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2011年12月15日 (木)

中国脅威論の不見識

 このところ中国マターの投稿が続く。G7は遠い過去、G8もだめ、EUは危機、G20も?といわれる中で、G2という声がしてきた。つまりアメリカと中国、GNP第1位と2位、軍事力もそのうちにという勢いであれば、世界を動かすのは2国関係だということになる。

 しかし、そのような発想は中国の自尊心を満足させ、より傲慢な姿勢を増長させるだけで、中国にとっても益するところがない。すでに「世界の警察官」を気取ったアメリカに、いいお手本がある。日本が心しなければならないことは、これまでのように、アメリカの眼鏡を通してみてさえいればいいという時代ではなくなったことを自覚することだ。

 中国は猛スヒードで変化している。かといって、4000年の歴史が消えたわけではない。時にふれ折にふれ身についた体質が顔をだす。それが中華意識であったり、儒教であったり、独善主義であったり現れ方はさまざまだ。

 その中で無視できないのが、民衆の貧しくしいたげられた長い屈辱と苦難の歴史である。中華といっても、清や元は漢民族が蕃夷に支配されていた時代であった。100年前に孫文の辛亥革命で近代国家の芽はでたものの、その前半は国内分裂、日本の侵略で、以前にも増した暗い時代が続いた。

 それを切り開いたのが毛沢東の中国共産党と人民解放軍である。敵は日本軍(後に周恩来は「日本人民は同じ被害者であり、敵ではない」と述べた)と蒋介石軍で、日本敗退後内戦に勝利して台湾をのぞく統一国家を確立できたのは1949年である。

 今の国を作ったのは、群雄割拠する地方軍閥の代表でも、資本家・地主の代表でもない。もっと広く力を結集できる「人民」を原動力として戦い抜いた「人民解放軍」と、指導に当たった「共産党」であるという考えである。

 つまり、「党」が先で「国」は後からできたもので、党を抜きにしては国が存在しないという理屈にもなる。人民解放軍が党の軍隊というのも、その伝統を継いでいる。日本や西欧の、国家、政党、議会、軍隊をそのまま当てはめてもわからないことだらけだ。

 日本には「共産主義」だからそうなる、という単純な考えがあるが、全く違う。毛沢東の事績を追ってみても、本家のソ連と厳しく対立したり協調したりの融通無碍ぶりで、開放政策以来の市場経済の中で、日本では考えられないような大富豪が生まれたり、激しい所得格差が生じたりしている。むしろ共産主義とは縁遠いとさえいえる実態だ。

 領土が広く人口も多い。治安やインフラ整備、外交その他たもろもろの行政機関としての国家が必要である。その国家主席であり、同時に共産党トップである中央委員会総書記を兼ねているのが、胡錦濤である。

 温家宝は、国家の中の政府にあたる国務院総理であるが、党中央委員会に直結する「中央軍事委員会」(胡錦濤首席)はその指揮下にない。党と国家は2重権力機構で、日本から見ると政権がふたつあるように見える。しかし、幹部のほとんどが兼任しており、構造上は党高政低になっているようだ。

 この前の高速列車転覆事故の処置は、国務院の省庁にあたる「鉄道部」が関連するものと思われるが、その責任者が党の要職にあり、力を持っているとすれば、どういうルートで末端に指示が行ったのかわからない。

 党には「人民を指導する」という、憲法上の重要な任務があり、「人民日報」の発行やその他情報・宣伝に大きな権限を持っている。それらが、どう機能していくのか、他の民主主義国が育ててきた近代的なルール―とどう整合させていくのか。国家としての未熟さは衆目の一致するところだ。

 中国は試行錯誤を重ねながら、国内の不安要素をとりのぞき、国際的孤立をおそれ、巧みに舵を切っていくことに懸命である。中国に迎合する必要は全くないが、中国の脅威を必要以上に喧伝し、ナショナリズムに火をつける、例えば自民党石原幹事長の「尖閣に自衛隊常駐を」などという発言など、どこの国にとっても全く害あって益のない不見識といわざるを得ない。

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

いまの中国は脅威というよりは大きな市場です。日本経済のことを考えれば市場を開放するように外交で揺さぶってほしいと考えます。

軍事的脅威と感じるなら軍拡を提唱すればいいでしょう。文化的脅威と感じるなら文化侵略を批判すればいいでしょう。民族的流入の脅威と感じるなら国際結婚を批判すればいいでしょう。日本は言論の自由があります。

中国共産党は綱領にある共産主義という文言が消滅していないだけで、いまや共産主義者の前衛党とはいえません。毛沢東らの革命第一世代は自己犠牲という信念があったでしょうが、さて今の共産党指導部というのは、出世競争の勝ち組であって大衆収奪のトップに君臨している支配者にしか見えないのですが。

投稿: ていわ | 2011年12月15日 (木) 21時08分

中国の漁民が暴れまくり、韓国海洋警察に殺人で逮捕されましたが、犯人は次のどれでしょう。

1.自暴自棄
2.無知
3.英雄気取り
4.金儲け
5.貧困

私は3.だと思うんですが、国内にまだそういった甘やかしが通るというか許してしまう空気があるんでしょうか。そこらはしっかり党が教育しなければ、党の将来も危ないですね。

投稿: ましま | 2011年12月16日 (金) 17時40分

だいぶ中共にシンパシーをお持ちのようですが中共もまたシナ大陸を支配した歴代王朝のひとつでしかありません。毛沢東を初代皇帝とする中共王朝の第6代皇帝が胡錦濤というわけです。国府との内戦に勝って政権を掌握した軍事政権であり同時に強権支配と言論統制は共産党特有のものです。
今の資本主義経済化は漢民族18番の現実主義の表れですが資本主義が必然的にもつ自由への欲求を「反日」にそらすためにあれこれやっているわけです。「保八」とかで8%成長を維持しなければ大乱に陥ってしまうので絶えず周囲への膨張を図らなければならないところは19世紀の帝国主義国家の要素も持っています。フィリピンは南沙諸島のミスチーフを取られてしまいました。ベトナムも赤瓜礁を取られてしまいました。台湾は風前の灯です。チベット・ウイグルはご覧のとおりです。
中共は尖閣を自国領だと主張していますし沖縄も回収したいようです。ソ連亡き後の最大の仮想敵国として厳重に警戒しなければならないと思います。

投稿: ミスター珍 | 2011年12月17日 (土) 22時16分

ミスター珍 さま
 よく読んでいただいているようで感謝します。もしお願いできたら下記の記事をあらためて御笑覧下さい。中国共産党王朝説は当塾の持論ですし、尖閣所属の問題では、根拠を持っています。大筋では珍さまの意見と符合します。

 ただ、現実を無視した反中や相互理解を拒否するような意見からはなにも生まれません。日本が損をするだけです。色眼鏡をかけて思考停止することだけはやめましょう。
なお、仮想敵国を念頭に訓練したりするのは自衛隊だけの仕事です。そのことも理解しましょう。

http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/post-8d18.html
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-1032.html

投稿: ましま | 2011年12月18日 (日) 10時28分

チベットやウイグルは中華民國(台湾)も領有権を主張しています。
清帝国にこれらの国は漢民族の大量移民が行われました。

固定観念と先入観から、
チベットや東トルキスタンは
毛沢東が侵略するまで別の国家だったという誤解は本当に根深いです。
中華民国(台湾)はモンゴルですら全域自国領土だと言ってます。


台湾と中国の関係はむしろ改善しています。
台湾はむしろ親中化するなど余裕の構えですが。

しかし不思議なのは「中国政府は国内不満をそらすために反日を煽っている」は必ず出てくるフレーズですね。
誰が最初に言ったのかしら?
「日本のマスコミが国内問題から目をそらすために反中を煽っている」という説を寧ろ私は唱えますが。


中共が結局、前衛党を捨てて自民党並みの中身空っぽ党に成ったのは残念。
そして彼らの独裁は下手です。
共産党体制は一度解体して、統一ロシアのようなポピュリズム政党でも目指した方が良いのかもしれません。

投稿: ザビー | 2011年12月23日 (金) 23時05分

サビー さま
コメントありがとうございました。

私は、天安門にいまだ飾ってある毛沢東が現中国を象徴していると思います。つまり清王朝のあとは孫文の念願に反して統一国家ができなかった。軍閥としての蒋介石が有力のようだったが、反日より反共を優先させる政策で、毛の人民解放軍を壊滅させようとした。

つまり、清王朝のあとを継いだのは毛(共産党)王朝だという強い思い入れがあることです。チベットは、明らかに漢民族とは違う文化をもち、歴史的に見ても違う国としていいはずです。

しかし、蒋介石軍はチベットに逃げ込み、共産党だから宗教を抹殺するという宣伝でチベチツト人を前線で戦わせました。

毛の軍隊はチベット人民を奴隷制度(それに近い実態はあったのですが)から解放するという大義があります。

そういった意味で、チベットを手放すということは共産党も人民解放軍も否定することにつながりかねません。

だから、国より先に党があり人民解放軍があり、それが統治の源泉(力)にあるわけです。

なお、太平天国の乱にしろ、八路軍(抗日を掲げた共産軍)にしろ、ナショナリズムは往々にして国内紛争を有利にするために使われ、長い歴史を見ても決して中国の体質そのものではありません。 

投稿: ましま | 2011年12月24日 (土) 11時03分

「必要以上の中国脅威論」
これがミソだよね。「必要」の範囲は議論を要する問題だが、日本にとって中国のような急激に膨張する
全体主義国家が大変な脅威である事はいうまでもない。
それを「必要以上の脅威論」で一刀両断したように見せかけるレトリック。
賢明なる諸賢はどうかこのような不見識どころか卑劣極まるレトリックには騙されないようにしてほしいものだ。
中国は大変な脅威で、その脅威に対抗するにはあらゆる手段を検討すべきである。

投稿: あ | 2012年1月22日 (日) 15時24分

おらゅる手段、具体的な提案があったらお願いします。

投稿: ましま | 2012年1月22日 (日) 20時55分

こんな国が信じられますかねぇ。


新聞の抜粋

尖閣諸島(中国名:釣魚島)の周辺海域で地殻構造の調査をしていた海上保安庁測量船が、中国の海洋監視船から調査の中止を要求された。これについて、中国外交部の洪磊報道官は、「中国側は一方が東シナ海の領有権争いがある海域で一方的な行動をとることに反対している」と表明した。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。
 報道によると、19日19時20分頃、沖縄県久米島の北北西約170キロの「日本の排他的経済水域(EEZ)」で、中国国家海洋局の「海監66」が日本の海上保安庁測量船「昭洋」に無線を使って海洋調査の中止を要求した。「昭洋」は地殻構造の調査をしていたという。
 海上保安庁によると、両船は最短で約550メートルまで接近し、並走した。中国の「海監66」は海保の「昭洋」に調査の中止を要求し、その海域が中国の管轄海域であると警告した。
 20日に行われた外交部の定例会見で、洪磊報道官は、「中国の東シナ海問題における立場は明確かつ一貫したしたもので、いかなる一方が東シナ海の領有権争いがある海域で一方的な行動をとることに反対している。中国側は日中両国がともに努力し、関連の問題を適切に処理し、実際の行動で東シナ海情勢の安定と日中関係の大局を維持することを望んでいる」と表明した。

投稿: makoto | 2012年2月22日 (水) 01時33分

こんなのも出ましたね。

「中国の華僑向け通信社「中国新聞社」(電子版)によると、中国江蘇省南京市政府は21日夜、1937年に起きた南京事件について、「虐殺はなかった」と河村たかし名古屋市長が発言したことを受け、同市との交流を一時停止することを明らかにした。名古屋市と南京市は友好都市提携を結んでいる。」

また、日本が譲歩して解決するんでしょうね。

投稿: makoto | 2012年2月22日 (水) 02時18分

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