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2011年12月19日 (月)

福島事故で変わったこと

福島事故で原発をめぐる環境が去年までと違って大きく変わった。いろいろあるが、思いつくまま上げてみよう。第一に、一般国民の原発や放射能被害に対する知識が格段に高まり、政府や東電の施策や発表を批判する目が養われたことである。

 野田首相が「冷温停止」に「状態」を付け足して、ステップ2完了宣言をしたまやかし(「脱原発」に「依存」を付け足したのと同じ手口)を、町のおじさん、おばさんたちにまで見破られている。さらに、そのわきから、事故原因のヒューマンエラーによる部分が続々と明るみに出ている。

 事故発生後の前半では、ストレステストさえパスすれば、停止中の原発再開は比較的簡単に進むだろうと考えられていたが、中部の高浜、九州の玄海など住民が安全神話を了解するだろうという見通しは、かなり甘いと言えるようになった。

 2番目に、当塾でも早い段階で「脱原発」の定義と進行のパターンを示していたが、そのうちの節電効果は、不景気の影響もあるが夏冬を通じて想像以上の進展があったと考えられる。つまり、原発がなくても乗り切れるのではないか、という線がぼんやりながら見えてきた。

 かといって100%即時停止はやはり厳しい。そこで「ストレステストさえ」ではなく、再開しても安全度の高い原発をセレクトし、その中からお願いしていくような方針に転ずるべきだ。それでも合意が得られなければ、中途半端な「脱原発依存」を捨て、「脱原発」にはっきり踏み切って、代わるべき新エネルギー政策をフル回転させなければならない。

 一部の御用学者をのぞいて、発電に用いる原子力は過渡的なエネルギーで、いずれ再生可能なエネルギーがとって代わるという見通しが、科学者の間で有力であることを当塾でも紹介してきた。しかし福島事故で、原子力は過渡的エネルギーの座をもはや明け渡す時期にきていることが世界の趨勢になりつつある。

 新しい過渡的エネルギーは、天然ガスである。それならば化石燃料として既にあるではないか、と思われるだろうが、ここにきて脚光をあびているのが、これまでとは全く違う方方法で採取するシェール・ガスとメタン・ハイドレードである。

 シェール・ガスは、頁岩と称される地層の隙間から採取される。これまでもオイル・シェールとかオイル・サンドなど固体化した石油層が液体のそれに匹敵するほど存在することはわかっていたが、それからガソリンや灯・軽油を製出するには莫大な経費を要した。

 シェール・ガスは、そういった加工技術ではなく、ガスを安定的・継続的に採取する新方式の開発に成功したことによるもので、アメリカ・カナダなどではこの方法でガスの価格が劇的に低下することが見込まれている。

 アメリカ政府の原発政策は、日本の自民・民主とそっくり(逆か?・笑)だが、民間会社がそれを採用するかどうかの選択は日本より自由だ。したがって新設があってもごくわずかな数になるだろう。 シェール・ガスは、各大陸には賦存するが、日本にはない。輸入ガスの価格低下が見込めるだけだ。

 ところが、ガスについては、日本が世界有数の資源国になる可能性があるのだ。それが、メタン・ハイドレードである。どんなものかというと、メタンガスを含む大きな氷の結晶で、容積の20%がメタンだという。海底500m以下の地中にあり、海底に露出しているものもある。

 四国沖の南海トラフが最大で、その他海に囲まれた日本の各地沖合に散在する。今のところ日本で消費される天然ガスの96年分(Wikipedia)とされており有限の資源であることは確かだが、他の化石燃料に比べてみてすくない数字ではない。

 経済的な採取のしかたなど、まだ研究課題があるが、原発に投じられた開発費から見ればごくわずかな対応で商業生産できるだろう。日本海にあるものは一部露出して水泡を発しており、簡単に採取できるようだ。

 取り出したガスの回収、運搬、液化その他の処理技術は、日本は世界にないものを持っている。また、化石燃料だから燃やせば地球温暖化の原因となるCO₂がでるが、燃料のうちでは格段に少ない。

 それより、地球温暖化による海水の温度上昇で、溶け出すメタンガス自体の方が、豚のゲップや牛のおならではないが、はるかに悪影響を及ぼすという。それならばどんどん取り出して使う方がよほど地球環境にはいい。

 さらに、それを家庭用の燃料電池として使えば、夜昼なく家庭での発電が可能となり、給湯や床暖房用温水も確保できる。排出するのは水とわずかなCO₂だけで、送電ロスも排熱も生じないため環境と脱原発の優等生になれる。この方も装置のコストダウンが進み、機能の改良などに大きな楽しみがある。

 原発輸出や核燃料再処理など、ふんぎりの悪い後ろ向きのことをしている場合ではない。大きくハンドルを切れる政府がいつできるのか、待ち遠しい。

付録

金正日死去のニュースを受け、1年半前の記事を貼り付ける。

http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-3f81.html

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