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2011年12月 9日 (金)

『三酔人経綸問答』と中国

 民主主義者の洋学紳士君と侵略主義者の豪傑君が、南海先生の家で酒を飲みながら侵略と戦争を語り合う。(中江兆民『三酔人経綸問答』岩波文庫)

 たとえば、中国などは、その風俗、風習から言っても、その文物、品格から言っても、また地理的に言っても、アジアの小国としてはいつもこれと友好関係をあつく、つよくすべきで、たがいに恨みをおしつけあうようなことのないよう、努力すべきです。わが国がいよいよ特産物を増し、物資を豊かにするならば、国土が広く、人民のいっぱいいる中国こそ、われわれの大きな市場であって、尽きることなく沸く利益の源泉です。この点を考えずに、ただ一時的に国威発揚などという考えに取りつかれて、ささいな言葉のゆき違いを口実にして、むやみに争いをあおりたてるのは、ぼくから見れば、まったくとんでもないゆき方です。

 こういう議論をする人もある、中国はもともと、ずっと前から日本に恨みをはらそうと思っている。こちらがたとえ礼をあつくし、友好の情をふかくして、仲良くしようとしてみても、も一つの小国との関係から、むこうはいつも怒りの心を持っている。それで機会さえあれば、むこうはヨーロッパの強国と共謀し、約束を結んでわが国を排斥し、強国の餌食にして、自国の利益をはかろうとするようなことがないとはいえない、と。しかし、私の見るところでは、中国はそんなことまで考えていないように思われる。多くのばあい、国と国とが恨みを結ぶのは、実情からではなくデマから生ずるものです。実情を見破りさえすれば、少しも疑う必要がないのに、デマで憶測すると、じつにただごとならぬように思えてくる。だから、各国がたがいに疑うのは、各国のノイローゼです。青眼鏡をかけて物をみれば、見る物すべて青色でないものはない。外交家の眼鏡が無色透明でないことを、私はいつも憐れに思っています。

 これは、明治20年、124年前で日清戦争をさかのぼること7年に発表されたものである。引用は現代語訳されたもので、原文では「中国」ではなく「支那国」となっている。

 長い引用を試みたのは、ご想像の通り、最近の一部中国脅威論が120年前と全然変わってないなあ……、という印象を持ったからである。

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コメント

30年程前のことになります。ソ連脅威論というのがありまして、当時の自民党青年部のお兄ちゃんに「ソ連が攻めてきたらどうすんだ」とお説教をいただきまして、「ゲリラになるに決まってるじゃん」と答えたら何も言わなくなったことがあります。
もし中国が攻めてきたら、答えは一つ「ムジャヒディンになるだけ」ということです。現状を憂い極論を掲げてガタガタ騒ぐのも結構です。国内政治が外国の干渉に右往左往するようになれば侵略される機会を与えることになりますが、それほど日本の選挙民は愚かではないでしょ。
いつもながら、些細なことで大騒ぎするのも大いに結構なことです。役人はメディアの大騒ぎを外交カードとして利用しているので、彼らのために大騒ぎするのも良いではないですか。私は役人が嫌いなので答えは一つということです。

投稿: ていわ | 2011年12月 9日 (金) 21時52分

『三酔人経綸問答』にはこういうくだりもあります。敗戦時の「本土決戦」とごっちゃにする向きなきにしもあらずなので、本文に引用しませんでした(以下引用)

 南海先生、「もし彼らがほかの国々の批判をも恐れず、国際法の説に遠慮もせず、議会の議論をも無視し、よこしまな心であえて攻めて来るならば、われわれはただ力のかぎり抵抗し、国民すべてが兵士となり、あるいは要害によって守り、あるいは不意をついて進撃し、進み、退き、出、かくれ、予測もできぬ変化を見せ、相手は客、こちらは主、相手は溥儀、こちらは正義というので、わが将校や兵卒が敵愾心をいよいよ激しく燃やすならば、どうして防衛することができぬなどという道理がありましょう。この点、軍人の職にあるものには、当然、すばらしい戦術があるにちがいないところです」

投稿: ましま | 2011年12月10日 (土) 09時28分

>たとえば、中国などは、その風俗、風習から言っても、その文物、品格から言っても、また地理的に言っても、アジアの小国としてはいつもこれと友好関係をあつく、つよくすべきで、たがいに恨みをおしつけあうようなことのないよう、努力すべきです。わが国がいよいよ特産物を増し、物資を豊かにするならば、国土が広く、人民のいっぱいいる中国こそ、われわれの大きな市場であって、尽きることなく沸く利益の源泉です。この点を考えずに、ただ一時的に国威発揚などという考えに取りつかれて、ささいな言葉のゆき違いを口実にして、むやみに争いをあおりたてるのは、ぼくから見れば、まったくとんでもないゆき方です。

ましま様のご指摘通りです。大賛成です。
わたしは、銀行を辞めて、1991年から足掛け5年間、中国北京市内の日中合弁ホテルに事務所を構え、日中合弁事業のコンサルタント業務やちょっとした貿易を生業にしてました。上海、南京、武漢、成都、鄭洲、深セン、香港などあらゆる地をめぐり、名だたる国営企業の総経理(会長)や企業内中国共産党幹部とも懇意にさせて頂きましたが、皆さん友好的でご親切…。日本の世界に冠たる最先端技術や日本型企業経営を高く評価し、日本企業との合弁事業を心から望まれてみえました。社会主義経済下の企業と資本主義経済下の企業との合弁交渉ですから商習慣や、物の考え方も全く違うのは当然で難儀もしましたが、合弁事業を成功させようとの目標は日中双方、同じ考えでしたので、どちらも真剣勝負、侃々諤々あり、緻密なすり合わせありの交渉の末、契約締結にこぎつけるという寸法でした。やはり外交も同じだと思うんですよ、腹を割って目を見て話さないと…、上辺だけの玉虫色の美辞麗句だけでは、見透かされ、信頼関係など生まれっこ無いんですね。ましまさんのご指摘通り、中国の市場は、底知れぬ巨大さを持っています。四川省だけでも人口は日本の全人口とほぼ同じ、面積は数倍…。これだけ見ても、中国と些細なことで仲たがいする様なことは、お互いのためになりませんよ。民間レベルでは、輸出入とも莫大な貿易量ですし、草の根の文化交流も裾野ひろく展開されています。 大人の考えで大人の付き合いをするべきと思うんですが…、如何でしょうか?…。

投稿: 青い鳥 | 2011年12月11日 (日) 07時45分

青い鳥さん

悪いけど、信じられません。
中国は高速鉄道に、日本の新幹線の技術供与を受けていたにもかかわらず、「独自開発」とのたまって、アメリカや欧州で特許を申請していませんでしたっけ。

あなたの言うように良い中国人もいるでしょう。
でも、やっぱり中国は信じられない。
特に中国共産党はね。

質問に答えてくださっていないので、もう一度させてください。
あなたは、「殺されても殺さない」という信条をお持ちなんですよね。
その信条を、子供にも教えていらっしゃるんですか。
「強盗が来ても、歯向かうな。殺されても殺すな。」と。

もう一つ。
あなたの目の前で自分の家族が殺されようとしているときでも、相手を殺すことは絶対に避けるんですか。
つまり、相手を殺してしまう可能性があるのなら、家族が殺されるのも止むを得ない、という信条でしょうか。

ぜひ教えてください。

投稿: makoto | 2011年12月11日 (日) 16時21分

過大評価も過小評価もいけません。前にも言いましたが、掘り下げていけばだんだん本当の姿が見えて来るものです。

ただ排他主義で敵愾心をあおることからは何も生まれてきません。日中の有識者はそれが一番困ることで、日中双方にとってどうするのが一番いいかの考えは意外に接近していると思います。

投稿: ましま | 2011年12月11日 (日) 18時05分

中国が攻めてきたらゲリラになって戦うとか言う人がいますが時代錯誤もいいとこですね。人的損失・物的損失が大き過ぎて現代人には耐えられませんよ。そもそも武力で侵略するのは下の下策、戦わずして勝つというのが彼らの上策。いわゆる間接侵略、メディアや政治家を篭絡して自分らの意のままになる政権を操る、というのが賢いやり方。最近でいえば読売がスクープした脱北者を今後受け入れませんという誓約書なんかがその一種です。
日本人はお人よしで根が善人だから騙されやすいのです。中国で5年も仕事していながら、腹を割って目を見て話せば信頼関係が生まれると信じている人なんかが彼らのカモになるわけです。
漢民族とアングロサクソンは狡猾さと貪欲さと粗暴さで東西の両横綱だということを肝に銘じて欲しいです。

投稿: ミスター珍 | 2011年12月11日 (日) 21時05分

ていわさん

>「ゲリラになるに決まってるじゃん」と答えたら何も言わなくなったことがあります。

それって、「こりゃ、だめだ。こいつに何言っても無駄だわ。」って呆れられたんじゃなくて?

ましまさん

>ただ排他主義で敵愾心をあおることからは何も生まれてきません。

排他主義、ではありませんよ。
中国の恫喝外交、狡猾外交に一歩も引かず、主張すべき所は主張すべきだと言うのです。
「まず友好」と考えている人には、それが排他主義に写ってしまうんでしょう。

投稿: makoto | 2011年12月12日 (月) 02時45分

>中国で5年も仕事していながら、腹を割って目を見て話せば信頼関係が生まれると信じている人なんかが彼らのカモになるわけです。

失礼千万…。わたしが契約に携わって創立した日中合弁企業は、全て20年以上経った今も発展し続け、日中友好の礎となっていると自負しています。わたくしに対する侮蔑を謝罪なさい…。

投稿: 青い鳥 | 2011年12月12日 (月) 15時00分


makotoさん、誰も中国政府を信頼しろなんて言ってませんよ。
信じる、信じられないみたいなレベルの話じゃ有りません。


「中国は嘘がまかり通るから信頼できない・・」
これは反中屋さんの定番台詞ですが、
日本政府も含め、政府とは基本的に嘘つきです。


政府や政党の発表を完全に信じる方がアホなんです。
嘘と騙し合い、狡猾な駆け引きが政治外交です。

他人の揚げ足をとって恨みや怒りから発言していると、
女の子にモテなく成りますよ。


投稿: ザビー | 2011年12月12日 (月) 20時11分

サビーさん

初めまして?

>政府や政党の発表を完全に信じる方がアホなんです。
嘘と騙し合い、狡猾な駆け引きが政治外交です。

まったく同意。
日本政府って、外交に関してはほんと、狡猾さがまったくないからなぁ。

揚げ足、取ってないよ。

女性にはそこそこもててるから大丈夫。
クリスマスは、結構出費が多くて大変です。

投稿: makoto | 2011年12月13日 (火) 01時40分

makoto様…
ご返事が遅くなり、申し訳ありません。
>その信条を、子供にも教えていらっしゃるんですか。……
わたしの子供は女性ふたり(一卵性双生児)ですので、非力で優しい娘たちですので殺さないでしょうが、わたしひとりの覚悟ですので、全くの別人格の子供には当然に自分の考えなど押し付けはしませんよ…。
>もう一つ。
あなたの目の前で自分の家族が殺されようとしているときでも、相手を殺すことは絶対に避けるんですか。
つまり、相手を殺してしまう可能性があるのなら、家族が殺されるのも止むを得ない、という信条でしょうか。
ぜひ教えてください。

当然、正当防衛はしますが、絶対に殺人はしないという覚悟をしているということです。大切な家族ですもの命懸けで守るのは当然ですよ…。 ただ相手は絶対に殺さない覚悟を持つことです。
わたしの高校時代の恩師が、愛情のつもりで平手打ちを生徒にしてしまい、打ち所が悪く、その生徒を不幸にも死なせてしまいました。先生は今でも悔やんでみえますよ…。わたしたち生徒全員で減刑の嘆願書を裁判所に提出しましたが、減刑されませんでした。人間の命の尊厳は何より重く、簡単に人の命を殺めることを論じたくないのです。 makoto様…
この件は、これきりにして頂きたい…。

投稿: 青い鳥 | 2011年12月13日 (火) 17時31分

青い鳥さん

ご回答、ありがとうございます。
僕は、自分の家族や大切な人を守るためだったら、侵略者や強盗を殺すことに躊躇はしないでしょうね。

>人間の命の尊厳は何より重く、

人の命以上に大切なものは確実に存在しますよ。

>この件は、これきりにして頂きたい…。

わかりました。

投稿: makoto | 2011年12月13日 (火) 18時17分

makotoさん、チュウゴクへ怒りを覚えるのは貴方の自由ですよ。
しかし、「日中分離はアメリカの高等戦略」なんです。


貴方の台詞を見ると、どうやら統一教会御用評論家の黄文雄の影響が垣間見れます。
ピュアだからチベット虐殺みたいなおとぎ話も信じてしまうのでしょうね。


マスコミの反中トリックは本当に嘘と見破るのが難しい。
B層は「人権」の罠にかかり安易な中国叩きに走りがちです。善人は引っかかりやすい。

上海協力機構にモンゴルやインドも加盟しています。
中国を警戒しつつ、猜疑しつつもモンゴルもインドも米国の没落を知って、中露に接近しています。


我が国は核武装などできっこ有りません。
憲法九条すら改正できないのです。
国民は目先の生活苦が最大の関心で、
核武装など一部の閉鎖的なサークルが唱えているだけです。高岡蒼佑現象と同じです。

投稿: ザビー | 2011年12月13日 (火) 20時17分

ザビーさん

なんか、文体がファミリアーだなぁ。
ほんとに「初めまして」だっけ。

あなたの考えは大変よく分かりました。

投稿: makoto | 2011年12月14日 (水) 02時55分

青い鳥さん、気を悪くされたのなら失礼。
でもかなりのお年とお見受けするのに或いは中国ビジネスが長いのに中国に対する純朴な見方、ある意味信じがたい。「日中友好は日本を滅ぼす」という本もあるんですが。

投稿: ミスター珍 | 2011年12月17日 (土) 22時31分

青い鳥さん

>わたしが契約に携わって創立した日中合弁企業は、全て20年以上経った今も発展し続け、日中友好の礎となっていると自負しています。

こんな記事が出てますが、
これでも、日中友好なんて言ってられますか。
これでも、中国を信用できますか。

東シナ海ガス田「樫」から炎…中国が単独開発
政府が中国政府と共同開発の協議対象にしている東シナ海のガス田「樫」(中国名・天外天)で、中国が単独開発を続けていることが3日、読売機から確認された。
 採掘施設には中国の国旗が掲げられ、パイプの先端から炎が常時数メートル噴き出しているのが見えている。
 日本政府も同ガス田の施設から炎が見えたことを確認しており、1月31日と今月2日の2回に渡り、中国側に抗議した。日本側は、ガス田共同開発の条約締結交渉を早期に再開するよう求めている。
「読売新聞」

投稿: makoto | 2012年2月 3日 (金) 19時42分

この問題に関心があるようなら
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-6622.html
を見てください。いろいろな経過がありました。

青い鳥さんの意見と全く関係がありません。言い換えれば議論になりません。話し合って双方の利益になるような道をさぐるのが唯一の解決方法で、野田さんの言う「戦略的互恵関係」です。

>印をつけてあてこするのはやめましょう。

投稿: ましま | 2012年2月 3日 (金) 22時00分

上のエントリを読みました。
あなたのお考えは大変よく分かりました。
私には到底理解できない思考ですが。

こういう日本人特有の思考が、中国にちょっとずつちょっとずつ踏み込まれてしまう原因でしょうね。

投稿: makoto | 2012年2月 5日 (日) 17時54分

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