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2011年7月16日 (土)

「脱原発」、菅では無理

 菅降ろしのあまりにもの異様さに、前回、「あまのじゃくだから最近ではかえって支持したくなった」 と書いたばかりである。今回、これを全面撤回する。

 首相は13日夕刻、記者会見を設定し「脱原発」を宣言した。マスコミから「脱原発依存」と揶揄されるような奥歯にものの挟まったような言い方で、具体的なプログラムも示せない不十分なものであった。しかし、これまでの言動から当然予期されたもので、「唐突」ではない。改めて政策として記者会見を開き明瞭にした、という受け止め方をしたのは当然だったのである。

 それをまる2日もたたない15日の衆議院本会議で、政府の方針ではなく「私見」であると、弁明にこれつとめた。首相記者会見というのは、私見を聞く場ではない。これは、鳩山元首相の「学べば学ぶにつけ」発言に匹敵する、国民を愚弄した食言といわざるを得ない。

 すでに首相交代を予言したのだから、政策は次の政権で立ててほしい、というなら、現存原発の再稼働基準や、福島事故の反省に基づく法整備など、火急な任務が山積している。それならば、「脱原発」をやるなら菅首相に一刻も早く退陣してもらうしかないということになる。まさに自縄自縛そのもの。

 それにしても、不思議なのが民主党という党である。去年から2度代表に推挙し、2度議会で信任した首相を、執行部までこぞって引きずりおろそうとし、そういった議員の会ができても、脱原発の推進を主張する議員の会が、野党主導にできて民主党にはできない。

 自民党の支持率がこのところじわりじわりと上がってきているが、国民が、「これでは民主党よりまだましだ」と思い始めたのではないか。連合が妨害しているというが、そんなのは風評被害の一種だ。一部組合幹部の恫喝に屈するようでは、直ちに議員を辞めてもらうしかない。

 当塾では、エイモリー・ロビンズの著書『ソフト・エネルギー・パス』(カテゴリ・INDEX参照)をシリーズで紹介した。ロビンズは、エネルギー政策の転換をする上で、多大な困難に遭遇することがあり得ると説いている。

 それは、転換の企画の技術面や成功の確率の困難さではなく、国家戦略、経済構造、政治組織、ことによれば精神文化にまで立ち入った発想の転換が必要であるということである。したがって、既成の体制の中で利益を甘受していた階層、ことに官僚の抵抗をどう排除するかが大きな問題となってくる。

 これを乗り越えるためには、政府の強力な指導力が必要で、現民主党の政権ではとてもおぼつかない。唯一、脱原発を下支えするのは、イタリアの国民投票、ドイツの選挙による緑の党の躍進などのように、国民の熱がこもった支持に尽きる。

 軍国戦時体制を転換するためには、異例の御前会議に頼るという手があった。それがない現在、とって代われるのは、政界再編、解散総選挙しかない。それぐらいの大問題であるということを、あらためて強調しておきたい。

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

国民意識とは裏腹に、東電も経団連も大多数の政治家も脱原発なんて本気で思っちゃいないので。

菅さんは、やめるにしてもなんとか脱原発の道筋をつけてやめようとしているのはよくわかるのですが、後に続く人は、民主党の中にどれだけいるんでしょうか。

河野太郎さんが脱原発グループをつくって自民党をわって出る勇気と覚悟があるなら、それもいいと思います。

投稿: 金木犀 | 2011年7月16日 (土) 17時12分

金木犀 さま ようこそ

民主党では村越祐民さんなどが加わっているようですがとても民主党をリードするまでは至っていません。脱原発派は新人議員に多そうですが彼ら彼女らは選挙で連合などの人手を借りることが多い。とにかくあてにならないのです。

それでも、核になる人材がいれば100人以上の勢力になると思います。私はまとめ役として衆院議長の横路さんに期待しています。参院議長と違って、党派をこえ公正・中立が守れる人です。

解散になれば、大手を振って政治活動ができます。産炭地を抱えていた北海道知事の経験もあり、エネルギー問題の造詣もあるでしょう。元気があっても若手だけではやや荷が重い問題です。

投稿: ましま | 2011年7月16日 (土) 22時06分

管直人の『脱原発は私見』ですが、
私も『情けない』とは思いますが、今の『悪いのは管首相』的な判断は矢張り間違いではないでしょうか。
確かに、全ての右は産経から左は赤旗までマスコミ各社の主張は口を揃えて管首相を罵っているのです。
首相は日本国の最高責任者なのですから、こんな無責任な話も無いと、他の護憲派ブログも(私の見た範囲ですが)一つの例外も無く『管が悪い』怒っている。
公人中の公人である首相の『私見』は無いのですよ。
心の中の呟きは(出すまでは私見だか)口から出した瞬間に変質する。
首相が公の場所で脱原発を喋れば、私事ではなくて首相判断。
その首相判断が閣僚の反対で『私見』に格下げになったのです。
この反対に、周りが賛成なら政府判断に格上げになる。
ですから護憲派が怒るべきは原発推進で凝り固まっている周りの閣僚とか官僚組織の方であり、力の無い管直人を激励する方が正しいのではないでしょうか。
優柔不断で恥ずかしく情けないことは事実ですが、一応正しい方向に向いていることは評価しても良いでしょう。

投稿: 宗純 | 2011年7月18日 (月) 10時11分

宗純 さま コメントありがとうございました。

最近の世論が求めているのは「脱原発」が正しい正しくないのではなくどういう手順でどう進めていくかです。それが示されればあとは、政治家の指導力と中央突破力ですが、最近は「卒原発」など生半可な言いかえがはやっており、原発を残すか残さないか、その中間などというのはありません。脱原発を強力に支えるのは、国民投票か日本では総選挙しかありません。

今のところ政策として具体化に最も近いものを持っているのは社民党です。しかし、それだけでは前述の力になりません。どんな立派なことを言っても実現できなければ、われわれのブログと同じことです。

首相引退予告をした菅首相はすでに大幅に力を減じています。あとを託すはずの「若い人」も誰だか見当もつかず、党内もまとめ切れていません。このままでは、推進派がゾンビのように復活する危険は十分あります。

私は、政界再編を含む解散総選挙しかないと思います。それには、最高裁判決もあって至急定数是正に取り組まなければなりません。

それも含め、新指導者は横路衆院議長にかけたいのですが、どうでしょう。 

投稿: ましま | 2011年7月19日 (火) 09時59分

原発の廃止は無茶苦茶に簡単。
実は、何の問題も無いのです。
航空機では重大事故が起きれば事故原因が特定され、かつ解決されるまでは同一機種の運行は全面停止されます。
飛行機でなくても他のものでも大概は同じ原則ですよ。
ですから本来なら全原発の即時停止が当たり前なのです。
しかし原発は止めるだけでは駄目で、危険性はなくならない。
ただ、原発は13ヶ月ごとに必ず定期検査があり停止する仕組みです。
ですから1年ほどで全ては停止する。
停止した原発は完全に安全が確認されたものだけがを稼動すれば良いのですよ。
安全も確認せず福島第一事故のA級戦犯でもある安全保安院が、『安全である』といったからとして稼動させるなど不真面目にも程がある。
IAEAも以前から独立した規制機関の設立を勧告していたのに日本側が完全無視。
与謝野経済財政担当相は『原発リスクへの反省は無いと思ってもらって結構!』とキッパリ言い切っています。
世界が認める監視機関で検査して『安全である』との判断であれば動かしたら良いのです。
ただ外国の代表も含めたこの検査では原発が地震列島のど真ん中にあるなど論外で、日本の全ての原発は不合格に成るでしょう。

投稿: 宗純 | 2011年7月19日 (火) 13時51分

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