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2012年11月 6日 (火)

隣の虎狼

 隣国の来り犯すとき、苟も遅疑する
 あらば、我が将士且(まさ)に志を
  変ぜんとす。当(まさ)に亟(すみや
 か)に出でて迎え戦うべし

 隣国とは、中国・ロシアのことではありません。織田信長の父親・織田信秀が、永禄3年、手勢を率いて桶狭間に向けて出陣するに当たり残した訓えです。したがってこの場合、駿河国でしょう。

 さきの戦争をへて平和憲法を手にし、東西対決はあってもアメリカの庇護を受けた日本が領土を侵略されるなど、考えてもみませんでした。またマルクスをすこしかじった人なら、人民が支配する国が他国の領土を侵略、奪取することなどあり得ないと信じていたでしょう。

 今、それが大きく変わったとは思えません。しかし、尖閣をめぐって中国の理不尽な主張が繰り返されるのを見て、中国国内の権力闘争や民衆の動きによっては、不測の事態が全く起きないという保証がなく、安逸をむさぼる時代は過ぎた、と思うようになりました。

 隣国の不当な要求や主張があれば、これを断乎として跳ね返し、日本の国土は日本人自身が守り抜くという固い意志と決意がなくてはなりません。それがあって初めて国際世論をを味方につけることができます。この場合、日本の平和憲法が一段と輝きをまします。

 憲法を改正して自衛軍を作り、集団的自衛権で米軍と一体になって環太平洋軍事網により中・ロをけん制するという、アベ自民党路線はどうでしょう。アメリカも隣国です。日米安保条約の果たしてきた役割やこれからのあり方を考える上で、条約そのものに反対する理由はありません。

 しかし、アメリカの世界戦略の一環に組み込まれるのは問題です。アメリカの都合・国益はいつも日本の方を向いているとは考えられません。日本も日本の国益を考え、西に位置する近い隣人とも深い意志を通じておく必要があります。

 最近、週刊誌などに「日中が若し戦争になれば……」などという際どいタイトルをよく目にします。答えははっきりしています。日本は国土の広さと人口の差で負けます。ただ、日本人と自衛隊が専守防衛の固い意志とそれを支えるテクニックを持っていれば勝てなくても負けはしません。

 虎や狼にまともに勝てない小動物でも、鋭い防衛本能と秘密兵器で相手を退散させることができます。それまで放棄してみすみす餌食になるようでは、絶滅を避けることができません。冒頭の話は谷沢永一『百言百話』1985年中公新書からとったものです。その項の最後を次に引用しておきます。

 昭和五十六年のことである。中川八洋の『ソ連は日本を核攻撃する』によれば、この年の六月初旬ハワイで開かれた日米安全保障事務レベル協議において、「米国は中東での大規模な戦争が発生した場合、太平洋の全空母機動部隊及びハワイの第二十五歩兵師団も中東へスウィングする、と日本に通告したのであった。

 すなわち、そのような事態に際しては米国には日本防衛用の戦力がない旨を米国自身が明らかにしたのであった」。その「ハワイ協議三日後のことである。六月十五日付イズべスチヤ紙(ソ連最高会議幹部会の発行する日刊の機関紙)は、バンドゥーラ在日特派員の長文<歴史に対する暴力>を掲載した」。

 この論文において、何と”北方領土も北海道北半分も十九世紀半ばまで日本領土でなかった(言い換えればロシア領であった)”ことが自信をこめて強調されているのである。これを報道しない新聞と、抗議しない政府の腰抜けを、一体どう評したらよいのだろうか。

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