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2012年10月15日 (月)

関東軍と中国人民解放軍

 日本の「関東軍」は、日露戦争後租借地となった遼東半島(関東州)の狭い範囲を守る守備隊の名称であった。それが後に満州から中国へとマンモス化し、中央の指示に従わず陸軍を牛耳って国を危うくしたことは知られている史実である。

 関東軍はいつまでたっても「関東軍」を名乗った。それと同じのが「中国人民解放軍」である。抗日戦争で、そして国共内戦で抑圧された貧しい農民・人民を圧政から開放するための「解放軍」であったはずだ。

 だからあくまでも国の軍隊ではなく、今だに政党の軍隊として存在する。解放されていない人民がいるのならともかく、航空母艦まで持ってどこの人民を開放するつもりだろうか。台湾?、悪いが本土よりずっーと解放されている。

 名前を変えようとしないところに、肥大化したアウトロー的な権力機構のにおいを感ずる。日本陸海軍の最高指揮官は天皇であった。職業軍人ではないので、一応「文民(民ではないが……)」ということにしておこう。

 軍は明治憲法にある「統帥権」をたてに、政治の容喙を許さなかった。軍が陸海軍の大臣推薦を断れば内閣が倒れるという、軍高・政低の仕組みがあった。中国の最高指揮官は、党中央軍事委員会主席・胡錦濤である。彼は毛沢東、鄧小平のような軍歴がなく、文民である。

 副主席に習近平がいるが、見習のようなもので事実上委員会は胡錦濤以外全員制服組である。つまり旧日本軍でいえば天皇と同じ立場だ。トップが素人という弱みからシビリアンコントロールが機能しない。党中央委員会というのがあるが、多分利権の巣窟で伏魔殿のようなものだろう。公開されていないのでわからない。

 いずれにしても三権分立とはなっておらず、最高裁にあたるものも党総書記である胡錦濤の手の内にある。今回報じられている重慶の薄熙来が死刑になるか終身刑になるか、死刑は温家宝が主張し胡錦濤は終身刑にという噂もどこまで本当かわからない。

 さて、尖閣諸島をめぐる中国の常軌を逸した強硬姿勢であるが、どこからその方向付けが出てくるのかである。どうやら答えは、「人民解放軍」制服幹部ということになりそうだ。すこし長いが次の引用を見ていただきたい。(清水美和「対外強硬姿勢の国内政治」『中国は、いま』岩波新書)

 〇八年一二月には尖閣周辺の日本領海に国家海洋局東海海監総隊の巡視船二隻が侵入し、九時間も徘徊して尖閣への主権を主張する前代未聞の事件が起きた。海監は海上保安庁に当たる政府機関だが、前身は海軍海洋調査隊で、一九六四年の創設当時から要員も海軍で訓練され、海軍の別働隊と言える組織だ。

 中国の外交関係者によると、その後の内部会議で、この航行を指揮した司令官は尖閣周辺侵入を上層部にはかることなく単独で決断し、侵入時は無線を切り外交問題になるのを恐れる本部の帰還命令をさえぎったと得意げに報告した。司令官に対する口頭注意はあったものの、処分はまったく行われず、司令官は「われわれは功を立てた」と得意げだったという。

 胡自身、こうした党内の強硬論に押される形で海洋権益確保の姿勢を強めていき、先に述べた〇九年七月の第一一回中外使節会議で鄧小平の「韜光養晦」外交の修正に踏み込んでいった。

  以上で見る通り、独断専行下剋上の実態は昔の関東軍と選ぶところがなく、危険な道を突っ走っていることや、胡錦濤なども当初からのものではなく権力保持のために本心をまげたたということがわかる。

 なお、政府の態度表明に先立ち、中国メディアに軍人が盛んに登場し、ネットに「愛国情熱」とか「売国奴」などの書き込みをあふれさせ、世論形成を試みる手法は今回盛んに見られたが、米韓による黄海合同演習の際にも使われており、最近の常套手段となっているのだ。

 本塾としては、中国の武力行使など常識ではあり得ないことながら、関東軍の例もあり最低限その備えを持つと同時に外交の高度化に全力を挙げることが必要だと考える。今は無理でもこれからの政治に期待したい。

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