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2011年5月21日 (土)

脱原発と言えぬ菅

 毎日新聞は21日、26、27両日にフランス・ドービルで開かれる主要国首脳会議(G8サミット)でエネルギー政策に関する発言として、「原発の安全性を向上させたうえで継続利用する方針を示し、日本が<脱原発>に転じたとの見方を払拭する」という概要を報じた。 同紙の言う概要とは次のようなものである。

 4本柱は(1)原子力の安全性向上(2)再生可能エネルギーの推進(3)石油、石炭など化石燃料の二酸化炭素(CO2)排出量削減(4)省エネ・節電。特に再生可能エネルギーを基幹エネルギーに加える方針を強調する。化石燃料のCO2排出量については、日本は石炭をガス化するなど最先端の削減技術を持つため、普及を促進する。

 これで見る限り<脱原発>ではないか。どこに「払拭」するための文言があるのかわからない。かりに現存稼働中の原発以外に新増設するという可能性を言うのでなければ、記者の用語に対するあいまいさか不勉強であろう。

 もうひとつの可能性は、概要にはないニュアンスを発言するという、経産省役人あたりの背景説明で記事を作ったのか、ということである。ベトナムへの原発輸出を約束したので破談にしたくないという、いやな予感は前からあった。

 しかし、同紙の別の面で海江田経産相が、記者会見で次のように語ったという記事がある。

「事故まで日本の原子力技術は世界一安全だと思っていた。しかし、事故を踏まえて高度化された安全性が確定していない。その間は(原発輸出は)足踏み状態にならざるを得ない」

 その間に、競争相手だった中国、韓国、ロシア、フランスなどがその地位を奪うだろう。買い手も、原発の新増設が日本でさえ始まらないのに、「買いましょう」というお人よしがあるはずがない。

 どうせ日本は、「脱原発」にならざるを得ないのだ。なぜならば日本国民は、今回の事故で放射能のこわさを知り、安全神話への不信感をつのらせた。これから、原発立地歓迎などという自治体は、猛烈な反対でまず出てこなくなるだろう。

 原発の停止や、経営切り離しをいやがっているように見える電力会社も、実は脱原発派なのだ。これからますます増えるであろう建設費・地元対策費や、万一の場合「補償額に制限は設けない」などといわれれば、民間企業である限り原発を引き受ける会社がなくなる。おいしい部分がなければ、原発はお荷物なのだ。

 前回、欧米各国の新エネルギー開発が進んで原子力を上回り、発電コストもトータルで原発に対抗できるようになったことを書いた。アメリカはシェールガス利用の有効性確認以来、原発に関心をなくしている。原発が一番ふえそうな中国でさえ、新設は風力の方が多いと聞く。

 このように、「脱原発」を宣言しても誰も驚かないし、逆に「払拭」してみせても、笑われるだけで日本に何の実利もない。むしろ、現存原発廃炉までの安全対策、核廃絶まで含んだ放射能処理技術などに経験を生かし、変わるべきエネルギーの開発で先頭に立ちます、と宣言したほうが国内外にとってどれだけいいかわからない。

 払拭論が、仮に与野党内の守旧派政治家、一部官僚、財閥系財界の思惑に根差すようなものであれば、菅首相はこれをキッパリ切り捨てなくてはならない。それがないから、浜岡原発停止を発表してもあの程度の支持で止まっているのだ。

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コメント

今まで原発を推進していた人々も福島第一原発の惨状を見て多くは考え方を変えたか、変えていなくても不都合なので『原発』については沈黙している。
未だに考え(態度)を改めない代表的な化石的人物と言えば東京都知事の石原慎太郎、経団連会長の米倉弘昌、経済財政政策担当大臣の与謝野 馨の三人。
特に与謝野は矢張り中央政府の閣僚なのですから一番問題も大きいでしょう。
そもそも東京大学法学部卒で日本に原発を導入した戦犯の中曽根康弘の紹介で日本原子力発電に入社した生粋の原発信者。
こんな人物を野党から引き抜いて、よりによって原発の大事故直前に重要大臣に任命した管直人首相の政治的な先見性の無さ(運の悪さ)は特筆に価する。

投稿: 宗純 | 2011年5月21日 (土) 15時00分

与謝野はすくなくとも経済のこと財務のことには造詣がある人と思っていた。

それが、日本経済を崩壊させかねない不経済な原発を支持し続けるときは、すっかり化けの皮がはがれましたね。

石原は、ジーゼルの排煙はだめで原発なら東京湾に作ってもいいなど、まともに話の聞ける人でない。

そういった人々をりーだーにして平気な愚民にも腹が立ちます。

投稿: ましま | 2011年5月21日 (土) 17時35分

確かにエネルギー政策に関する4本柱を見る限り、確かに「脱原発」とは書かれていないが、「脱原発」への方針転換として見て良いと思います。
これまで、原発推進してきた側の立場からすれば、一部を除き、その下で仕方なく従ってきた人達の立場への配慮を思えば、あからさまに「脱原発」を言えないというところも分からなくは無いところでもあります。
ただ、国際社会に対しては、むしろ「脱原発」を高らかに宣言しても良かったのでは無いかとは思うのですが、フランスのサルコジ大統領ではありませんが、そもそも、国内で「脱原発」か、「原発促進」かという二者択一の論理思考そのものを正すことこそが大切なことでは無いでしょうか。
そういう意味で言えば、国際社会から白い目で見られるかもしれないことを乗り越えて、曝け出したことは大したことでは無いし、むしろ、これを反面教師として「脱原発」へと変更して前に進めて行くことを期待したいところでもあります。
日本は、ドイツも見習って「脱原発」へと変更する一方で、原発に対する安全性向上に向けて、アメリカやフランスとも連携し合いながら、今後、中国やベトナム等への原発への国益については、アメリカやフランスに譲ってあげても良いのでは無いでしょうか。
逆に原発以外での再生可能エネルギー等の分野での輸出に切り替えて行けば良いだけのことですから。

投稿: asa | 2011年5月28日 (土) 16時01分

asa さま
コメントありがとうございました。

自然エネルギーとか太陽光とか、かっこいいことだけを言い過ぎましたね。脱原発であろうが反原発であろうが、逃げ出すことのできないのが放射性廃棄物です。

 日本の持てる技術は、新型原発の開発ではなく、核廃棄物処理に振り向ける、といえばまじめで立派。事実それがなくては新規原発も廃棄物の捨て場がなくて建設不能になります。

 菅さんの足を引っ張っていたと見られる電力労組系議員も、上部組織の連合が脱原発に宗旨替えしたようなので、原発推進もよりどころを失うことになるでしょう。

 会社も組合も本当は原子力との付き合いはこのさきしたくない、というのが本音ではないでしょうか。その理由は利益どころか事故をおこせば会社の存亡にかかわることがわかったからです。自分が社員だったとしても、そんなのいやですよね。

投稿: ましま | 2011年5月28日 (土) 16時56分

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