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2012年6月 9日 (土)

北朝鮮から見た日本

 題名は、検索フレーズで当塾の「中国から見た北朝鮮、韓国、日本」というエントリーにヒットしてきたものです。北朝鮮はなぜ日本を敵視するのか?、これにつていて書いてみたいとはかねがね思っていました。しかし韓国には行った事がありますが、北朝鮮には一歩も足を踏み入れたことがありません。そこで歴史をたよりに考えてみることにしました。

 多くの日本人は拉致問題があった頃以降の北朝鮮のイメージだけが強く、工作員を放ってきたり、ミサイルや核を仕掛けてくる危険な存在で、身近にいる在日朝鮮人を「朝鮮人一般」として差別・排除する風潮が、一部とはいえあるのが事実でしょう。

 韓国は民主主義国であり、情報量も多いのですが、正直なところ複雑でなかなかわかりにくい。その点、「歴史の目」で見ると韓国との共通点はあるものの、北朝鮮の方が割り切れる点が多いのです。

 大昔、漢の時代は、中国が朝鮮に郡・県を置いて不完全ながら直接支配をしていました。日本の卑弥呼の時代のあと、郡・県は機能を失い北は高麗(高句麗)、南は百済・新羅のいわゆる三国時代に入ります。

 この3国は、後に新羅、またその後に高麗の手で朝鮮統一を果たすのですが、太平洋戦争後、冷戦の影響を受けてまた南北に分断されました。大雑把にいうと北の高麗地区と南の百済・新羅地区に相当します。

 そんな大昔のことを持ち出して、現朝鮮人に当てはめるのはまちがっているかも知れません。しかし、風土や人情などに微妙な違いはあるようです。最近まで韓国の大統領選は、東部の新羅地区と中南部の百済地区を地盤とする候補がはげしく競い合っていたという事実があります。

 三国時代は、同盟したり、裏切ったりしながらたえず争いが繰り返されました。中国と日本のはざまにあって三つ巴になって国勢を競い合いました。ほぼ日本の古墳時代に相当し、さまざまな文物や宗教などがもたらされるなど、大きな影響を受けます。

 北は、一時渤海国が興ったことがありますが、一貫して高麗の伝統が受け継がれました。中国や北方民族、後にロシアと国土を接し、たえずその脅威に備えなければなりませんでした。(参考:「最も警戒すべき国は中国」金正日遺訓)http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/post-92d0.html

 その点、三国時代が崩壊すると南から海を隔てた日本が侵攻してきたのは、豊臣秀吉による2回だけで、倭寇で迷惑したことをのぞけば日清戦争まで比較的安穏でいられたわけです。それが、李王朝末期の近代化乗り遅れと、混乱した権力闘争や外交の不手際なども重なって、日本による併合という、有史以来なかった屈辱を味わされたのは、南北を問わず民族にとって痛恨の極みだったと思います。(このあたりは、カテゴリINDEXにより、「朝鮮・韓国」シリーズ23編を参照してください)

 さて、前置きが長くなりましたが本題に入って、その後を北朝鮮の立場から見てみたいと思います。金正恩の祖父・建国の父金日成は、日本から独立を勝ち取るための抗日パルチザンの出身、とされています。

 本拠は朝鮮民族にとって聖なる山、中朝国境線にある最高峰・白頭山中で、そこが出撃基地となり、息子の金正日の生家というのも現在名所になっているようです。しかし、戦時中は、ソ連軍の士官であったという証言もあり、同国以外ではあまり信用されていません。

 ソ連の対日参戦により、ソ連軍と満州から北朝鮮に進軍したのはその通りでしょう。ソ連が北朝鮮の指導者として、金日成を見出し送り込んだことも十分説明がつきます。彼は地下活動をしていた共産党の同志などを糾合し、建国を果たしました。そのあたりは、同志の詩人などが協力して神話に仕立てたようです。

 ソ連の傀儡といえば傀儡ですが、早速計画経済を取り入れ、再建を軌道に乗せました。その当時の南側は、やはりアメリカが同国に亡命中の政治家・李承晩を連れてきて大統領にしましたが、北と違う点は、日本本土同様米軍の占領下で自発的な行動が制限されていたことです。

 しかも、日本統治時代の官僚をそのまま活用するなどもあって民心が離れ、政治倫理、経済、生活水準など北に差をつけられ、今と逆のような有様でした。こういったときに朝鮮戦争が起きたのです。北からの侵攻により始まったのはすでに常識です。

 金日成にとって、南は、支配者が日本からアメリカに変わっただけで南の同胞は解放されず困窮の底にあえいでいる、これを開放するのはわれわれ共産主義者の崇高な使命であり義務である、と信じたとしても決して不思議ではありません。

 腐敗した李承晩の軍はなすすべもなく敗北し、釜山のあたりまで北に蹂躙されました。これに驚いたマッカーサーが日本から精鋭部隊をつぎ込み逆襲に転じたわけです。これで、日本は補給基地として特需に沸き、高度成長の手がかりを得ました。

 また、米軍の元山上陸作戦に日本の海上保安庁の掃海艇が参加し、1名の戦死者をだしていることはあまり知られていません。このように金日成にとってみれば、日本は大戦中から一貫して敵であり、いまなおアメリカと同様に敵対国であるという考えは変りません。

 北は、アメリカの物量作戦には到底太刀打ちできないということを悟りました。そこで南に工作員を放ち、内部から革命を起させることを考えました。また何度もの南北の攻防の中で、強制的または自発的に北側に移った人もすくなくありません。

 こういった人たちを北は高度に利用しました。手製の小型潜水艦で夜陰に乗じて韓国に潜入するようなこともたびたびありました。これが日本人拉致の下地になっています。敵国に勝つためには手段を選ばない――これが戦争というものです。日本人は北朝鮮と戦争をしたおぼえはないが、彼らにとっては首領様以来の宿敵だったのです。

 北は、中国・ロシアとともに旧共産圏の国だから仲がいい、だからアメリカとの同盟国・日本に敵意を持つのだろう――という発想は基本的に間違っています。北には有名な「主体性(チュチェ)」理論というのがあります。

 これは李王朝末期に「より強いものに従うことがもっとも安全」という「事大主義(大につかえる)」が国を亡ぼし、日本に併合されるような結果を生んだという、強い反省の中から生まれたものと思います。

 長い歴史を見ても、高麗は何度も中国から手痛い目にあっています。中国は隣の超大国ですから、たとえ妥協することがあっても、自らの自主性を堅持し警戒を怠ってはならないという考え方です。そのこともあってか、北の身勝手に中国が振り回されているようなところもあります。

 ここまで書くと、反戦塾は北朝鮮のよき理解者だと誤解するこ人がいるかも知れません。とんでもないことで、先軍主義をとり、世界で最も好戦的で、平気で他国を徴発し、自国民を窮乏させる、それだけが権力維持の唯一の手段などという国は、まさに「反戦」の逆を行くものだといえましょう。

 この稿の目的は、拉致問題解決にしろ6か国協議にのぞむにしろ、北に対するワンパターンの見方だけしかないようでは、何も生まれないということと、唇歯の間柄にある隣国を置いて引越しはできないということを言いたかったのです。

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コメント

ましまさんの北朝鮮に対する見解、同意します。

しかしましまさん、なんで現日本国憲法を擁護するんですか?
憲法前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」とありますが、世界には、特に日本の近くには、北朝鮮や中国のような、平和を愛しない好戦的な国が多くあるのに。

さっさと破棄して、世界の現状に即した、世界基準に見合った憲法にすべきでしょう。

投稿: makoto | 2012年6月10日 (日) 16時15分

makoto さま
ひさしぶり。私にしては長い文章最後まで読んでいただいたようでありがとうございました。

makoto さまは、まさか北朝鮮のために憲法を改正すべしといっているのではないでしょうね。それでは中国のためですか、それともアメリカがそういうからですか?。

makoto さまご存知の通り当塾は専守防衛の武装中立主義です。そして9条を世界標隼にしたいと思っています。 

投稿: ましま | 2012年6月10日 (日) 20時22分

昨年末に他界した金正日は子供のころロシア語しか知らず、朝鮮語が話せないため同級生からいじめられたとされていますよね。
今の生家は完全なでっちあげで、ロシアで生まれ育ったことが正解のようですね

投稿: 玉井人ひろた | 2012年6月10日 (日) 21時36分

 >子供のころロシア語しか知らず……

あゝ、それで長い演説ができなかったんだ。納得。ところで北朝鮮の人々は建国神話をどれほど本気で信じているんでしょうかね。

「天皇は神である」と教えられても、「朕がプッと屁をふれば、なんじら臣民臭かろう」と、小学生でもはやし立てていましたが。

投稿: ましま | 2012年6月11日 (月) 07時06分

ましまさん

私は、憲法改正、と言うよりも現憲法破棄の立場ですが、中国のためでも、北朝鮮のためでもありませんよ。
日本のためでしょう。

世界の現状に合わせて憲法を変えましょうよ。
くそアメリカに押し付けられた憲法を破棄しましょうよ。
何十年も憲法を改正していない国ってあるんですかね。
他国が作った憲法をありがたがって擁護する国民がいる国ってあるんですかね。

>そして9条を世界標隼にしたいと思っています。

9条が世界標準になるよりも、日本が滅びる方がまだ確率的に高いと思いますよ。

投稿: makoto | 2012年6月13日 (水) 03時27分

憲法を破棄しないと日本は滅びる――。どうしても結びつきませんな(゚ー゚)。

投稿: ましま | 2012年6月13日 (水) 11時43分

「憲法を破棄しないと日本は滅びる」

そんなこと、一言も言ってませんよ。
どこをどう読んだら、そんなふうに読めるのか。
めちゃくちゃな解釈をしないでいただきたい。

投稿: makoto | 2012年6月13日 (水) 17時13分

それはそうと、ましまさん、
なんで、4月18日の記事「敵塩になる都知事構想」のコメントを非表示(破棄?)にしたんですか?

投稿: makoto | 2012年6月13日 (水) 17時17分

makoto そま
たしかに「憲法を破棄」たしかに言っていませんね。それならばなおさら理由がわかりません。

4月18日のコメント、編集の際手が滑ったのだと思います。指摘されて気が付きました。ただしあまり古い記事についていつまでもその場を使うことは、管理上迷惑で、書き込み禁止にすることはあります。

投稿: ましま | 2012年6月13日 (水) 18時56分

あらあら。
「いつまでも」ってちょっと疑問に思っていたことを、ここに初めて一回書いただけなんですけどね。

ましまさんの「武装中立主義」と9条って相容れない気がしますが。
スイスのように永世中立国にしてどの国も頼らない。
その代わり、軍隊をしっかり持ち、兵役義務もある。
って方がまだ理解できます。

「戦力の不保持」を謳っている憲法9条が世界標準になって、でもそれらの国は軍隊を持ってるってのがましまさんの考えていらっしゃる理想的な世界なんですか?

投稿: makoto | 2012年6月14日 (木) 01時00分

「武装中立」は「非武装中立」の対語として使ったまでて、誤解されやすいので撤回します。

投稿: ましま | 2012年6月14日 (木) 07時20分

撤回して、どのような主義にされるんですか?

投稿: makoto | 2012年6月14日 (木) 17時33分

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