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2011年11月 7日 (月)

天皇と憲法(その4)

 前回の、女帝に道を開く皇室典範の改正や、天皇の「国事行為」に「祈り」を加えたらどうか、という結論に、さらに説明を付け加えたい。まず、大日本帝国憲法下の天皇が、連綿と続いた天皇の姿、在り方だと思っている人の誤解についてである。

 1867年の徳川幕府大政奉還から、1889年憲法発布まで22年かかっており、その間戊辰の役など日清戦争を上回る犠牲者のでた内戦もあった。TVドラマで見る坂本竜馬あたりだけが明治維新だと思ってはいけないのである。

 統幕派、佐幕派を問わず、志士が目指したのは、回天、天業回古であり、一揆その他で参加した民衆は、ご一洗、百事ご一新、世直し元年といった。下級武士と民衆が参加したまぎれもない「革命」であり、当時はその言葉も使われていたが、左右両陣営とも「革命」に位置付けたくなく、「維新」という、政治改革または変革のような印象を定着させてしまった。しかし、この時に統治権を含む、天皇のあり方に革命的変化が生じたのである。

朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ德ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ教育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス

 以上は、明治23年の教育勅語の出だしだが、新・保守反動が目指す天皇像は、このあたりのことだろう。「忠」「孝」を道徳律の中心に据えた儒教臭の濃い発想は、徳川幕府の武家支配システムの中で発展したもので、挙国一致、肇国以来の国体の精華などというような過去からの連続性は全くない。

 「家」を中心に、男長子相続で御家人など地方支配層を確保することは、鎌倉幕府以来武家支配の要であった。話は飛躍するが、「税金の配偶者控除廃止は、日本の家族制度を破壊」云々などという、主に右派がする主張は、氏姓すらない農民以下の多数の国民には、ファミリーはあっても家族制度などに縁はなかったことを度外視している。

 天皇をいう場合は、古代の祭祀を中心とする天皇、奈良・平安時代の律令下の天皇、武家支配の象徴天皇、明治憲法下の神聖天皇、そして、国民主権のもとの象徴天皇ということになる。天皇が1500年続いたとして、明治タイプの天皇はわずか5、60年に過ぎないのだ。

 これからの天皇像を憲法の上でどう考えるか。祭祀の伝統形式を宗教とせず、国民のための祈りという意味で、国事行為」に格上げしてはどうだろうか――というのが前回の提案であった。そこで、天孫族系大王(おおきみ、「天皇」はあとでできた漢語読み)のルーツを探ってみよう。

 遠い先祖は、おそらく紀元前のいつ頃かに中国南部からわたってきた。そのため道教のような土俗信仰を持ち、一人の巫女による占い、予言、祈りにより集団をリードした。多分水耕稲作や機織り技術なども持ち込んだに違いない。

 その確信を持ったのは、血統はともかく、伝統では現朝廷とつながりを持つと見られる三輪王朝の地元・纏向遺跡から大量の桃の種が発見されたこと(下記リンク参照)と、近所にある箸墓古墳に関連して、卑弥呼の墓との推測が高まってきていることにもよる。

桃の祀り 
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-7529.html

 神話時代の天照大神にはじまり、各地に散在した「戸畔(とべ)」と称する女酋、九州平原遺跡の王墓に葬られた巫女、そして卑弥呼が果たした役割などを考えると「女ならでは世の明けぬ国」という、女系による祭祀(まつりごと)がすべてに優先し、重きをなしていたということになる。

 祈りの中心は、五穀豊穣とおおみたから(大御宝=百姓、万民、黎民、民、国民など『日本書紀』では、すべて同じ読み)の安寧であろう。この伝統的祭祀は、廃止や復活などいろいろな経過をたどったにしろ、引き継がれてきた。

 もちろん、天皇が先頭に立って戦争を引き起こした例がないわけではない。しかし塾頭が知る限りでは、神武天皇、神功皇后、斉明天皇ぐらいで、強いて加えればクーデター主導の天武天皇があるか。

 その他は、熊襲征伐の日本武尊や戊辰戦争の有栖川宮など天皇の名代だ。明治・大正・昭和は憲政下のことで、先頭に立ってとはややいいにくい。なかでも昭和天皇は、平和志向が強かったことは間違いないだろう。

 以上、平和憲法のもと、天皇の「国事行為」として「祭祀」を加えることに、なんら不自然の点はないと思う所以なのだが。

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