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2011年10月 6日 (木)

戦後再考録 3

(承前)

昭和20年9月11日
 GHQが東条英機ら39人の戦争犯罪人の逮捕を発表。この日、米兵を外に待たせておいたまま、東条が自殺未遂を演じた。これと前後して幾多の高級軍人や外交官などが自殺している。中には日露戦争当時の乃木大将にならってか、夫人まで道連れにした人もある。

 拙宅に何冊かの「昭和史」があるが、このことを書いている本はごくすくない。しかし当時はたちまち新聞が売り切れるほどの大ニュースだったのだ。胸部か腹部かを拳銃で撃ったが直ちに入院、生命に異常はないという。

 当然学校でも大きな話題になった。「拳銃自殺なら、銃口をこめかみにあてて引き金を引くよなあ」、「いや、敵に捕まりそうになったら口に銃身を入れて撃つのが一番確実だと聞いたよ」「ピストルで死なない方法は、腹の皮をつまんでそこを撃つのが一番だ(笑声)」。

 塾頭に言わせれば、この日をもって旧軍部や戦争指導層に対する信頼が国民の間から一挙に消え去った。その一方、国民の何%かは、そういった人たちやその縁者なので、声をひそめてしまったということだ。

 戦中、初年兵に向けた上官の集団暴行や軍を笠に着た横暴に悩まさた経験者は多い。(下のリンク記事参照)。だけど、東条は特別だった。「生きて虜囚の辱を受けず」などと「戦陣訓」なる日本人の心得を説き、大勢の民間人や軍人を死地に追いやったが、当初は演説といい馬にまたがった軍服姿といい、とにかくかっこよかった。

http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/post-469c.html
戯れ歌

http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-7da2.html
戦時不穏歌謡

http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/post_abba.html
ゴーストップ事件

 その、軍国少年の理想像が自ら戦陣訓を裏切る醜態をさらしたのだ。学校でも軍隊をまねた集団いじめが横行し、戦後も「予科練くずれ」などという上級生がいて続いていたが、この日の頃からいつしか消滅した。また、巷間でも「日本が負けてよかった。もし勝っていたら軍人がどんなに威張り散らすかわかったものじゃない」という人々の声も聞くようになった。

 10月23日
  読売新聞社従業員大会、社内の戦争責任者の退陣と社内民主化を決議して争議開始。これを「第1次読売争議」といい、朝日、毎日にも同じ動きはあったものの、生産管理戦術(組合だけで発行を続ける)という過激な方法は突出していた。

 晴れた秋のある日(塾頭の追憶なので日付は不明)、年頭あたりから教室の天井に届くほど積み上げられた軍需物資の中から、新品の飯盒が生徒に配られ、近郊に飯盒炊飯のピクニックをすることになった。

 よく炊く米があったものだと思うが、戦時の行軍から平時のピクニックに変わった味わいはなんとも言えず、十分楽しめた。ところが、帰校すると飯盒を回収するという。今なら当然のことだが、生徒は、飯盒を投げあげたりガチャガチャぶつけあって不当をならした。

 そういった、旧軍の物資の中から豚皮で作った軍靴や毛布・衣類など、先生方がこっそり持ち帰っていることを生徒が知っていたからだ。ひどいのは、生徒が畑で作ったサツマイモを夜陰にまぎれ収穫した先生の名も噂にあがった。

 結局、一度使ったものを返すことはない、という要求に学校側は屈した。いい気なものだが「民主主義はいいなあ」と思った瞬間だ。町には日本軍に代わって米軍兵士があふれていたが、将校クラス(どれが将校かわからない)に対し停止敬礼をする必要もなく、英単片手に談笑できるまでになった。

 以上は、文春・新潮文化人のいう「太平洋戦争史」やラジオ「真相はかうだ」による「洗脳」が始められる前である。言論が弾圧されたというが、NHKの一般人が政治的意見を言う「街頭録音」が始まったのはいつ頃だっただろうか。

 「洗脳」論者は、「あとで編集して都合のいい部分だけを放送」と言いそうだが、復員してきた叔父が「しゃべってきたよ」と興奮気味に語ったのを覚えている。とにかく、言論については、弾圧より戦中にない自由を獲得したんだ、という感覚の方が庶民にははるかに強かった。

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