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2012年5月22日 (火)

尖閣諸島ノート

 尖閣諸島問題で、知識もなく「怪しからん」と怒っている人がいる。中には相当偉い老練政治家もいる。その点では中国も同じだ。しかしそれだけでは、声の大きさで1党独裁の中国や台湾、香港に負けてしまう。

  「尖閣列島は日清戦争で日本が強奪したもので、歴史的にみれば中国固有の領土である。われわれは、日本帝国主義の侵略を是認し、その侵略を肯定してしまうことはできない」

 これは何と、日本では飛ぶ鳥を落とすほどの名声をあげた高名な学者の声明である。井上清の学説に基づき、1972年に荒畑寒村や羽仁五郎が加わった「日帝の尖閣列島阻止のための会」が発したものである。

 中国政府もしばしばこの井上論文を引用しており、日本不法の根拠としている。その中身が気になるが、イデオロギー先行の過激さが災いし、現代中国の若い研究者でさえ首を傾げかねないもののようだ。素人歴史マニアである塾頭が見ても独断・誤認・偏見が多く、とても世界に通用するようなものではない。

 向うがそうならこっちはこうだ、というような馬鹿な真似はやめて、日本の主張の正しさを堂々と世界に発信できるよう各人の知識を高めることが、武力行使の道を閉ざすこの際の最も愛国的な立場ではなかろうか。政治やマスコミはもっとこの点に努力を払うべきである。

 国益優先や日本の主張を訴えるには、現在の政府の「領土問題は存在しない」という姿勢が交渉に応じないというかたくなな態度でなく、「領海侵犯は取り締まるが必要ないことはしない」という立場、つまり、長年にわたり民間所有が続いてきたという実績が世界を納得させる有力な材料になるということに気付かなければならない。 以下は、参考となるメモの羅列である。

■国際法と境界
*領海等国連で決まった基準があるものは条約の批准国だけが拘束される。しかし領土が確定していなければ紛争のもとになる。その他の資源開発・利用等については法的に解釈が確立しているとは言い難い。

【防空識別圏】
*1969年防衛庁訓令で設定、72年より実施
*国際法上確立した概念ではない
*台湾飛行情報区と一部重複、問題は起きていない
【中間線】
*漁業専管水域などで複数国の水域が重複する際、便宜的にその中間を境界とする

【領海】12カイリ(約22.2km)、1972年公布施行(日本)
*1982年の海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約によって定められた。軍事・民間を問わず外国船の無害通航が認められている
【漁業専管水域】200カイリ、1972年公布施行(日本)
【大陸棚】大陸からつながる海中の斜面、台湾が漁業権と共に沖縄返還前から言いだした

■法理
【無主地に対する先占】
*無人で何人もその土地の使用をしておらず権利を有しないことを確認の上、領有の意図をなんらかの形で示す
*先占にあたつて主権行使の事実を他国に通告すべき義務はない。国際司法裁判所判例
*井上説や中国反対論は、先占の法理は、帝国主義国による論理で、認められないとする

【実効的支配】
*1884年1月 内務省、沖縄県に尖閣諸島調査を命令
*1884年3月 古賀辰四郎が尖閣列島を探検、その1島、黄尾嶼(九場島)の開拓許可を沖縄県に申請
*1891年 井沢矢喜太などが魚釣島などでアホウ鳥羽毛採取を開始
*1895年1月 尖閣諸島を日本領土に編入
*1896年9月 古賀辰四郎が政府から借り受け
 ・97年開拓(鳥毛の採取・燐鉱石採取・鰹漁業)に着手1940年頃まで継続
 ・相続した嗣子・善次が1932年国有地払下げを受ける
*1920年 中華民国長崎領事館が同国民が尖閣諸島(日本帝国沖縄県と明記)で古賀氏に救助されたことに感謝状
*米民政府と琉球政府実効的支配を維持継続
 ・射撃演習場設置、固定資産税調査などを行う
*1958年1月8日 人民日報が琉球に尖閣諸島を含めた解説記事掲載
*1972年5月尖閣諸島返還を含む沖縄返還協定発効
*中国は現在同島が日本の実効支配下にあることを認めている

■歴史と主張
*清・明の時代にさかのぼる琉球朝貢使往復の航海誌に、航路上の目標となる島や・命名などに関するの文献が多く示されるが、それらは「先占」や「実効的支配」を示すものではない。史料は古ければ古いほどナンセンス。魏志倭人伝なら日本も中国領になる。

*1871年4月 蕃社事件(台湾で琉球漂流民54人の殺害)。1873年6月、日本政府の抗議に対し「台湾東部のの生蕃は化外の者で清国政教の及ばぬ所」と回答。これが日本政府の琉球処分を正当なものとする根拠のひとつとなった。

*魚釣島中国人遭難事件
1919年(大正8)福建省漁民31人を古賀善次が救助。長崎駐在中華民国領事から石垣村長と古賀に感謝状贈った。
(事件発生場所を「日本帝国沖縄県八重山郡尖閣列島内和洋島」としている。和洋島は魚釣島をさす)。これは公式文書であるが、日本国内出先の感謝状で、まさか「中国領」とは書けまい。実効支配の史料として完全とは言えない(塾頭)。

* 1969年5月 国連アジア海域沿岸海底鉱物資源共同調査委員会(ECAFE)調査報告。これ以後台湾、そして中国の主張と行動が目立つようになる。

*「日清戦争の戦勝に乗じてひそかに清国から盗み取った」という説。
日本が尖閣諸島を領土に編入したのは、たしかに日清戦争の清国敗戦が確定的になった頃だ。古賀辰四郎らの開発要請などがあり、日本政府が現地調査に乗り出してから10年あまりたっている。これは、日本が中国領であることを知っていたからだとする意見がある。

 仮にそうだとすれば、日本は講和談判で賠償として得た「台湾とその周辺島嶼」に堂々と明記できたのにそうしなかった。「どさくさに紛れて盗み取った」という説は成り立たない(塾頭)。

■参考エントリー
琉球処分 2
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-9122.html
琉球処分 1
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/1-e8f7.html
・(本文のうち年表等は、浦野起央『尖閣諸島・琉球・中国』を参考とし、作成した)

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