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2011年9月 4日 (日)

無意味な東京裁判批判

  「東京裁判はアメリカの押しつけだ」として、A級戦犯はない、というコメントをいただいたmakotoさまに、「裁判はアメリカではなく連合国が行い、各国の意見に違いがあって、日本人弁護人を含めいろいろな議論が法廷でなされたこと、また、裁判の国際法上の論争なども、機会があったら研究してみてください」というレスポンスをしてしまいました。

 首相交代があったりして、他の記事に忙しかったこともありますが、「塾」なので一緒に勉強しましょうというべきだったと反省しています。ただ、歴史的事実として存在する東京裁判を批判し続けることに何の意味があるのかがわかりません。

 まず兄の問いかけにお答えしておきましょう。当時の一般国民は、アメリカが画策した洗脳工作で東京裁判を受け入れたわけではありません。「真相はこうだ」などのラジオ宣伝で日本人が簡単に洗脳されるというのは、それこそ「自虐史観」ではないですか。

 戦勝国が一方的に進めた裁判について、当時の国民は、「勝てば官軍」という明治維新のことわざを使って、ちゃんと批判していました。戦争に勝った国が負けた国に報復するのは当然です。それを国際法がどうの、手続きがどうのといっても始まりません。

 国際法というのは、たしかにいいかげんなものです。昔から強い国が有利になるような法体系です。東京裁判もそれが開かれ、またその結果を日本が受け入れれば、それが国際法になるわけです。イラクに侵攻し、非戦闘員を虐殺したアメリカは、平和に対する罪や人道に対する罪で糾弾されるべきですが、ブッシュがA級戦犯になることは、まずないでしょう。

 歴史をどう評価するかは自由ですが、その評価で歴史が動くわけではありません。私は、A級戦犯に会ったことはりません。テレビはなかったけど、戦時中の東条首相の肉声や動作ふるまいなど、ラジオやニュース映画でいまでもはっきり覚えています。一般国民が知っているのは、東条、近衛、せいぜいで松岡程度でしょう。しかしA級戦犯が全員戦争指導者であったことは明らかです。

 肉親・知人の命を奪われ、敗戦時の国民は、まさに飢餓線上にありました。敗戦で、日露戦争以来確定していた領土を失い、天皇制さえ危機に瀕するような戦争を起こした戦争指導者、連合国がほっておいても、どうして国民がほっておけるでしょう。当然裁判にかけ、責任を問います。事実そういう動きもありました。

 そうすれば、天皇の責任を問う動きも当然出てきます。極端に言うとこれで内乱が起き、それこそ日本滅亡にまで進んだかも知れません。逆に日本は東京裁判で救われた、というのが最近の歴史の一般的結論です。

 そうすると、必ず持ち出されるのが、さきの戦争は侵略戦争ではなかった、とか、南京事件はまぼろし、というものです。そこで古い話ですが、以前そういった考えを知りたいと思って何冊か買った本を引っぱり出しました。

 その中に『封印の昭和史・「戦後五〇年」自虐の終焉』という本があります。小室直樹、渡部昇一の著作です。両人ともご存知でしょうが歴史学者ではありません。小室さんは、「歴史学者を大虐殺したい」などというほど、歴史学者がお嫌いのようです。

 歴史学者は資史料に基づき、仮説をたてます。その後はその仮説が間違っていないか、史料の見落としがないかに全神経を集めます。もし仮説に誤りがあれば進んで訂正し、より完全なものにします。よくあることで、全く恥ずかしいことではありません。

 この本の著者は、まず結論を先に置き、それに合致する資料を片っ端から集めるような書き方をしています。たとえば、侵略戦争ではなかっかったことを証明するために、「そもそも侵略戦争の定義はない」という理由を、古今東西の外交文書を例示することでページを費やしています。

 まったく、無駄な努力としかいいようがありません。よその家に上がり込んで、その家の人が「迷惑だ」といえば「迷惑」、また、そこで暴力をふるい、「侵略だ」といわれればそれが「侵略」なのです。定義がどうの、国際法がどうのというから頭が混乱してしまうのです。

 また、日本の軍隊は世界一軍規の厳しいことで有名である、したがって南京事件はでっち上げの陰謀だと書いています。日露戦争のあと、北清事変というのがあって、西欧各国が中国大陸に出兵したことがあり、その中で日本軍の軍規の整った模範的な行動が各国の賞賛の的になったことは、当塾でも記事にしています。

 だから、何十年あとの南京でも同じはずだ、という比喩は、歴史学者なら普通は使いません。まったく時間と場所の違うことを比べてみても、笑われるだけだからです。だから、何人が虐殺されたかという検証はしますが、その数が多いか少ないかというのはあまり大きな問題ではないのです。

 南京で非戦闘員が虐殺されたことは、事実です。民間に便衣隊というゲリラが混じっていたこともあるでしょう。女子供であっても、殺さなければこちらが殺されるかもしれない、仏心をもってはいけない、手当たり次第殺す、これも事実でしょう。

 人を殺すというのは、大変なことなのです。だからどの国でも、相手は人間でなく、物か害虫のように思う訓練がから始めます。アメリカでは帰還兵の精神疾患急増が問題になっています。ところが、一部に「腰抜け」だとか「補償金ねらい」という声もあって放置され、ますます症状を悪化させています。

 戦争というのはそういうものなのです。人の心を獣にします。ざらざらした砂を噛むような無機質なものに変えてしまいます。「反戦塾」は、そういったことの起らないことを願って続けていることをご理解ください。

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戦中・戦後」カテゴリの記事

コメント

ましまさん

>「歴史的事実として存在する東京裁判を批判し続けることに何の意味があるのかがわかりません。

歴史的事実として存在するものは批判し続けてはいけないのですか。
では、日本軍が売春に間接的に関与したであろう従軍慰安婦問題は、批判し続けてはいけないのですか。
歴史的事実として存在する原爆投下も批判し続けてはいけないのですか。

それに、僕が東京裁判を批判し続けている理由は、あなたがたのように東京裁判をありがたがって、いまだにA級戦犯などという呼称を使い、彼らを批判し続けているからですよ。

ところで、彼らA級戦犯も「歴史的事実として存在した」対象でしょうかね。
そしたら批判し続けることに意味がない、ということになりますが。

>日本人が簡単に洗脳されるというのは、それこそ「自虐史観」ではないですか。

娯楽と言えばラジオくらいしかなかった時代に、GHQはゴールデンタイムに連日にわたって日本軍がいかに悪かったか、アメリカがあなた方を救ってあげた、という内容の番組を流し続け、
新聞や本、そして教科書でさえ徹底的に検閲し、アメリカや連合国批判、さらには検閲制度そのものへの言及など、30項目にもわたって禁止し、
白人の侵略や植民地経営などのアメリカに都合の悪い本7000冊以上を焚書。
これらを徹底的に長期にわたって実施され、洗脳されていない方がおかしい。
ただ、戦後60年以上経ってアメリカおよび白人国家の偽善性がこれほどまでに分かっているのに、いまだにその洗脳からさめておらず、東京裁判をありがたがる人がいる方が、もっとおかしいですけどね。

>戦勝国が一方的に進めた裁判について、当時の国民は、「勝てば官軍」という明治維新のことわざを使って、ちゃんと批判していました。

上に書いたように、していません。
では、どの新聞かラジオが批判したのかソースをお願いします。

>戦争に勝った国が負けた国に報復するのは当然です。それを国際法がどうの、手続きがどうのといっても始まりません。

ほう。
東京裁判を報復と思っているのですね。僕と意見が合いましたね。
僕も勝った国が報復するのは、ある程度止むを得ないと思っていますよ。
しかし、くり返しになりますが、その報復された方がその報復をありがたがって「批判する意味が分からない」というのが異常だというのです。

>歴史をどう評価するかは自由ですが、その評価で歴史が動くわけではありません。

もちろんです。
ただ、こうやって、戦勝国の報復をありがたがって受け入れ、反省謝罪補償し続ける人間がいることが歴史的事実となって後々まで残っていくのです。
あの、ばかげた村山談話みたいに。

>しかしA級戦犯が全員戦争指導者であったことは明らかです。

A級戦犯がよく分かっていない、と言っているのと同じです。
東京裁判でA級戦犯が「共同謀議した」とされる1928~1945年までに内閣は18回も交代しているのですよ。
なぜ、その期間の首相なり大臣全員が起訴されていないのですか?
一方で、唯一の文官である広田弘毅は、共同謀議があったとされる期間中の1935年に、「私の在任中に戦争は断じてない」と平和外交を掲げましたが、3度も外相を努めたという理由からか、A級戦犯として起訴され、死刑になっているんですよ。
彼のような人物まで、戦勝国は報復のために殺したんです。
その人物を、戦争指導者として自国民が批判しますか?

>肉親・知人の命を奪われ、(中略)どうして国民がほっておけるでしょう。当然裁判にかけ、責任を問います。事実そういう動きもありました。

あれが日本人による裁判だったら、僕はまだ納得します。
それが戦勝国の報復だから批判するんです。
その報復をありがたがっている人がい続けるから、批判し続けるんです。

>逆に日本は東京裁判で救われた、というのが最近の歴史の一般的結論です。

一般的結論?
そんな決論、初めて聞きました。
一般的と言うからには、誰かが言い、広く受け入れられているということでしょう。
ソースをお願いします。

以下、話が東京裁判から南京事件にずれていますので、反論を略します。

投稿: makoto | 2011年9月 4日 (日) 18時01分

makoto さま
 
<歴史的事実として存在するものは批判し続けてはいけないのですか。

 批判については本文の中で「自由だ」と言っています。私は、批判し続けることの意味が何か、と問うているのです。

 ソース、ソースとまずい焼きそばやではあるまいし。よほど、手元にある資料の何年何月何日の〇〇新聞の社説でと書こうと思いましたが、それはやめました。あなたはGHQの事前検閲があるから、というでしょう。

 その点は、当時中学生ですが洗脳などされていないということを本人がいうのが一番確実で、揚げ足取りがあらぬ方向へ行くのをやめたいからです。

 また、東京裁判が、結果として天皇制を救うことになった、というのは兄の愛読雑誌には出てないかも知れませんが、2000年ころから至る所で論じられ、いちいち覚えていません。それほど一般的だということです。

 


投稿: ましま | 2011年9月 4日 (日) 19時48分

塾長の思考方法、真摯な説得姿勢に共感します。

投稿: 川桐恒男 | 2011年9月 4日 (日) 20時20分

川桐恒男 さま

ご声援ありがとうございました!。

これを糧として「反戦塾」がんばります。

なにか、震災被災者みたい……(笑)。

投稿: ましま | 2011年9月 5日 (月) 09時32分

ましまさん

>批判については本文の中で「自由だ」と言っています。私は、批判し続けることの意味が何か、と問うているのです。

そう言うなら、いつまでもA級戦犯を批判し続ける意味は何ですか。
しかも、死者に鞭打つのは日本の文化ではないでしょうに。
敗戦の責任者を批判するならまだ分かる。
しかし、戦勝国が報復のために新たに作った「平和に対する罪」を犯したという、A級戦犯をなぜいつまでも批判し続けますか。
あなたがアメリカ洗脳からいまだに抜けきっていない証拠ではありませんか。

僕が東京裁判を批判し続けるのは、上にも書いたように、あなたがたのように東京批判をありがたがる人がいるからです。

>ソース、ソースとまずい焼きそばやではあるまいし。

そうやって茶化しますか。
これって、真摯な説得姿勢かなぁ。
では、こう聞きましょう。
そうおっしゃる資料を提示していただきたい。

>その点は、当時中学生ですが洗脳などされていないということを本人がいうのが一番確実で、揚げ足取りがあらぬ方向へ行くのをやめたいからです。

では、なぜその当時洗脳されていなくて、今されているんですか?
って、洗脳されている本人に訊いても分かるわけないですか。

>また、東京裁判が、結果として天皇制を救うことになった、

ごまかさないでください。
あなたは、「日本は東京裁判で救われた」と書かれたのです。
ここで、天皇制=日本などと詭弁を弄しないでくださいね。

天皇制維持は、たしかにアメリカの占領政策の一環でしたが、それは日本占領、日本人洗脳をしやすくするためでしょう。
それを結果的にそうなったからと言って、戦勝国の報復をありがたくいただくのですか。

そして、その意見なら2000年よりも前から目にしたことはあります。
しかしそれは、それは「一般的」ではないし、「結論」では絶対にありません。

投稿: makoto | 2011年9月 5日 (月) 18時44分

makoto さま

カットはしませんが、お答えする価値はないと見ました。

ともに勉強しようという、態度ではなく、揚げ足取りや水掛け論を続ける場にしたくないからです。

投稿: ましま | 2011年9月 5日 (月) 19時31分

バカサヨが書くブログ楽しい?。
『従軍慰安婦』は存在しないし、『慰安婦』=売春婦ですから。

投稿: おぐら | 2011年9月 5日 (月) 19時35分

ましまさん
揚げ足取りとは、相手の言い間違いを殊更にあげつらうことです。
あなたの場合は、言葉を微妙に変えているので、そこを突いたのです。
誤字や書き違いを突っ込むことはしませんよ。

この稿のタイトルは、「無意味な東京裁判批判」となっていますが、
報復劇である東京裁判で、一方的に罰せられたA級戦犯を批判することになんの意味がありますか。

前にも書きましたが、戦争を始めた政治家、軍人を批判するなら分かる。
敗戦の責任者を批判するなら分かる。
しかし、「A級戦犯」などというのは、アメリカなどの戦勝国が勝手に作った罪人でしょう。
それに乗っかり、彼らを批判することになんの意味があるのか。

先に書いた広田弘毅などは、ずっと戦争回避に努力して来た人なのに、絞首刑ですよ。
重光まもるは、A級戦犯として起訴されましたが、釈放され、後に国連で演説したときは拍手で迎えられたんです。
なのに、なぜ自国民が批判しますか。
なぜ自国民がいまだに「戦争犯罪人」などと言いますか。
その精神構造がまったく理解できません。

「戦争犯罪人」と言うのなら、自分の頭で考え、自分でリストアップしてはどうです?
アメリカおよび戦勝国の作った「A級戦犯」などという呼称を使うこと自体、自分で何も考えておらず、アメリカのWGIPにまんまとはまっている証拠です。
それは、アメリカの「年次改革要望書」を受け入れ、日本をだめにした自民党政府とまったく同じです

投稿: makoto | 2011年9月 9日 (金) 00時51分

makoto さま
 あなたは全体の文意を読み取れない人なのです。したがって言葉の一部を切り取って、例えば連合軍の裁判がなければ天皇を被告とする人民裁判などの要求が出かねず、日本は内戦の危機から救われた、というのを前半と後半をばらばらにして、言葉をすり替えたなどというのは揚げ足取りです。

それから、A級戦犯というのは歴史の上で使われている言葉で誰がどう使おうが自由です。使ったからと言って非難するのは的違いです。

また、A級戦犯のだれがこうでなどの裁判の中身には一切ふれていません。また、公正な裁判だったなど一言も言っていません。裁判があり、それを当時の政府が受け入れ、歴史として確立している事実言っているだけです。それをアメリカの強制だなどと現在の反米思想に無理やりあてはめようとしている、そんな趣旨の論争に持っていくための文章でないことを、もう一度確かめてみてください。

くりかえします。こういったやりとりなら、時間とスペースの無駄なので、今後お答えしないこともあります。

投稿: ましま | 2011年9月 9日 (金) 16時38分

ましまさん

>A級戦犯というのは歴史の上で使われている言葉で誰がどう使おうが自由です。使ったからと言って非難するのは的違いです。

あなたは、僕の言葉、「アメリカおよび戦勝国の作った「A級戦犯」などという呼称を使うこと自体、・・・」への反論として書かれているのでしょう。
たしかに、僕の言葉が足りませんでした。
「アメリカおよび戦勝国の作った「A級戦犯」などという呼称を、犯罪者という意味合いで使うこと自体、・・・」
と書くべきでした。
失礼しました。

>また、A級戦犯のだれがこうでなどの裁判の中身には一切ふれていません。

誰がどうのと言わず、A級戦犯をひとくくりにして、「戦争犯罪人」、または「全員戦争指導者であったことは明らか」として批判し、忌み嫌う。
それが、おかしいと言っているのです。
僕からみたら、彼らA級戦犯も、そしてもちろんB,C級戦犯も、すべて戦勝国によって殺された犠牲者ですよ。
戦争を起こした責任者、敗戦の責任者を批判するなら、日本人自らの手で選ぶべきです。

>また、公正な裁判だったなど一言も言っていません。裁判があり、それを当時の政府が受け入れ、歴史として確立している事実言っているだけです。

だからあなたは、「東京裁判を批判するのは無意味だ」、とおっしゃっているんですね。
しかし、当時の政府が受け入れたからと言って、あなたが現在受け入れる必要はないでしょう。
そんなことを言ったら、当時の政府が受け入れた日韓併合も、今批判することは無意味だ、となりますよ。

やはり、どう考えても、日本人としては
戦勝国の報復劇である東京裁判は批判すべきだし、
戦勝国が勝手に作った戦争犯罪人とレッテルの貼られたA級戦犯を
批判すべきではありません。

投稿: makoto | 2011年9月11日 (日) 12時10分

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