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2012年1月 6日 (金)

米・新国防戦略、日本はどうなる

 オバマ米大統領が今日未明(現地時間5日午前)、国防総省で演説し、国防費削減に対応するための新国防戦略を発表した。各紙が報ずるところによると、米軍が約20年間にわたり維持してきた二つの紛争に同時対処する「二正面作戦」遂行の態勢を大幅に見直すことになる。

 イラク撤収は、なんとか終え、アフガニスタンからの段階的撤収を順調に進めたいところだ。これで地上戦力を大幅削減する。そして、欧州や中南米の戦力も削減し、中国の軍事的台頭に対処するため、アジア・太平洋地域に重点を置く方針を改めて明確化した。

 これは、ブッシュ以来の「テロとの戦い」で膨張した戦費が米経済の足かせとなっており、近づく大統領選に有利な足場を固めるためにも、避けて通れない選択となっている。世界の警察官をやめて、アジア・太平洋地区に交番を集めてしまおう、というわけだ。

 その具体的中身は、海兵隊や陸軍など、敵地に乗り込んで制圧する伝統的戦術をやめ、「ジョイント・エア・シー・バトル」(空海統合戦略)構想を推進することで、空、海軍の大幅削減は避けることのようだ。この構想は、動機や規模が全く違うが、専守防衛の自衛隊こそ他に先駆けて採用すべき方針だ、ということをかねがね当塾は主張してきた。

 わが国は幸いにして陸上に国境がない。国土を相手国からの侵略を防ぐため、予防的に国境を越えて侵攻しなれけばならない、ということもない。相手の侵略は、領海・領空の制海権・制空権を完全に把握していれば、敵の多数の兵士を上陸させることなどほとんど不可能だ。もし強行すれば、莫大な犠牲と損害を覚悟のうえということになる。

 それでも、人を伴わないミサイル攻撃やサイバー攻撃がやってくるかもしれない。当然それらには対処する研究開発を怠るわけにいかない。この分野も他国に決して劣るものではないだろう。こうして、アメリカの戦略と似ている部分をあわせ、「日米同盟の深化」ということはあり得る。

 ただし、大きな違いはアメリカには日本憲法の9条に相当するものがないことだ。安保条約上は、双方の憲法を尊重する規定があるが、これまでの経緯は、アメリカの都合が何かにつけまかり通る、つまりアメリカのいいなり外交で骨抜きになることばかりだった。この点が改められなければ、むしろ米中戦争に巻き込まれかねない危険があるのだ。
 
 沖縄のことだが、アメリカにとって最大の海兵隊を駐屯させる戦略的価値はほとんどなくなり、普天間の辺野古移転問題など、過去の遺物と化すことだろう。それを、環境調査報告の書類がとうのこうのと役所の小役人のやるようなことに神経を集中している。全く無駄というほかない。

 アメリカは、次に日本に何を要求してくるだろうか。まず考えられるのは「ジョイント・エア・シー・バトル」の自衛隊による一部肩代わりだ。もっと悪いのは、新戦略を日米を一体化した同盟関係ととらえ、グァムやハワイの基地費用まで分担させるというものだ。

 そのいずれも、日本憲法の改正や解釈変更を要求してくるだろうし、最大の目的である軍事費の軽減を実効あるものにするため、あらゆる方法で日本の協力を強要するだろう。これを避ける道はあるのか、平和憲法のある日本が、米中の間に立ち、お互いの覇権主義を批判して軍拡競争に歯止めをかけることである。

 これは、日米中いずれにとっても利益のあることだが、問題は日本の外交当局や首相にその能力がない。また、そのような国民世論も醸成されていない。このままのないないづくしでは一歩も進まない。ないものねだりだが、やはり健全な指導力を発揮する政治家の出現を待つしかないのか。

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コメント

国際政治では国軍という概念は薄れています。各国の軍隊は孤立しないための共同行動を主な任務としているのではないでしょうか。そういう意味では、様々な仮想敵国を想定しながらも各軍と連携することが侵略を防ぐ唯一の方法であるということは神代の時代から不変というものでしょう。

オバマ戦略は日本への負担というよりは、アメリカがユニラテラリズムからの方針転換を意味することで、アフガン戦争・イラク戦争から学んだアメリカの選択として分析しています。

いまでは国軍というと治安部隊ですか。国内の一般庶民に銃口を向ける軍隊が外国を侵略できる時代ではないです。帝国主義の残存物からの脱皮ができなければ、そういう国家は自壊する選択しか残されていないでしょう。

投稿: ていわ | 2012年1月 7日 (土) 10時46分

オバマ政権の『国防戦略を見直し』ですが日本のマスコミでは対中国言及に注目していますがこれは我田引水ですね。
米国は、矢張り最大の関心を持っているのは欧州(NATOブロック)の強化です。
そのために米国政府とロシアの協力も、新国防戦略の重要な要素。 
オバマ大統領は『米国は、ロシアとの絆を強め接近し、相互に関心のある問題を解決し、問題の全体的スペクトルに沿って作業するだろう』とかたる。
今では『冷戦は遠くなりにけり』なのですが、東アジアだけには何とか冷戦構造を残して欲しいと考えて危機を煽る前原や日本版軍産複合体にも困ったものです。

投稿: 宗純 | 2012年1月 7日 (土) 10時49分


ていわ さま

アメリカほど単純と複雑が同居している国はそうないでしょう。ユニラテラリズムとか、ナショナリズムとなると単純です。反対に政治となると、倫理観では宗教右派からリベラル左派まで、パワーでは在郷軍人・ライフル協会からグリン・ビースまで、人種はユダヤからヒスパニックまで、宗教も種々雑多。

 その複雑さのあまり、反動として前述の単純さが時々頭をもたげているように見えます。頭数の多さを誇る陸軍なんこ師団などという「国軍」は減少し、海空宇宙など、産軍共同体の働く分野は栄えるでしょうね。

投稿: ましま | 2012年1月 7日 (土) 13時02分

宗純 さま

 NATOにおけるアメリカの退潮は劇的です。今、EUが沈没しかねない台風の真っ最中にあるため、アメリカに手出しするメリットはないが、かりに逆経済発展のさなかなら、アジアに比重を移すなどとていいませんよ。

 NATOは事務方のトップは欧州人ですが、司令官はアメリカが務める慣習があった。それが、アフガンなどとは違い、リビアではフランスが主導権をにぎっているのだから様変わりも大きい。

 やはり、いろいろな面でアジアの方が金になりそうで、フランスやドイツのように生意気な国がないからではないですか。

投稿: ましま | 2012年1月 7日 (土) 13時32分

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