじめ、女性にビンタを張るようなシーンがふえてきたことだ。見るに堪えないが、ジェンダーフリーのおばさんたちはどこへ行っちゃったんだろう。平等だから結構、なのだろうか。ビンタに対する不感症を促進することにもなりかねない。

 ビンタ容認を続ける国は決して「美しい国」ではない。海外からは戦中の奇習を温存す特異な国にうつるだろう。犠牲者の冥福とともに、一刻も早い「脱ビンタ」「ビンタ・ゼロ」の社会になるよう祈って、この稿をおしまいにする。

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コメント

自殺したバスケット部主将ですが、発奮を期待してかも知れないが顧問から体罰を受ける度に主将を辞めるように言われていたらしい。
本人も主将を辞めるかどうか迷って顧問に相談したが、『主将をやめるなら二軍行き』との二者択一を迫られる。
これはもう無茶苦茶。
高校は地元でも有名な進学校なのですが、インターハイ出場チームの主将なら確実に推薦入学が望めるが、二軍選手では絶対に無理ですよ。
仰られるように、『肉体的苦痛ぐらいで自殺しないが、人としての尊厳を奪われ人格を無視され』ては多感な思秋期の青少年では耐えられなかったのでしょう。
特に部のトップである主将が、部員全員の前で叩かれるのはプライドが一番傷つく行為ですね。

投稿: 宗純 | 2013年1月14日 (月) 17時29分

宗純 さま
こんばんは。コメントありがとうございました。

言葉による虐待、そんなのもあったんですね。詳報を知る前に書いた記事ですが、ますます許せません。

♪「わかものよ 体をきたえておけ 美しい心は たくましい躰にからくも……」という青年歌謡を思い出しました。

若い人には体も心もたくましく鍛えてほしいと思います。

投稿: ましま | 2013年1月14日 (月) 20時26分

http://getnews.jp/archives/244478によると
「【大津いじめ】パフォーマンス捜査? 滋賀県警が強制捜査前に教育委員会へ電話し証拠隠滅の猶予を与えた疑い」-があるらしい。

 つまり、行政機関への家宅捜索の場合、警察が家宅捜索しますと事前に連絡することは学校が警察へ門戸を開いて一蓮托生以来慣例となっていてあり。
ただ、それでは一般社会へは通用しない。なぜら捜査対象となる場所へ電話連絡等いれると証拠等を隠滅される恐れがあることで問題になる。

これは直感だが、おそらく警察が最初に介入した2年前、大阪でもそれに近い一般的にありえない捜査方法で、学校や教育委員会(市役所内)へ出入りし、茶番(パフォーマンス)を演じて父兄をまるめこんだ可能性が大。一旦、片棒を担いだら最後。ますますの一蓮托生が深まる。以来、教育委員会に対し警察はそれ以上の介入ができずじまいのことから、無届のバスケット部寮を継続できるなどの大柄さが拍車をかけエスカレートしていったものと考える。

 6人の子全員を18年、少年野球から大学野球まで学校の部活へ預け、続けさせてきた私の経験からすると、それが限りなく現実的で事実に即しているとしか考えられない。官憲らの裏はそこらの飲み屋ではくだけたものだ。

投稿: 本村安彦 | 2013年1月17日 (木) 04時08分

一連托生、ありえますねえ。昔、田舎で先生をやったことがあるのでわかりますが、警官と先生、どちらも社会的に謹厳実直のような顔をしていなくてはならない。

その点で話が合う。原子力村のなれあいにも「公」の閉鎖性で安住する姿が見えます。アメリカの銃社会で武装警備員が常駐するようなことが日本であれば、警官の天下り先としては最高で、おおっぴらに「派出所」化しますね。

投稿: ましま | 2013年1月17日 (木) 09時44分

ましま先生

その桜宮高校の学区のある地域の行政運営に父母など庶民の財源がどれほど当てられていて、国や大阪府と市からどれほど当てられているかの財政力もなにも想像の域を出ないが、記者会見で見る関係者の態度や橋下の”若気の至り”の横柄さからも「給料の3/4は市民からは頂いていません。市民からは1/4だけです」ーという一部の若いなれあい父兄や官憲職父兄以外の一般的公立校父母●庶民に対する慇懃無礼さがやや伝わってくる。

やはりこうやって、3/4の給料や退職金を支払っているより多くの国民の監視の目に晒して本来の”公僕”たらしめねばならないのだろうか。病んでる。

投稿: 本村安彦 | 2013年1月17日 (木) 13時11分

案の定、橋下の”若気の至り”は「給与」報酬の執行権を振りかざした。

若造の橋下の権力の源泉は弁護士である自らも属する”法曹界”である。

 こうではないか。

生徒が自殺する前までの所轄署対応段階では署長以下現場刑事レべルでの上記一蓮托生。

生徒が自殺し、全国ネットの騒動になった今となっては、署長以上の権限を持つ都道府県警本部長ルートでそれぞれの所轄署の影の部屋へ配属されている警察キャリアと市長でもある橋下らの抱える弁護士グループとの”法曹界”レべルでの一蓮托生。

願わくば、唯一独自の”法曹界”所属弁護士を抱えていない市教育委員会の今日の判断は”法曹界”の一蓮托生を打破し、生徒と父母●庶民一蓮托生となるものとなってもらいたい。本村

投稿: 本村安彦 | 2013年1月21日 (月) 11時48分

昔、仕事で所有権移転登記無効訴訟というので、両当事者の顧問弁護士の話し合いに立ち会ったことがあります。

片や丸の内でも有名な民事のベテラン。片や松川事件を担当した刑事の先生。両人とも立派だなあ、と尊敬しました。

一連托生はありませんでした。

投稿: ましま | 2013年1月21日 (月) 13時58分

いかに上下関係のない弁護士同士だけの話し合いといえども立ち会人の前で少しでも一連托生があれば、それこそれぞれの依頼人に対する利益相反行為という犯罪ですからね。

投稿: 本村安彦 | 2013年1月21日 (月) 15時19分

私の間違いでした。

今終えた夕方のFNNニュースで外遊直前の安部首相への安藤の直撃インタビュューのVTRが報じられはっきりしたが、この大阪の問題の全容が未だすベてまでは表に出ない勃発間もない段階では「愛のムチです」などと躊躇していた橋下の意見を知り急遽外遊直前に安部首相が橋下に会った際、「暴力で一人の命が失われた」ーとするキーワードと一致する旨申し合わせた結果が橋下の”若気の至り”発言を促していた。

安部首相発言VTR:「暴力で一人の命が失われた」(安部首相)

つまり、”法曹界”レべルでの一蓮托生だけが橋下の傲慢さを際立たせていたとする私の読みは間違いで、プラス国政政治の後ろ盾のあるシナリオがあの段階ですでに組まれつつあって、今日に至ったようです。本村

投稿: 本村安彦 | 2013年1月21日 (月) 19時38分

普通なら、なんらの法的根拠も権限もないはずのいち市長でしかない橋下がなぜ、あとは教師を暴行罪で立件するかどうかだけの学校へ乗り込み生徒と教師へ圧力を掛け、

普通なら、なんらの法的根拠も権限もないはずのいち市長でしかない橋下がなぜその後開かれようとする委員会へも圧力をかけることができたのだろうか。

なぜ二者択一での採決の結果が、10数人の教育委員のうちのたったの4人の委員の挙手だけで橋下の傲慢さが増した画像が流されたのだろうか。(なぜ二者択一での採決なのかの詳細も分らないが)

同時に、並行していたアルジェリアの騒動では「テロで10人もの日本人の命が失われた」ーことを理由に自衛隊が海外で救出作戦を展開できる部隊が持てるチャンスまで転がり込んできた石原と安部首相。本村

投稿: 本村安彦 | 2013年1月22日 (火) 01時50分

すみません。一部訂正します。ややこしいですが、委員席に着席していた10数人の人物のうち教育委員は5人だけだったらしいです。ですので4:1という結果のようです。


 予算の執行権をかざしてまでスポーツ教職員らや学校教育から児童生徒の心を自らの政治経済行政という魑魅魍魎の世界へ奪い取りたかった橋本の勝利に終わった。

やはりハイネマンの「人間は金銭が絡むと合理的な行動をしない」ーという人間行動学ノーべル賞受賞は正しかった。

投稿: 本村安彦 | 2013年1月22日 (火) 09時49分

レスの代わりに「橋下独壇場をどこまで許すのか」の記事を書きました。見てください。

投稿: ましま | 2013年1月22日 (火) 11時54分

分りました。

投稿: 本村安彦 | 2013年1月22日 (火) 13時31分

今終えた古館の「アルジェリア、日揮、中東、イスラム問題は、実は1980年代のイラン●イラク戦争時に当時の日本の中立性が世界の平和とエンジニアの命を護った。しかしあれから30年経った今、日米安保●同盟に偏り過ぎ●自衛隊に頼りすぎ、日本軍復活をほうふつとさせる現政権は危険」ーと発した元朝日新聞記者若宮をメインとする「報道ステーション」。

やはり、戦後67年一貫して米軍へも自衛隊へも反対の距離を保ちつづけていることを世界が認めている「琉球沖縄」の独立の再立国の実現の影響力をもってして仲裁に入ったほうが、日本の児童生徒の徴兵制への”不安”も払拭できよう。本村

投稿: 本村安彦 | 2013年1月25日 (金) 23時46分

今朝も、新たに発覚した愛知県の工業高校陸上部の体罰問題にからみ、自殺した大阪桜宮高校の2年生への責任は「桜宮高校全体の父母と選挙権すら未だ満たない生徒にあるんだ」ーと公言してはばからない「石原=安倍=政治=魑魅魍魎」+法曹界=高慢な橋下が、石原の息子もコメンテーターを勤めるTV朝日のモーニングバードに昨日の同局、報道ステーション(サンデー)のVTRで出演している。

昨年、5人の子を抱えながら、しかも未だ一人たりとも成人させていない未だ未熟者の段階での「浮気亭主」であることが発覚した「少年」橋下は昨日の報道ステーション(サンデー)で「(徴兵制に直結した)戦前のように政治、法曹界が教育に介入する」ー趣旨の発言をくりかえしていた。

しかし今朝はその重大な橋下の問題発言が一切排斥され、「(私、橋下という政治と法曹界が教育へ介入して)こうやって大騒ぎになったから今からは体罰をなくすことができるんだ」ーとの趣旨部分画像が数秒流され、今ある自らの成功の過去にある体罰被体験まで否定できないこともあり「過去の体罰は皆が認めていた。だから責められない。これからが大事」と言う桑田真澄の活動を一部利用し、さも、橋下の問題発言は一切なかったかの如く終えた。

ぞっとするのは、その橋下の問題発言打消しの仕方とタイミングまで、すべて内閣官房機密費が配られない限り起こりえない裏番組フジTV「とくダネ!」でもなされていたことだった。

うちなーんちゅよ!昨日の日比谷公園でのうちなーんちゅ集会とデモ行進は一切報じることなどない番組内で行われる彼ら日本列島の日本人のこの流れは本流である。一刻も早く離脱、琉球沖縄独立を!!

 それから、日揮株式会社の英文名称はJapan Gasoline Companyで、直訳すると日本ガソリン会社である。社員の命を守るため、社名の「日本」または「ジャパン」を「琉球沖縄」に変更しよう!!

 ここはあわてず今日までの自社ブランド名を「日本」、または「ジャパン」から→「琉球沖縄」へ国名表示をかえることを急いだほうがいい。

すべての物流を、世界的に「愚直」な「正直者」で知れ渡っている「琉球沖縄」を通して動かす。

それしか日本列島が生き残る道は残されていない。

商取引で肝心なのは人倫に基づく信用である。

参考資料:
http://yakkoo.seesaa.net/article/296206305.html?1352954518
参考:http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-6657.html

以上、本村

投稿: 本村安彦 | 2013年1月28日 (月) 12時50分

趣旨が重複する一方的書き込みは、今後無断でカットすることがあります。

悪しからず。

投稿: ましま | 2013年1月28日 (月) 15時47分

意図の無いミスとはいえ、失礼した。本村

投稿: 本村安彦 | 2013年1月28日 (月) 19時19分

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