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2011年5月27日 (金)

「フクシマ」と「ヒロシマ」

 毎日新聞OBの岩見隆夫氏が『サンデー毎日』6/5号に、「フクシマ」と「ヒロシマ」について、という一文を寄せている。歴史的経緯を説明した上、広島被曝者で現在福島大名誉教授の星埜惇さんの福島原発事故に対する追及などを「理解できる」としながら、「安易に結び付けず冷静な判断を」というのを結論にしている。

 本塾では、「脱・原子力ニッポン!」を(8)で、「原発は原爆とちがうもの」という考え方が、今回の事故で認識が変わったということを書いた。その変化の理由は、現在、原発のすべてを取り仕切る政・官・財・学の「原子力体制」では、原子力をコントロールできず、暴発する危険を回避できない、という現実を見たからである。つまり、北朝鮮の核保有を不安視するのと変わらないということである。

 現在の閉鎖的・無責任体制の原子力村のような仕組みを解体し、核特有の不安材料を一掃できるような新技術でも発明できれば別である。しかし、そのプログラムを示し、実現できることを説明できる人が果たしているだろうか。

 フクシマを受けて、これからの原発は、危険予防や放射能廃棄物処理のため、ますます過大な投資を迫られ、コスト上昇につながるようになるだろう。それらを完全に解決するのと、新エネルギー利用技術の向上やコストダウンを図るのと、どっちが早いか効率的かを比べてほしい。

 「冷静な判断」ができる人ならすぐわかるはずた。ただ、そうすることによって国の援助のもと安易な経営や、安定した地位や、おいしい思いをしてきた人、そういった体制に慣れ親しんできた人達の権威と利益が失なわれかねないということになる。

 これだけでは、ヒロシマとフクシマを共通視する説明にならないので、やや長いが付け加えておきたい。前のシリーズでも述べたが、中曽根康弘議員が原子力利用開発に予算付けしたのは1954年のことで、前年朝鮮戦争休戦協定が成立したが、米ソ冷戦の真っただ中であった。

 この当時は、核兵器を持つ国は「偉い国」であった。同時に米ソの核競争が人類の破滅を予測させるものであることも意識され始めてきた。「平和のための原子力」という発想を持ち出したのは、1953年12月8日の米アイゼンハワー大統領の国連演説である。

 一定の制約(これが後にIAEAの発足となる)のもとでの核の平和利用を世界にひろげる、というもので、これを核軍縮の第一歩とした。現在、核所有国が「偉い国」と思い続けているのは、北朝鮮とイランぐらいだが、当時は、「偉い国」になりたく「平和利用」という名目で手をあげたのが、中曽根構想だったのである。

 エネルギーの安定供給や温暖化防止などという理屈は後なってつけたもので、当初はウランの確保、濃縮技術確立、技術者養成からはじまり、原発を持って発生したプルトニュウム等の後処理までこなせる(これを軍事転用可能な機微核技術という)ようにして「偉い国」になろうというのが、当初から続いた「原子力体制」の目的である。

 コントロールの利く核技術をこなせる同盟国を増やしておきたいという、アイゼンハワーの目的に沿ったものでもあったが、一旦国策として定着した「体制」は簡単に崩れない。アメリカやロシアは、核兵器の圧倒的保持国として「偉い国」の幻想を維持したいという一部国民の声は残るが、高いリスクやコストをかけてまで原発を造れるかどうか疑問である。

 冷戦が終わったのだから、全く別の発想があってもよさそうなものだが、何十年も続いた体制だからくずしたくない、というのは、安保条約や同盟のあり方に手を付けたがらない構図と全く同じなのである。つまり、核抑止力とか核の傘信奉と同じレベルの話であるということになる。

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コメント

宇宙情報によれば、
炉心の全メルトダウン=溶融・落下で圧力容器と格納容器に穴が開いて、冷却水がどんどん漏れ出ていて、循環冷却システムを造ることも出来ないコントロール不能状態に陥っている1,2,3号炉の新たな核爆発が近い。
 http://gold.ap.teacup.com/tatsmaki/84.html

投稿: 前田 進 | 2011年5月28日 (土) 21時44分

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