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2011年6月16日 (木)

菅降ろしの異様さ

  毎日新聞の金子秀敏編集専門委員が16日付のコラム「木語」で次のように書いている。

 昨今の菅降ろしが、どうも腑(ふ)に落ちない。

 菅直人首相では原発事故の処理ができないと野党が退陣を要求している。政権与党の岡田克也幹事長や枝野幸男官房長官まで任命権者である党代表・首相の退陣を口にする。

 仙谷由人官房副長官などは「月内退陣」を公言し、野党幹部と次の首相を私議したという。まさに乱世だ。

 だが変だ。菅首相はいつ、どのように事故処理に失敗したのか。だれが首相なら、どのような対策ができるか。だれも言わない。一時、海水注入を中断させたと騒がれたが、事実ではなかった。

 与野党が論じているのはもっぱら退陣の時期である。菅首相も、事故処理に「一定のめどがつくまで」と、退陣時期をぼかして防戦している。

 菅降ろしの理由は、ほんとうは原発事故対応の失敗ではないのではないか。3月11日の東日本大震災の前に戻ってみる。3月4日の参院予算委、11日の参院決算委員会だ。

 予算委では自民党議員が、前原誠司外相、野田佳彦財務相、蓮舫行政刷新担当相を脱税事件の容疑者から献金を受けたとして攻めた。前原氏は在日外国人からの献金も突かれ、2日後に外相を辞任した。

 決算委では菅首相が外国人献金疑惑を追及された。参院で菅政権打倒の「献金政局」が始まった--そのとたん大震災で疑惑追及は止まった。

 6月3日、自民党は参院予算委で首相、財務相、行政刷新相の献金追及を再開した。22日の会期末まで、参考人招致などで菅首相らを追及するらしい。とすれば菅政権が追いつめられているのはこの問題ではないか。

 菅首相ではどこがいけないのか、だれならばいいのか、そして何を改めればいいのか、みのもんたがそういった叫び声を、2、3日前の朝ズバでもあげていた。それに対し、並みいる政治コメンテーターは何も答えることなく、すぐコマーシャルに切り替わった。

 こんな疑問が、他にもマスコミ内部からも漏れだしている。「顔も見たくない」、「ダメなところは全部」「菅以外ならだれでもいい」などという、感情任せの政治家の発言に、どうして的確な説明ができないのだろう。

 この嫌菅感情は、政治家だけでなくマスコミ内部や一般市民にもある。「腑に落ちない」どころか、主権者国民にとってはなはだ座り心地の悪い、異様な状態である。ブログ「kojitakenの日記」には、原発問題と政治家に関する豊富な記事があるが、その中には、菅降ろしの陰に原発があるという東京新聞の記事の紹介もある。

 本ブログは前回、「原発と国威発揚」という記事を書いき、イタリアとドイツの脱原発に言及した。その際も気にかかっていたことだが、イタリアでは、ベルルスコーニ首相と右翼の大物有力政治家の原発指向に国民投票でNOをつきつけた。

 また、ドイツはフクシマ後に行われた地方議会選挙で緑の党の躍進があり、左翼陣営の勝利である。菅首相が、左翼だなどとは決して思わないが、市民運動出身の彼にそのレッテルをはり、施政のすべてを色眼鏡で見ようとする右翼が危機感を抱く、というシナリオは十分考えられる。

 右翼だから原発推進で左翼は脱原発などと考えるのは、よほどの単細胞的発想でしかない。原発の元祖だった中曽根康弘氏でさえ、「これからは太陽光の時代だ」などとすましている。右翼でも、左翼の体質に過敏に反応するのがレイシスト、すなわち人種差別主義者だ。

 話は変わるが「シネマトゥデイ映画ニュース」というサイトがあり、中学生アイドルの藤波心が「6.11脱原発100万人アクション」のアルタ前のアクションに登場し、脱原発への思いを語ったという記事を目にした。記事は次のように続いている。

 「脱原発言はタブー」という業界の風潮にも負けず、ブログに寄せられた批判にもうろたえず、まっすぐに自分の意見をつづった彼女に、ソフトバンク社長の孫正義は、「官房長官やら東大出の御用学者なんかより、14歳のアイドルのほうが的確な意見を述べている」と絶賛。一躍、脱原発のジャンヌダルクとよばれた。

 ブログへの書き込みは賛否相半ばするそうだ。試みに眺めてみると、批判の方は「14歳の餓鬼に何がわかる」とか「親がサヨだろう」、あるいは卑猥なひやかし、別のところでは「日本の原発を批判するのになぜ中国の批判はしないのか」などというのもあった。

 明らかにネットウヨのレベルまるだし。14歳の「餓鬼」の方が上だ。そのことより、「脱原発言はタブー」という業界の風潮というのが気にかかる。そのタブーなるものが、形を変えてTVを中心としたマスコミや政界に蔓延しているとすれば、それはやはり危険だ。

 左翼がよく言うのが「財界の圧力」であるが、原発については2つに割れており自民の一部にしか影響しないだろう。冒頭の引用にあるように、野党が倒閣の決め手とした「外国人献金疑惑追及」が震災で不発に終わったことに対する腹いせであるとすると、ここでもレイシズム利用のにおいがしてくる。

 塾頭は、仙石官房長官の問責決議でも、中国漁船の巡視船体当たり事件に絡めているようだが何が問題なのか、という点で全く同じような印象を持った。また首相は、不信任案否決のすぐあと、それまで見たことのないブルーリボンを急に胸につけてTVカメラの前に立った。

 このリボンは、北朝鮮拉致問題に関する国民運動のシンボルマークで、平沼赳夫議員など右翼を代表するようなメンバーが先頭に立ち普及に当たっている。菅首相は、左翼でない証しにこれをつけて現れたのだろうか。

 そこまで影響力があるとすれば座視できない由々しい問題である。これは、塾頭の妄想であり杞憂に過ぎないのかも知れない。マスコミのプロさえ解明できない疑問が素人に解けるはずがない。しかし、そうとでも考えないと、とても理解しがたいのが昨今の政局である。

 

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コメント

悪いことしてないのに
プロ野球の監督なら1ヶ月でクビ
なぜですか 優勝が目的だからです
復興を早くする目的なら当然です
党内もまとめられぬ党首
すべては民主,党首に責任あるのです
 こんなことしている場合でないと口をそろえていうがこんな監督がいつまでもいすわるため
チームは優勝から遠ざかっていく
 理解できますか あなた マスコミ

投稿: hina | 2011年6月16日 (木) 20時23分

どうしてこれほど次元の低い、中身のない権力争いになってしまったのか。
たとえば、菅さんに代わって新しい方が総理大臣になったら、どういうことを国民にアッピールするのか。日本の政府は何をするのか。
大連立は手段であって、その目的はまた別であります。その話なしでは、国民は政治にはあまり興味はありません。

http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
http://page.cafe.ocn.ne.jp/profile/terasima/diary/200812

投稿: noga | 2011年6月16日 (木) 21時00分

党内をまとめられない大罪は認めます。だけどそのために復興が遅れたという因果関係はありません。
プロ野球の監督も、まだ勝負のつかない試合の真っ最中に変えるというのは聞いたことがありません。

投稿: ましま | 2011年6月16日 (木) 21時16分

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