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2011年7月20日 (水)

原発を残したい人々へ

 与論は圧倒的に脱原発に向かっているように見えまずが、原発を残したい人々がすくなからずあることも事実です。菅がどうの自民がどうのという、政治的思惑をからめて発言する人は別として、そういった意見は大きく分けて2とおりあると思います。

 その一つは、当塾でもたびたび取り上げている毎年1兆円近い原子力予算に巣食う、産・官・学など原子力村住民と交付金や税をあてにする地元自治体です。さらに、産業空洞化をはやしたてて脱原発反対を叫び続ける財界がありますが、一方にソフトバンクの孫正義社長、城南信用金庫(東京)の吉原毅理事長らのようにま反対の意見があり、完全に割れています。

 もう一つは、そういった特定の階層の人でなく、勤め人とか中小企業主などで高度成長期に育った中高年の人に多いような気がします。これは原発ストップ→電気料金値上げ→生産拠点の海外移転→空洞化→成長ストップ→不況深刻化といつた、まるで「風が吹けばおけ屋が儲かる」といったたぐいの経団連会長のアジテーションに乗ったものと思えます。

 電気料金は、新エネルギーを採用しなくても福島事故による補償金や追加安全対策、放射能廃棄物対策のため、確実に上がります。そして、原料ウランも石油同様の有限な資源でいずれは枯渇することも考えておいてください。

 この点、太陽光や風力など自然エネルギーは、使っても減るということがありません。こういった発電は原発と違って、小規模なものを多数作ることができます。自給自足の考えにもつながります。また、発電コストが高いと言っても、技術開発や機材生産は、誰でも参画できるため競争原理が働き、確実に安くなるでしょう。つまり、原発とちがってコストは安くなる方向に向かいます。

 さらに、原発に向けていた膨大な政策資金を新エネルギーに注ぎ、発電事業にどこでもだれでも参入できるようにすれば、普及にはずみがつき原発廃止がしやすくなります。それは、さらに新らしい起業や雇用創設にもつながります。

 そういったことを、節約の普及を含め20年30年かけてやろうというのが「脱原発」であるということをこれまで何度も書き続けてきました。それでも、生まれてこの方、原発安全神話、高度成長神話になれ親しんだ一般の人が、なかなか「脱原発」になじめず、非現実的だと思う気持ちもわかります。

 高速道路に乗るとゴー・ストップもなく快適さを味わえます。そしてスピード慣れすると、前にもたもたした車あると隙をみて追い越し車線で前に出るたがる。しかし、スピードが上がれば上がるほど事故を起こせば損害が拡大する。それでも「平場で目的地へ」、といわれればあまりいい顔をしないでしょう。

 信号や歩行者に気をつかい時間もかかる。しかし、街角を観察し風景を見ながら、安全第一でドライブを楽しむという手もあるわけです。そうして両方を全体の得失で考えてみると、そんなに大きな差がない、ということはよくあることです。

 あまりいいたとえではないかも知れませんが、双方の欠点には改善・改良の余地が残るでしょう。ただし原発の場合は、運転を続ける限り放射能物質が永久に増え続けるという、人類が解決できない問題があります。その一事が乗り越えられない限り、答えは答えと言えるでしょうか。

 最近は、脱原発に勢いがあるので、それに同調するような発言をし、最後に「安全性が確立すれば」「技術が進歩すれば」新規増設もあり得る、という付け足しでごまかす「かくれ推進派」的発言も多くなりました。米倉経団連会長でさえそうなりました。政治家では、馬淵澄夫民主党議員などもそういった言い回しです。

  将来も「原発を残しておきたい」という考えは決して「脱原発」ではありません。足して2で割る方法や中間的解決方法などあり得ない概念ですが、政治の世界では「卒原発」だとか「脱原発依存」などと言いかえるなど、わけのわからない思切りの悪さだけが目につきます。その点、自民党河野太郎議員や、みんなの党など、保守でも野党の方がまだ明解です。時間がかかっても、そのあたりをはっきり見極めることが大事だと思います。

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コメント

>「安全性が確立すれば」「技術が進歩すれば」新規増設もあり得る、という付け足しでごまかす<
ですが米倉経団連会長は、それ以外の発言から推測すれば原発推進で凝り固まっていることは間違い有りません。
ただ工学部出の馬渕は、
『遠い将来の世代では絶対に消えない火の原子力を制御出来るようになる時が来るかもしれない』とも言っている。
米倉は数月先の目先の話であり、馬渕は何と『現在の話』ではなくて『将来は』でもなくて、『遠い将来の世代』の話なのです。
現在日本国は晩婚化が進み平均初婚年齢は28.6歳、第一子出生時の母親の平均年齢は29.7歳。
『将来』なら数十年先が考えられ『将来の世代』なら数世代で100~150年。
遠い将来の世代なら、『技術が進歩して安全性が確立して新規増設』出来るのは数百年以上の遠い未来ですね。

投稿: 宗純 | 2011年7月20日 (水) 10時03分

コメントありがとうございました。

住友化学の米倉会長は、明治以来政府とつるんで発展してきた財閥系で、電力大消費企業で、陰に陽に政府の後援で育った企業の出、言うことは彼の立場上まっとうです。

馬淵が「絶対」とか「制御」などといったのなら、工学部落第ですね。両方とも条件次第では成り立たない公理ですから。

投稿: ましま | 2011年7月20日 (水) 10時35分

日本の原発政策全般については、あまり活発に議論されていないのですが、次の2点に決定的な問題があると思います。

1.日本は、国策として核燃料サイクルを推進している :

⇒ ウランの埋蔵量は約60年とされていますが、プルサーマルにすることで、60年のウランを300年近く利用することが出来ます。 さらに、高速増殖炉にすれば、理屈上 2000年以上利用することが出来ます。 そのために、日本は核燃料サイクル(ウランを燃やした後に出来るプルトニウムを再利用する技術)にこだわっているのです。

2.(東大工学部や東工大工学部などの)専門化の多くが、第3世代・第4世代の原発においては、強化された安全設計によって、原発の安全を確保できると考えている :

⇒ 例えば、最近の「第3世代」の設計は、受動冷却システムなどの安全装置を備えています。 「第4世代型」高速増殖炉の計画もあります。

ところが、原発の安全性に関する議論は、完全に一部の専門家が牛耳っており、一般国民が公に議論に加わる仕組みにはなっていないのです。 そして、構造的には、核燃料サイクルを放棄しない限り、脱原発はありえません。

投稿: もえおじ | 2011年7月21日 (木) 20時48分

もえおじ さま
コメントありがとうございました。

当塾でもこれまで核燃料サイクルに触れたのは1行か2行あったかどうか、という程度です。学説と原発という点でも素人としての考えを指摘できなければならないということは、終始意識していました。

ただ、脱原発については、理工学部(原子力工学など)の研究内容を論ずる前に、それを越える哲学、倫理学上の見識が必要だということです。原子力村の学者連は、福島を想定しなかった非を認めながら、学問上責任を負うということをしません。学説=真実とは到底認められない所以です。

夢の原子炉は、トラブル続きで、それこそ夢で終わりそうですが、仮に成功したとしてもその発電コストは現存原発より一段と高くなり、新エネルギーをはるかに超えることになるでしょう。次世代炉なるものの評価はできませんが、核を扱う施設である限り「文殊」と同じ運命をたどるに違いありません。

ともあれ、素人は学者の論争に容喙できません。その是非を判断する目安としてかつては政府や裁判所の見解がありました。しかし、それを信じるわけにいかない、というのが今回の教訓です。政府、電力会社、学者、立地地元、そういったところから発信される情報を総合的に判断する「素人の感覚」は重要だと思います。

投稿: ましま | 2011年7月22日 (金) 10時31分

哲学、倫理学上の見識とは「予め全ての技術的科学的成り行きは、完全には予見できない」「事故が起こることを前提に、技術を扱うべき」という意味でしょうか?

脱原発の問題は、民意が為政者や既得権者を打ち破ることが出来るかどうかという権力闘争の側面もありますが、脱原発派 対 原発推進派 の論争でもあるのです。 理屈は「危険な原発を廃止せよ」という単純なものですが、これに対してかなり多くの専門家(お抱え学者?)が「安全な原発はいずれ可能になる」と言っている訳です。 従って、これに対抗するには、「素人の感覚」ではなくて、きちんとした専門知識と健全な見識が必要であると考えます。 学術的技術的論争でなくて、専門家 対 素人では分が悪いと思います。 お抱え学者でない専門家達もいるのですから、そういう人たちと連帯すべきなのです。

投稿: もえおじ | 2011年7月22日 (金) 19時46分

簡単にお答えします。[哲学・倫理]「専門の原子力工学のことはわかるが、他のことは知らん」ではダメということ。人生観と深い洞察力が必要。

素人感覚とは卑下した意味でなく、知識より感性が正鵠を得ていることが多々ある。学者同士の論争で決着がつかなければ、これしかないのではないですか。

投稿: ましま | 2011年7月22日 (金) 21時01分

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