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2011年6月25日 (土)

ソフト・エネルギー・パス(4)

容易ではない政策転換
 『ソフト・エネルギー・パス』は、原子力だけではなく、地球上有限の資源である石油の消費なども再生可能エネルギーに変えていくことを示しています。今回はシリーズの最後として、これをどう実施していくのか、またその影響が社会にどういう変化をもたらすのかという著者の観点を紹介します。

 たとえ機能しないような政策でも、およそ政策を変更することは容易な仕事ではない。そこには疑惑、対立が生まれ、試行ならびに激しい仕事が必要とされる。ソフト・エネルギー・パスの第一歩をふみだすことは、簡単ではない。(略)しかし、もしソフト・パスがけん命におこなわれれば、これは政治的に、力強くアピールするものになりうる。ソフト・パスは失業とインフレーション、経済成長と環境の質、不便さと脆弱性といった事象を相互矛盾の関係におかず両者をともに解決の方向にむける。(略)ソフト・パスは、失業者に職を、企業家に資本を、環境論者に環境保護を、軍事関係者に国家安全保障の強化を、小企業に技術革新、大企業にリサイクルの機会を、世俗人に素晴らしい技術を、敬けんな人に精神的価値の再生を、老人に伝統的道徳を、若人にラジカルな改革を、世界的視野の人に世界秩序と公正を、孤立守主者にエネルギー独立を、リベラルな人に市民権を、保守主義者に国家の権利を同時的に与えるのだ。

Dscf3447  脱原発反対派は、逆なことを言います。「空洞化が進み、失業者が増大する」と。その原因は、電気料金の値上がりで製造業が海外に生産拠点を移し職場を失う、という殺し文句です。空洞化は今に始まったことではありません。また、エネルギー多消費型産業が海外に拠点を移したという話も聞いたことがありません。

 海外移転の最大の理由は主に、人件費でしょう。またそれらの製品も、現地向け海外向けが多くなっており、これからは、企業戦略のなかでエネルギー・コストおよび安定供給どう位置づけられるかが問題で、空洞化の責任を一方的に電気料金に押し付け、脅かしているようにしか見えません。

 現実はどうでしょうか。福島事故以降、住民への補償金、運転再開のための安全強化対策、クローズアップされた放射性廃棄物や使用済核燃料処理のための費用などで、原発を続けてもコスト減になる要素はありません。電気料値上げはどっちみち避けられないはずです。

 原発コストが下がる見込みのない中、自然エネルギー・コストは多くの人の参加する自由競争で間違いなく下がり続けます。ただし、急には間に合いません。その間を、第1に節約、第2に現有原発の安全性保障、第三に火力・水力発電復活などでつなげなくてはなりません。

 今の政府に足りないのは、こういった将来の脱原発に向けたタイムスケジュールです。だから、脱原発賛成、反対の両陣営から信用されず、上述の「力強くアピール」する力に欠け、成否を危ぶまれる結果になっています。

 最後に付け足しておきますが、上の引用後段に「軍事関係者に国家安全保障の強化を」というのがあります。ロビンズは、原子炉から複製されるプルトニュームの核兵器利用は想像されているより簡単だとし、核の平和利用の美名のもと事実上核拡散そのものだ、ということを別のところに書いています。「反戦塾」ですから、その面からの考察が必要ですが、それらはまた稿を改めて考えてみることにしましょう。(完)

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コメント

宿題になった軍事問題と原発の関連ですが、
京大の小出助教によると、そもそもの原発の出自が原爆製造で、発電の方が後(副産物)であって、軍事とは現在でも矢張り関連性が有ると指摘しています。
それで(今は違うが)昔は反原発とは左翼の政治運動だと色眼鏡で見られていたのですね。
原発と軍事ですが、福島第一事故後に反原発に転じた西尾幹二が面白い指摘をしています。
何時間か冷却出来ないだけで致命的に破壊される原発は破壊工作にきわめて弱く全てが海岸部に設置している日本は平和ボケの極み。
確かにマスコミなどが散々報道したテポドンも核兵器も必要ではなくて、日本全土を麻痺させるなら数時間作業員が原発に近寄れなくなくするだけで良いのです。
北朝鮮の暴走が本当に予想されるなら日本海側の原発などは一番危ないが、勿論そんなことは想定外。
外国の例ですが、案外海岸は少なく大概は内陸に設置されていますが、ひょっとするとかってイスラエルがイラクの原発を破壊したように敵対する外国による破壊工作まで考えてのことかもしれません。
ドイツですが全ては内陸にあり冷却水は川から取っている。だからですね。
福島のような原発のシビアアクシデントでは必ず汚染物質は下流に流れて被害がでる仕組みで、国民は環境問題にシビアなのです。

投稿: 宗純 | 2011年6月26日 (日) 17時40分

宗純 さま
コメントありがとうございました。

核兵器と原発問題は切り口が多く、どこから手を付けたらいいか迷います。

原発推進派はなるべくその二つを切り離したく躍起ですが、考えれば考えるほど密接不可分で、あわせて考えない方がおかしいといえます。

最初は、ずばりイコールの横須賀を母港とする米原子力空母の原子炉事故に全く無関心、無防備であることを取り上げたいと思います。

投稿: ましま | 2011年6月26日 (日) 21時13分

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