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2012年5月15日 (火)

中国の政情不安

 このところ中国の対外強硬策が報じられることが多い。日本に対しては尖閣諸島問題を「核心的利益」という表現で領土問題を先鋭化させたり、「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル主席への日本政府の査証(ビザ)発給をテロリスト支援と激しく抗議する。

 フィリピンの南シナ海のスカボロー島(中国名・黄岩島)の領有権問題は一発触発といっていいほど緊迫しており、中国の高圧的な脅迫には目に余るものがある。過去に領有を主張した実績がないなど、尖閣に対する日本の主張をそのままパクって恥ずるところがない。

 ここで、中国のいう「核心的利益」とは何かおさらいしておこう。(12/5/14  読売新聞より)

  中国政府が2011年9月に公表した「中国の平和的発展」と題する白書では、核心的利益を〈1〉国家主権〈2〉国家の安全〈3〉領土保全〈4〉国家の統一〈5〉国家の政治制度と社会の大局の安定〈6〉経済、社会の持続的発展への基本的な保障――と定義した。中国政府は台湾やチベットなどの問題について、核心的利益と表現している。

 要するにどんな小さいことでも国際紛争のネタにしようと思えば便宜的に使える便利な言葉である。ウィグルとチベットは、たしかに中国というより中国共産党にとって頭の痛い問題であろう。過去、チベットのダライ・ラマ来日に対しても前述のような強い反応は示さなかった。

 そのダライ・ラマに対して、中国の情報機関が女性スパイを使い、毒殺する計画が明らかになったということを15日の共同通信が伝えている。真偽のほどはわからないが、僧侶の自殺が相次いでいるということからも、締め付けが厳しくなっているのは間違いないであろう。

 アメリカとの関連では、障害を持つ人権活動家陳光誠氏の米大使館での保護や、近親者に対する逮捕、監禁などの弾圧、米国への出国申請などが相次いで報道される。当局が一体どっちを向いているのかわからない右往左往ぶりである。

 そういった政治の不安定化は、薄熙来重慶市党委員会書記の突然の解任に見られる権力者交代を前にした激しい権力闘争ぶりを示すものであるという解説が多い。この事件の裏にもイギリス人事業家の暗殺事件と妻の関与、腹心のアメリカ総領事館への駆け込みなど、少なからず国際的なかかわりが存在する。

 いずれをとっても、「核心的利益」をたてに強硬姿勢をとることが権力闘争を有利に導くことにつながると考えられているのだろうか。次の中国人民解放軍機関紙「解放軍報」の社説(中国網)がフィリピンを恫喝する表現を見ていただきたい。「政府はともかく軍は決して許さないぞ」といわんばかりの統制を欠くもので、国内の民衆を引き付けたい意図も丸見えだ。

我々が言いたいのは、黄岩島の領有権を奪おうとする者は誰であろうと、中国政府は決して応じないだけでなく、中国国民も許さなければ、ましてや中国の軍隊が許すはずがないということだ。

 中国の政情不安は中国の国内問題である。日本は中国の「核心的利益」プロパガンダに決して乗じられてはならない。中国人は古来現実的に物事を処理するのにたけている。感情的対処は国益になんら資するところがないことを知っておくべきだ。

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コメント

政府・政治家と言うのは、自国民に反感を持たれたりして自分の椅子が危うくなると国際問題にすり替える傾向があるようです。
中国や韓国と朝鮮などその典型かもしれません

投稿: 玉井人ひろた | 2012年5月15日 (火) 18時56分

玉井人ひろた さま
コメントありがとうございました。

中国の新聞はほとんどが党関係や軍の機関紙ですが、最近は部数の競争も出てきたようです。

部数を伸ばすためには、やはり排外的過激記事が有効なようで、日本の1紙、数種類ある週刊誌・月刊誌といい対象ですね。

投稿: ましま | 2012年5月15日 (火) 20時33分

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