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2012年1月 4日 (水)

消費税と「蛮勇」政策

 東日本大震災が起きた時、当ブログは何をどう書くべきか、しばし言葉を失う状態になった。近所の学校は「本日臨時休校」となり、スタンドでは「売り切れ」札、路線バス「運休のお知らせ」などを写真に撮り、「非日常」と題するエントリーを2回ほど載せた。

 そして、同時に「これは、日本の敗戦にも匹敵する変わり目になるぞ」という不安が頭をよぎった。はっきり表現はできないが、「これで成長路線は終わり、いかに衰退を防ぐか、また経済破たんを避けるため、政治は全力を注がなければならなくなるだろう」ということ、「国民の負担増を甘受しなければならない時代が来るのではないか」ということである。

 その意味から、消費税アップと年金の一体改革に賛成である。反対論は、マニフェストに書いた時期と違う、行政改革、公務員の給料引き下げが先、不景気になって税収減を招く、あたりであろうか。いずれも確固とした方向性を示すものと思えない。

 マニフェストは、国内外の環境が大変化しているのだから変更するのが当たり前。必要な行政改革は日頃実行しなければならないが、官僚の知恵や行政サービス低下を招く強権政治はマイナス。景気の上げ潮を期待するだけでは、長年の体質を維持するだけ。簡単にいうと、そういうことだ。

 戦後経験のある人なら、金融ですぐ思い出すのが「新円切り替え」だ。終戦の年(1945)が翌年にかけてヤミ物価はみるみるうちに2倍になり、食糧不足は餓死者さえ出るほど深刻となる。政府は膨大な戦時国債をかかえ、銀行の貸し出しは増えるが、預金するようなバカはいない。

 この手の付けられないような事態に、及び腰の渋沢大蔵大臣をよそに、権限をはるかに越えるような「経済緊急対策」を提言したのは、大蔵省の中堅官僚だった。その骨子は、

①「全国民戦死ノ観念」で約1000億円の財産税をとろう②その財産をしらべるためには新紙幣を発行して旧紙幣と交換しなければならない③交換のさい預金の封鎖を断行しよう④軍需企業に対する補償は行うが、財産税もとる。

というものであった。これは、東大教授・大内兵衛の「戦時の政府債務を棒引きするくらいでなければ戦後再建は難しい。渋沢大蔵大臣は蛮勇をふるえ」と述べた線に沿っている(『昭和経済史下』日経新書)。そのうちの通貨措置が「新円切り替え」となったのだが、通貨発行高は激減したものの生産高が追いつかず、物価安定に向けた時間稼ぎに終わった。

  この「蛮勇」政策がすべて当を得ていたかどうかには問題があるが、やがてそれぞれが独特の効果を発揮し、戦後の体制を固めて次の成長の基礎となったことは間違いないだろう。大きな時代の変わり目には、それを意識させる「蛮勇」政策が求められる所以である。

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コメント

今年もよろしくお願い申し上げます。

いまの政界は「大胆かつ慎重に」というか「風林火山」というか躍動的なイメージが全く感じられません。
「宿題」は新学期の前日に片付ければいいのであって、国民にはバカンスを楽しませてほしいものです。この程度の「宿題」に頭を悩ませて、国民に「我慢だけ」を強いるようでは政治家としての技量はゼロです。
頭を悩ませばよいのはプロ中のプロである役人の仕事であって、政治家は災害復興に、経済の活性化に、新外交にと舞台を演出するのが仕事なのです。

投稿: ていわ | 2012年1月 4日 (水) 21時25分

早々とコメントありがとうございました。

消費税について書いたのは、これがはじめてです。態度を決めかねるということがあったのは、事実ですが与野党ともに政策にインパクトがなく、橋イズムなどに翻弄されている政界がなさけなくてこうなりました。

「新円切替」は子供心にも強烈な復興のメッセージでした。次はそのあたりを続けてみたいと思います。

投稿: ましま | 2012年1月 5日 (木) 11時11分

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