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2012年9月19日 (水)

野田、石破発言の矛盾と便乗

 原発ゼロに言及した「新・エネルギー環境戦略」が矛盾とほころびだらけで、いつ自然爆発してもおかしくないようなたよりない内容であることは、すでに本塾の記事でふれたし、マスコミでもとりあげていた。そして今日19日、閣議決定を見送ってたたき台程度にするという、事実上の撤回に等しいものとなって米倉経団連会長が喜んでいる。

 選挙目当てで打ち上げてはみたものの、自民や財界の反応はつめたく、民主党内でも代表選での野田圧勝が確実と見てこの拠にでたものだろう。今回は、野田首相の発言がその時の都合次第で都合よくもてあそばれていることを指摘しておきたい。

 首相は同会議で挨拶したが「原発ゼロ」の言葉は使わず「あまり確定的なことを決めるのはむしろ無責任な姿勢だ」と述べた(9/15日経新聞朝刊)。野田首相のやってきたことはどうだったのか。何年には何%、その翌年に何%と消費税率アップするが変更もあり得るという不確定のことを決めたことだ。

 これが責任ある決め方だと言いたいのだろうか。消費増税なら党を割り3党合意をし政治的生命をかけて決められるが、エネルギー政策は決めてはならないというのは筋が通らない。戦後、石炭への傾斜生産というエネルギー政策目標を立て、復興への足掛かりを作った。

 何年には原発ゼロという政策目標を立てる。不確定要素があるからそうするのではないか。そして目標に向けて代替エネルギー開発を促進し、廃炉や放射性廃棄物処理の技術開発に直ちに着手し、必要があれば対アメリカなど関連する国との協議を開始するなど障害を取り除く。

 塾頭は、より安全と見なされる原発を再開することには最初から賛成しているが、それには技術チェックをする機関を解体再構築する必要がある。今やっと立ち上がろうとしている原子力規制委員会であるが、1年前にできていれば大飯原発の再稼働もこんなにもめなかっただろうし、それに次ぐ原発のめどもついていたただろう。

 要は原子力村、財界、アメリカなどの抵抗を慮って無駄に時を過ごしただけである。

 次に石破の「日本には海兵隊がなく、万一の際の邦人救出さえできない。法律を作って海兵隊を持たなくてはならない」という、総裁選候補としての発言である。「邦人救出」、どっかで聞いたことがあると思ったが、アメリカの海兵隊のことである。

 海兵隊は敵地に強制上陸をする「殴り込み部隊」の任務を負っていた。文字通りその任務についた海兵隊は20年前のソマリア作戦で映像を見た覚えがある。しかしその後は戦争の様態が変化し海兵隊の腕力をふるう場面もすくなくなった。最近は増大する軍事費削減のため、米海兵隊が縮小・廃止のターゲットとされているという実態がある。

 それに危機感を持った海兵隊が主張しはじめたのが「邦人救出」である。また、それが沖縄である必要は、朝鮮半島・中国・台湾に近いということにある。決して日本を守るためではない。日本の領土守備は自衛隊の任務である。日本と共に戦うというのは、在日米人を守るためである。

 これに便乗したのが、石破発言である。時代遅れの海兵隊に対する苦しい論理だが、日米共同作戦として一定の説得力を持つかもしれない。しかし、安全保障の根幹にふれる問題ではない。あまり品がよくない指折り――ではない指開き説得にやすやすと騙されないようにしたほうがいい。

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コメント

湾岸戦争のとき、海部内閣は中東に残留する邦人を回収しようと、あれこれ考えました。
自衛隊の投入は法的に不可能、戦争地域ということで日航にも全日空にも断られ、万策尽きたところトルコ航空が一肌脱ぎました。明治時代の難船救助の借りを返すとのことでした。日本のような大国が自国民の救助を小国に頼るという情けなさ。これもゴミ憲法の成果でした。
福田内閣のとき、ダッカ事件がありました。このときも政府は手も足も出ず、赤軍派の言われるまま16億円の現金を持たせて服役囚を解き放ち、乗客乗員を回収しました。
日本人は全地球に散らばっています。一朝時あれば直ちに急行して救い出す、あるいはテロリストを殲滅するためにも海兵隊的部隊は必要です。

投稿: ミスター珍 | 2012年9月24日 (月) 22時59分

ミスター珍 さま

適切なご指摘ありがとうございました。具体的で説得力もあると思います。

ただ、やや短絡している点が2点あります。ひとつは現憲法では救出ができないという点。もう一つは「だから海兵隊が必要」という点です。

邦人救出はそもそもは海兵隊の主任務ではなかったということで、あんな重装備をしてはかえって救出できないでしょう。

本文に書いたように、戦闘形態の変化によりなぐりこみ隊的任務を必要とする場面が減りました。米海兵隊は生き残りをかけて邦人救出を表面化しているようなところがあります。

石破候補は最近「韓国を含めよそのどこの国でも海兵隊がある」と言い出しましたが、必要とする理由づけにはなりませんね。

邦人救出は本来専門の技量と機材を持つ特殊部隊の任務です。自衛隊や警察に似たような組織はありますがまだまだ弱体であることは事実です。

かつて「邦人救出」という名目で多くの戦争がはじめられたのはご存知だと思います。日本憲法下では、警察の組織とする方が海外には出やすいでしょうが、法整備がなければそれも実行できません。

珍さんの問題提起は貴重だと思います。

投稿: ましま | 2012年9月25日 (火) 09時55分

自国を大国と言い、助けてくれた国を小国と呼ぶ傲慢さ。
邦人救出を訴えながらも命には一言も触れず
ただ国のメンツばかりを大事にする。
このような輩が偉そうに大義を掲げたところで、まったく信用できない。

投稿: ちくわ | 2012年9月25日 (火) 20時12分

確かにトルコを小国よばわりしたら怒られますね。

投稿: ましま | 2012年9月25日 (火) 20時27分

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