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2011年11月13日 (日)

9条を強くできるか(その2)

 前回、9条には83年の歴史があるのだ、ということを書いた。終戦後、改訂憲法に「戦争放棄」条項を入れるという案は、当時の総理大臣幣原喜重郎が、GHQのマッカーサーに打診し、絶賛を得たという話がある。

 幣原氏は、大正末から昭和にかけてたびたび外務大臣を務めた外交のベテランである。よく松岡外交と対比されるが、軍部・右翼からは軟弱外交と攻撃の的になることが多く苦労していた。不戦条約が難産した時には閣僚でなかったものの、その経緯は熟知しており、進んで提案した可能性は十分に考えられる。

その後安保体制下の現憲法が一回も手をつけられることなく今日まで続く。講和条約と同時に吉田政権のもとで旧・日米安保が結ばれた。それがあまりにも一方的な不公平な条約で、期限の定めもないといって改訂に乗り出したのが岸首相である。
 
 その結果、有効期限は10年で、後は1年ごとの自動更新ということになった。岸首相は、まさか半世紀以上も外国軍基地が日本に張り付いたままになるとは思わなかったであろう。憲法改正を含めた何らかの自衛措置が完備すれば、外国軍は撤退するのが当然だと思っていたに違いない。

 憲法9条を考えるうえでぜひ知っておかなければならないのは、国連憲章、関連して常任理事会、それに安保条約と米軍基地の問題だ。当塾には「自衛隊は違憲?」しいう検索がよく入るが、日米関係は、条約のほか地位協定などの合意、密約、ガイドラインなどがからんで、すっきりした答えが出しにくい。

 これまで何度も米軍基地や自衛隊に関する訴訟が起こされているが、その判決は、合憲、違憲まちまちだ。最高裁判決でも、砂川判決は15人の裁判官の意見が3グループに分かれるなど、必ずしも全員一致ではない。従って素人が判断できるわけがない。

 だから、素人は判断するな、ということではない。原発建設の立地や運転の可否を決めには、最終的に住民が選挙に反映させなくてはならせない。米軍基地の新設・移転も同様である。憲法改正は、国民投票でその意思を示すことになる。

 このように、いろいろな解釈がされるようでは、やはり9条の条文に欠陥があると言わざるを得ない。そういった中でこれまでまかり通ってきた「解釈改憲」が乱用されるようでは、護憲派であってもその恐れの無いようにするため、改憲案を持つべきであるというのが、塾頭の考えである。

 9条を素直に見る限り、自衛隊や米軍基地の存在が合憲であるとするには、相当無理がある。そこで、憲法には書いてない「国には、外国の侵略から守る自衛権がある」、という論理が出てくることになる。

 この論理も素人感覚から飛び離れたものでなく、一概に否定はできない。非武装中立論という考え方は、国力が弱く東西対立の激しい中では選択肢のひとつだと考えられ、塾頭もそう思った時期があった。

 しかし、今は「自衛隊は必要、ただし外国に出て行って武力行使するのは禁止」という線だ。心変わりをした理由は、大きくいって2つある。ひとつは、外国からの侵略から国を守るという強い意志を国民が持ち、国がそれを組織化し外国に見える形にしておかなければならないこと、もうひとつは、自衛隊発足後半世紀以上たち、災害派遣や、カンボジア、東チモールなどのPKO活動でプラス面の実績が認知され、これを廃止または漸次縮小というのは、現実的でないことである。

 最初の点は、塾頭が朝鮮の李朝崩壊、日清戦争、日韓併合の歴史をたどる中で、国防を宗主国・清に頼り、清が頼りないと見ると、日本の宮廷近代化などの要求を嫌ってロシア大使館内で執政するなど、国民の強い意志を組織化できず、結果として日韓併合を呼び込んでしまった経緯を知ったからである。この詳しいことは、当ブログのINDEXにある「朝鮮・韓国」シリーズで見ていただきたい。

 2つ目については、専守防衛の自衛隊の存在はいいが、日米同盟の関連で、日本の憲法の制約を受けない米軍と合同訓練をし、共同作戦に参加して、違憲すれすれ、または、イラクの米軍兵員輸送のように裁判所が違憲の認定をするようなことに留意しなければならない。

 政府は、これを厳重にチェックする義務があるのにこれまでは逆の方向に動いてきた。また、民主党政権もその轍を踏むきらいなしとはいえない。9条2項でいう「陸海空軍」と「陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊」はどこが違うんだ、といわれれば答えられる人は少ないのではないか。

 昔からある軍隊の分類法をそのまま用いているからだ。巨砲・巨艦、渡洋爆撃機、戦闘機、戦車そういったものがないと軍隊でないという考えがまだある。現在は、電波と情報、ミサイルの時代だ。専守防衛のあるべき組織、装備はどうあるべきか、そういった研究を進めるべきだ。

 繰り返しになるが、自衛隊が他国の領域に入って軍事行動をとらない限り、侵略のそしりを受けることはない。またそのような行動をする他国との共同作戦に参加しないことで、現憲法の精神は守れるはずだ。2項はその線で明確化する必要がある。

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