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2011年6月23日 (木)

ソフト・エネルギー・パス(3)

事故原因と危険について30年前に予告


 これからやっと本文に入ることになりますが、すでにシリーズの(1)で、大来佐武郎氏による本書の主張の要約を紹介したので、重複は避けようと思います。お断りしておきたいのは、当時のカーター米大統領にも影響を与えたとされるロビンズ氏のこの本は、当然のことながら多くの協力者から得た科学的知見や定量的データに満ちていることです。

 それがなければ、内容を忠実に紹介したことになりませんが、30年前の本であるため、たとえば彼が推奨した地域暖冷房より、小型のヒートポンプの方が不要な部分への熱供給を節約したり、電気特有のセンサーなどによるこまめな制御機能の方が節約に効果がある、というような評価のしかたに変化があったり、経済データなども現実とそぐわないものもがでてきました。

 したがって、現在日本で起きていることが、彼の特徴ある表現で予見されていたことを中心にご紹介することにとどめたいと思います。もうひとつお断りがあります。前回予告した、「エネルギー政策の転換がいかに困難であるか」などのテーマは、日本の場合、事故が先にきて政策転換があとになったため、著作本文にある順序を変え、事故関連記述をさきにし、予告記事を次回に繰り越させてください。

 原子力発電のように、技術的番狂わせと特殊な心理的ハンディキャップに依存している技術においては、予期しない異常事態が発生した場合、慎重にすべての機能をストップさせるか、あるいは社会的騒擾によって機能がストップさせられるかのいずれかが起ころう。われわれは一国の機能を停止させるか、あるいは潜在的に安全とはいえない運転に固執するか、いずれかを選ばなくてはならなくなるであろう。

 一〇〇〇億ドルの準民間原子力産業界の内部にも、近い将来、もし重大な事故が発生した場合、原子力は政治的にほうむられるだろうということを認める人が多数存在する。にもかかわらず、社会資本のそのように大きな部分を危険にさらすことの経済的、政治的意味を考えている人々はわずかしかいない。政府はそのように繊細、高価で重要な卵のいっぱい入ったかごを――純粋に政治的な脅しも含めた――脅威から守るために、何をどこまでやるだろうか。すでに個々の原子力発電所にとって――しばしば一秒当たり多額の金額にのぼる――停止のコストは、運手か安全上の決定をする場合の極めて重要な、おそらく重すぎるほどの要素となっている。

 高度技術の導入は、その商業的成功と公共ならびに自身の厚生をむすびつける人々の間に、影響力の大きい献身的な組織を形成させる傾向を生む。このような真摯な信念と、見え隠れする圧力、そして仕事を遂行するために必要とされる多大な時間とエネルギー等のために、これらの人たちは代わるべき政策選択肢について同等に十分な知識を獲得したり、これを議論する必要性を認めることができなくなっている。さらに電力計画に投下された資金と能力は、政府委員会にたいし、偏った影響力を発揮する傾向がある。これはしばしば政策機関と特別の目的を持った機関の間におけるスタッフの交換という手段を通じて直接的におこなわれる。このような近親相姦的関係が、ほとんどの工業国において深く浸透しており、このために政治的治療が長期にわたって難しくなるような形で、社会やエネルギーにおける優先順位のつけ方が歪められてきた。

 「近親相姦的関係」――、なんて過激な表現でしょう。ロビンズが、フクシマ事故を知ったあとなら、日本に遠慮して決してこんな言葉を選ばなかったでしょう。日本人にとって、それほど深刻な問題だったのです。

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