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2012年5月18日 (金)

再び岩見隆夫氏に駁す

 「徴兵制論は改憲への呼水」と題して、『サンデー毎日』に掲載された岩見隆夫毎日新聞客員編集委員の論旨を批判したのは2月、もう3か月前になる。その時は、昨今の若者の軟弱さに気合を入れる意味もあるのかな、と思えなくもなかったが、同じ『サンデー毎日』(5/27号)で自民党改憲案を「当然である」と明言し馬脚を現した。

 書き出しは、日本の情報組織や情報管理、つまり「インテリジェンス」能力が弱体なことについて、公安調査庁元幹部・菅沼光弘に問うたところ「ああ、それは憲法のせいでしょうね」と、あっさりあしらわれたことに、いたく同調したことからはじまる。

 そして、結語は護憲派の「平和維持は外交努力専一でやるべきだ」という意見に対し、「外交は防衛力の裏打ちがなければ貧相なものになることを戦後のさまざまな経験から知ることになった。そろそろ平和ボケのぬるま湯から出る時だ」で結んでいる。

 官邸に近い料亭、別名日本料理店で首相と直接会食するほどの大物ジャーナリストにしてこの程度の改憲論拠だ。「インテリジェンス」が弱体な根拠が憲法のせい、という小役人根性に乗せられるとは何とも情けない。

 情報関連部門の役人の怠慢を憲法のせいにされてはたまらない。戦後、占領下でも政治家・官僚は命がけで外交努力をし、それなりの成果を上げてきた。幣原・吉田・岸・田中、いずれを見ても今のような屈辱外交に甘んじてはいなかった。憲法とは全く関係がない。戦争に命を懸ける軍人と比べられるような外交努力を誰がやってきたのか。すべて責任をとろうとしない悪しき官僚主義の口実にしか過ぎないではないか。

 憲法を論ずるなら、今の憲法の案文がどういう経緯で生まれてきたか。9条1項では「自衛戦争は例外」という歴史的・国際的解釈をどう見るか、それに歯止めをかけようという2項と、自衛隊の存在・日米安保の運用をどう見るかなど、肝心な論点があるがそれらに一切触れていない。

 たしかに、現憲法はさまざまな「解釈」で歪められているという欠陥は認めざるを得ないし改善することにやぶさかではない。しかし岩見氏のように、戦争回避への道筋を追求することなく、ただ自民党案に短絡させるという安易な世論誘導には断固反対する。

 以上のほか、氏は朝日新聞に掲載された意見広告をやり玉に挙げる。端的にいうと非武装中立論と自衛隊段階的解消論批判である。詳述する余裕はないが、本塾の立場はこれまで言い続けてきたように、安保合憲、専守防衛の自衛隊是認である。

 したがって、自衛隊は海外での武力行使は禁止、解釈改憲や集団的自衛権是認を招く米軍基地は縮小。そのために自衛隊の強化が必要なら、思いやり予算などやめてそれに回せばいい。情報管理もアメリカに頼らず自前のものを築くことだ。

 それにつけても、いわゆる護憲勢力が何世代も前のキャッチフレーズから一歩も踏み出せず、岩見氏などの右傾化改憲勢力の伸長を許している「平和ボケ」の方がよほど心配の種だ。自民や民主のリベラルグループも眠っている。いつ奮起するのかしないのか!――。

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コメント

思いやり予算などやめて自衛隊の強化が必要だというのはそのとおりですね。
核搭載の原潜と戦術核ミサイルを整備するのは専守防衛に合致しますしね。
ただ、幣原・吉田・岸・田中ら戦後の政治家は、旧憲法下の教育を受け国家観があったからあれだけの成果を出したわけで、近年の首相の骨がないのはやはり新憲法下の教育の悪影響と思いますが。

投稿: ミスター珍 | 2012年5月20日 (日) 09時07分

ミスター珍 さま
こんにちは。

物騒な核武装は無用の長物。それより地対艦ミサイル網整備、次いで中距離弾道弾MDシステム完成が先でしょう。本家・護憲派は猛反対するでしょうけど。

田中他が戦前教育を受けたから……、さすがは「珍」説(*^-^)。初耳ですがちょっと本文の官僚答弁に似てませんか。

投稿: ましま | 2012年5月20日 (日) 10時34分

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