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2011年6月21日 (火)

ソフト・エネルギー・パス(1)

 前回に続けて、30年以上前の本の紹介で申し訳ありません。この本も翻訳物ですが版を重ねた名著です。塾頭は当時石油会社に勤めていた関係でこれらの本に関心を持ち、前Dscf3444回の『エネルギーを考える』同様買い求めたようです。

 だから関心があったのは石油の方で、原発の危険性や非効率は知っていましたが知識が浅く、技術開発で改善される可能性もある、と考えていました。それが今回、「脱原発」に切り替わったのは、原子力村のウソだらけが、ここまでひどいとは思わなかったからです。

 何十年ぶりに本棚から引っぱり出し、ページをめくったら、あまりにも今日的な叙述があるのでびっくりしてしまいました。それと同時に、現在のいわゆる推進派が、当時でさえ時代遅れとされているのに、なぜ頑迷固陋に過去にしがみついているのか、不思議な気がします。

 分厚い本で、読み切るのに苦労しますが、福島事故を見た今、記事内容がそのまま迫ってくるようなところが随所にあります。ちなみに、ネットで調べてみたら、当時1800円の本が古書で最低5000円から7、8000円もしており品薄のようです。そこで勘所をピックアップしてご紹介することにしました。

  以下、エイモリー・ロビンズ著、室田康弘・槌屋治紀訳『ソフト・エネルギー・パス』時事通信社、からです。最初に外務大臣もつとめたことのある有名な国際人・大来佐武郎氏が書かれた序言に、本書の主張が要約されており、それを借用します。

 ①エネルギー政策の基本方針としては、ハード・パスとソフト・パスの二つがある。現在先進各国においては主としてハード・パスがとられている。

 ②ハード・パスは以下の内容をもつ。すなわち、今後もエネルギー需要は増大するということ、しかるにこれまで供給の中心をなしてきた石油の供給が頭打ちになるため、大幅なエネルギーの不足が生ずる可能性が高いという見通しを前提にして、そのギャップを埋めるために原子力や石炭のような代替エネルギーを開発すべきであるというのである。

 ③しかしこのハード・パスにはいろいろ問題がある。それは核拡散の危険、廃棄物処理、集中管理的社会指向などである。

 ④他方、ソフト・パスとは、(a) エネルギーの供給の中心を化石燃料や原子力ではなく太陽熱、風力などの再生可能エネルギーに置く、(b)エネルギーのエネルギーの需給ギャップを閉じるために、供給増ではなく、需要減(省エネルギー)に主として依存する、等をその内容とする。

 ⑤ソフト・パスはハード・パスにくらべて環境破壊が少なく、核拡散の危険性も少ない、集中管理より分散管理指向型となる、また、エネルギー消費全体を節約することに重点が置かれる。

 集中管理、分散管理の説明は長くなりますが、ここでは中央集権型・自己完結型、大量生産・大量消費型、エネルギー政策統制型・自由化型などを考えておいてください。そして大来氏は、「原子力利用の是非を含め、その立場を超えてエネルギーの専門家のみに限らず、多くの人に読んでもらいたい」とし、次のように結んでいます。

  それは本書が日本の将来動向に重要な問題指摘をしていると考えるからである。日本の現在の意思決定に欠けているのは、多様な意見をぶつけ合い、その中で取るべき手段の選択肢が次第に明確化していくというプロセスではないだろうか。日本は今後多くの基本的問題に当面すると思われるが、エネルギー問題に関してもあやまった選択をしないよう真剣に将来動向を考えておく必要があると思われる。

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