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2011年11月 8日 (火)

見て見ぬふりと内政干渉

 恒例により毎日新聞ネタである。同じ今日付朝刊の二つの記事に考え込んでしまった。ステージは全く違うことがらなのに、問題の類似性に気がついたからである。一つが1面トップで見出しにこうある。

 中国 2歳女児ひき逃げ18人素通り
 見死不救(死にそうな人助けない)、不可
 社会連帯問う声若者から

 もう一つは西川恵専門編集委員による「記者の目」で、リビアにおけるフランス等NATOの行動をはじめ、虐殺などからの市民保護を名目とした過去の軍事行使を振り返って、外交や国連での対応を論じたものである。

 最初の中国の事件は、すでに各所で報道されており、追加取材によるものである。見出しでおおむねの内容がわかるが、その社会的背景について関係者の証言などを次のように記す。

 06年11月、江蘇省南京のバス停で、倒れていた高齢女性を助け起こし、病院に付き添った若い男性が、逆に女性から「この男に突き倒された」と裁判に訴えられた事件だ。判決は女性の言い分を認定したうえ「必要以上」に他人に関わる行為が「中国の社会道理に反している」と断じ、賠償金約4万6000元(約56万円)の支払いを命じた。

 これは、治療費負担をおそれた女性にひっかかったもので、そういったリスクから身を守るということが、習い性となったという識者の解説も載せている。つまり引っかかったのは「自己責任」というわけだ。

 自己責任といえば、アメリカをはじめ、欧米の市場原理主義者が経済弱者に対して放つ専売特許用語と思ったが、中国の方がさらに上を行く。人権保護を掲げ、欧米が国連に軍事行動開始の決議を求めても、反対や棄権に回ることの多いのは、旧共産圏などとは関係なく、虐殺が起きるのは「自己責任」、よって起きる結果も「自己責任」ということなのだろうか。

 「内政不干渉」の理想を掲げる大原則も、「人道・人権保護」と同様、もとは国際的利己主義外交にその端を発している、と思わせるのが二つの記事である。そうは思いたくないのだが、中国の若者に期待をつなぐしかない。 
 

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コメント

お節介が仇になる。それを許してしまう司法判断は、利己主義を追認しているからなのでしょう。一方で庶民がこの問題に関心が高いのは、ヒーローを待望する中国社会の葛藤であり歴史の必然とでも言えると思います。

内政干渉を批判する場合、一般に自主的とか民族的とか言って「自決権」を盾にします。それは文化の違いというよりも民族主義的な利権集団の利害が脅かされるからに他なりません。

明確に人権が抑圧されているのを承知で「見て見ぬふり」「さわらぬ神に祟りなし」では、人権を抑圧している利権集団を助けていることになる場合もあります。国の内外を問わず、人権に関心を持つ人々の葛藤でもあります。

投稿: ていわ | 2011年11月 9日 (水) 11時20分

ていわ さま こんにちは

冒頭に「考え込んでしまった」と書きました。人は何を求め、何を争い、何に向かって行動するのか。国により、人により、文化により、時により違うのでしょうが、わからないことだらけです。

これを書いていて、福島の人になにもしてあげられないのに福島論をしているような、なにか、もどかしさ後ろめたさがあり、ていわ さまにコメントをいただき、また「考え込んでしまいました。

投稿: ましま | 2011年11月 9日 (水) 14時02分

再び、おじゃまします…。わたしは、1991年から約5年に渡り、改革開放真っ只中の中国北京に事務所を構え、日中合弁事業のお手伝いをしていましたが、信じ難い光景に何度か遭遇しました。上海から南京まで高速道路を自動車で移動していたところ、人間の轢死体がありその上を自動車が走行しているじゃないですか…。ビックリして、通訳に「警察は来るのか?。」と尋ねたら、「大丈夫だよ、もうすぐゴミ収集車が来て綺麗に掃除するから、心配ないよ、高速道路をわたる人間が悪いよ…。」とニコニコ顔で語ってました。国民性の違いというか…?。この国には人権はないのか?と唖然としました…。最近の中国事情はわかりませんが、経済が過熱ぎみで、バブル崩壊を懸念しています…。今の中国は社会主義ではありませんね…、貧富の格差は日本以上…。大陸の民と、わたしたち島国の民…やはり随分と隔たりがある様ですよ…、善し悪しは別にして…。

投稿: 青い鳥 | 2011年11月10日 (木) 21時36分

青い鳥 さま
コメントありがとうございました。

私も中国に行って(観光ですが)「日本と違うので道の横断はくれぐれも気を付けて」と言われました。オリンピック前で、全体が日本の昭和40年代はじめとよく似ているな、と思いました。

大気汚染や車優先のマナーなどですが、青い鳥 さまの体験で、あらためてびっくり。やっぱり「自己責任」ですね。発展がいびつなのか、土着の因習なのか全くわかりません。

おそらくその両方なのでしょう。一度、日本に来ている中国人に聞いてみたいものです。

投稿: ましま | 2011年11月11日 (金) 07時23分

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