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2012年12月27日 (木)

天皇と沖縄と政治

 やや旧聞に属するが19日、天皇は誕生日を前に記者会見をおこなった。新聞は機械的にその中味を簡単に伝えただけだが、時期が時期だけに、やや「政治」に踏み込んだというか、片足をかけたような印象を持ったので、宮内庁のサイトから発言内容を確かめてみた。

 沖縄は,いろいろな問題で苦労が多いことと察しています。その苦労があるだけに日本全体の人が,皆で沖縄の人々の苦労をしている面を考えていくということが大事ではないかと思っています。地上戦であれだけ大勢の人々が亡くなったことはほかの地域ではないわけです。そのことなども,段々時がたつと忘れられていくということが心配されます。やはり,これまでの戦争で沖縄の人々の被った災難というものは,日本人全体で分かち合うということが大切ではないかと思っています。

 11月に皇后と訪れた沖縄の印象についての質問に答えるかたちとなっている。その前に、東日本大震災の復旧の遅れや、放射能の下での過酷な労働条件や過疎豪雪地帯の老人援護などにふれた部分がある。

 折からの解散総選挙にこのような視点からの政策提言、ことに沖縄については、各党の公約から皆無と言っていいほど欠け落ちていた。前述の天皇発言はまさにそこをついた「政治的発言」に聞こえた。さらにその前段に公務軽減に対してこのような発言がある。

天皇の務めには日本国憲法によって定められた国事行為のほかに,天皇の象徴という立場から見て,公的に関わることがふさわしいと考えられる象徴的な行為という務めがあると考えられます。毎年出席している全国植樹祭や日本学士院授賞式などがそれに当たります。

 問題は「公的に関わることがふさわしいと考えられる象徴的な行為」という、天皇発言にしてはきわめて抽象的な言いまわしである。全国植樹祭や日本学士院授賞式を例に挙げているが、もっとも当たり障りのないものを挙げたもので、被災地訪問や沖縄訪問が公的なのか私的なのか線引きが難しい。

 すっかり忘れていたが、ブログ内検索をしていたら、天皇発言の政治的な意味について昨年も天皇の誕生日に際してのコメントを記事にしていた。その発言要旨を再現する。
「平成天皇の立ち位置」(2011年12月23日)
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-9c06.html

今年は先の戦争が始まって70年になります。この戦争における死者はおびただしい数に上り、戦後、こうした戦争の惨禍を再び繰り返すことのないよう、日本の人々は、真摯(しんし)に過去を学びつつ、戦後の厳しい困難に耐え、営々と国づくりに励み、今日の日本を築き上げました。戦争の記憶が薄れようとしている今日、皆が日本がたどった歴史を繰り返し学び、平和に思いを致すことは極めて重要なことと思います。

 今年の発言と合わせ、天皇としては踏み込める精いっぱいの政治的発言ではないか。昭和天皇は1947年9月20日、マッカーサーの政治顧問ウィリアム・J・シーボルトに、沖縄の将来についての見解を伝達。密使の寺崎英成を介して、昭和天皇は、米ソの対立の激化を考慮して、アメリカが沖縄本島をはじめとする琉球諸島の軍事占領を99年間、続けるように提案しことがわかっている。

 新憲法が発効した後で、あきらかに憲法に違反している。研究者のなかには「これこそ天皇の戦争責任をのがれるための保身であり、沖縄の切り捨てを試みたもの」という評価をするものが少なくないが塾頭は逆の考えを持っている。

 昭和天皇は、終戦の決断とこの行動の2回にわたるルール破りをした。それが激動時代の天皇がとるべき責務として意識していたのだと思う。今は信じる人が少ないだろうが、当時ソ連からの直接侵略(中国は国・共内戦時代でその能力はない)より、国内のゼネストなどによる「人民政府樹立」がまことしやかにささやかれていた時代だ。

 占領軍が任務終了で沖縄から引き揚げれば、たちどころに人民政府が樹立され、日本国と別の政体が根付くことになるだろう。現に北欧では続々とそういった事態が進行しソビエト連邦に編入された。

 これでは、日本国の再分割につながる。ドイツや朝鮮・ベトナムがたどるような国家分断の悲劇をさけるために、昭和天皇があえて禁をおかしたと見るべきだろう。昭和史の長い天皇語録を見てもその方が矛盾がない。また、後継の明仁天皇がその遺志を継いでいると見るのが、2年続いた誕生日メッセージの真意ではないかと想像する。

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コメント

両陛下(皇族共通)が行う行事が公のものか、私的なものかは、皇后陛下(または女性皇族)の帽子で判ります。
被っている場合は「公的」で、被っていない場合は「私的」になります。
今回の被災地訪問では、被っていませんでしたから「私的訪問」となるようです・・・が、物々しい私的行動ではありましたねhappy01

投稿: 玉井人ひろた | 2012年12月29日 (土) 20時07分

玉井人ひろた さま

公的か私的かは帽子で判断……。

なるほど!、またひとつ利口になりました。ありがとうございました。

投稿: ましま | 2012年12月30日 (日) 10時38分

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