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2012年10月31日 (水)

先制攻撃、つきあいますか

 片道1930Kmというとほぼ中国の南京から東京までの距離に相当します。そこへジェット戦闘機8機や給油機など計12機の軍用機を飛ばしていきなり外国の首都近くを空爆、工場を破壊炎上させ死者2名をだしたという信じられないような話が、実際におきました。

この件は大きく報道されることがなくほとんど知られていないので、経過がわかる「毎日JP」をそのまま引用します。

 【ロンドン小倉孝保】スーダンの首都ハルツーム南部の軍需工場が爆撃された事件で英紙サンデー・タイムズは28日、西側軍事筋などの話として、作戦はイスラエル空軍がイランへの核施設攻撃の予行演習を兼ねて空爆したと報じた。

 同紙によると、爆撃作戦は24日未明、イスラエル軍のF15戦闘機8機で行われた。うち4機が1トン爆弾を2発搭載、他の4機は護衛役だった。また、墜落など不測の事態に備えて、救出部隊としてイスラエル軍のCH53ヘリコプター2機が事前にスーダンの現場周辺で待機。そのほかスーダン防空レーダーに対し妨害電波を出すため空軍機1機、紅海上で燃料を供給するための給油機1機が作戦に加わった。

 イスラエル南部の基地から出撃した戦闘機は、紅海を南下してエジプトの防空システムをすり抜ける形でスーダン領空に侵入し、ハルツーム南部に到達した。往復約3860キロ、計4時間の飛行だった。

 この軍需工場では、イランが指導する形で、イランの弾道ミサイル・シャハブが製造され、パレスチナ自治区ガザに密輸される予定だったという。今回の作戦はガザへの武器密輸阻止のほか、将来、イランの核兵器開発が明確になった場合、イラン国内の核施設を空爆する電撃作戦の予行演習も兼ねていたと西側軍事筋は明かしている。イスラエルからイラン中部までの直線距離は、イスラエルからハルツームまでの距離とほぼ同じ。

 ハルツームでの爆発では2人が死亡。スーダン政府は「イスラエル軍が実行した」と主張しているが、イスラエル軍はコメントしていない。(毎日新聞 2012年10月29日) 

 以上についての真相はわかりません。しかしイスラエルが関与したことは爆弾の残骸など証拠もあり疑う余地がなさそうです。スーダンは「報復の権利がある」と宣言しているようですが、国連の司法裁判所や安保理に持ち出すということにもなりそうです。

 そうすると、どうなるでしょう。これには1981年6月7日に似たような前例があります。同じイスラエルによるオシラク空爆です。オシラクはイラクのバグダード近郊で、原子炉を建設中でした。国連安保理でイスラエルの代表はどう弁明したでしょう。豊下楢彦『集団的自衛権とは何か』から引用します。

 オシラク空爆は「道徳的にも法的にも自己保存のための本質的な行為」であり、一般国際法と憲章五一条に基づいた「固有かつ自然権としての自衛権の行使である」と言明した。こうした自衛権を主張する根拠として、オシラク原子炉の稼働を放置するならば「イラクは八〇年代の半ばまでには核兵器を製造する能力を獲得するであろう」ということと、さらにはイラクのフセイン体制はイスラエルを国家として認めず殲滅をはかる「無責任で残忍で好戦的な体制」であり、こうした「破廉恥な体制」が核兵器を持つことになれば、イスラエルにとって「きわめて重大な危険」が生み出されることは明らかである、ということが強調された。

 この主張に対し、非常任理事国だった日本をはじめスペイン、ウガンダ、シエラレオネも反論し四面楚歌の有様になりました。結局、満場一致で非難決議が採択されましたが、アメリカはイスラエルが問題の解決のために平和的手段を十分に尽くさなかった」という点で「賛成」という、なんだか条件付きのような歯切れの悪い賛成のしかたでした。

 今回の空爆がイラン空爆の予行演習だとするとオシラク以上の大胆さです。先制攻撃を認めたブッシュ・ドクトリンや「テロとの戦い」の潮流に自信をつけ、「国連は無視していい存在」と決め込んでいるのでしょうか。これまでになくアメリカの責任が高まったと言えましょう。

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