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2011年12月21日 (水)

国粋症候群

 「国際猜疑論者」「対外興奮患者」「国際神経衰弱病者」「慢性愛国患者」「憤慨常習病患者」「大和魂己惚病」「戦争慢心病」

 これだけ並べ立てると、「こりゃあ なんじゃ」ということになる。1925年(大正14)、『中央公論』2月号に載った水野広徳の論文からとったものだ。水野は戦前の有名な反戦ジャーナリストだが、出身は日露戦争で水雷艇長として武勲をあげ海軍大佐までつとめた武人である。

 上述のようなこなれてない新造熟語を濫発しているのは、それだけ戦争に幻想をいだき無鉄砲に美化してしまう人間が多いことに危機感を持ったからであろう。その頃、何があったのか。前年秋に、太平洋上で武力を張り合うような大演習が2国間で相次ぎ行われた。

 日米と中国ではない。日本とアメリカなのだ。その前、5月には米上下院で人種差別につながる「排日移民法」が可決された。日本の海軍が描いた仮想敵国はアメリカなのである。しかし、その後戦局は陸軍により満州・中国から発展し、水野が恐れた国の破滅は、20年後に至って現実のものになった。

 水野がさまざまな病名をつけて警告した対象は、職業軍人だけではない。マスコミ、政治家、文化人、一般国民に広く呼びかけている。しかし、これをまっとうに受け止めたのは、ごく少数の識者だけであった。

 国際情勢を冷徹に分析し、誤った道を踏まないよう警告を発した先人は、水野だけではない。福田元総理が外交の指針としたといわれる『日本之禍機』は、すでに日露戦争後まもなく発表されており、当塾でも紹介した。

 その中から、次の警句を引用し、この記事の締めくくりとしたい。

今日日本の要する所は実に反省力ある愛国心也。先づ明快に国家前途の問題を意識して、次に之に処するに非常なる猛省を以てするにあらざれば、国情日に月に危かるべし。

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