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2011年5月16日 (月)

ポスト・フクシマ 2

災い転じて「脱原子力」へ
 前回、今後われわれは原発とどう向き合っていくのか5つに分類してみた。「脱原発」とは、1.長い期間をかけて原発ゼロにし、2.電力消費を節約し、3.その間に原子力から小型分散型の水力・火力発電を活用、新エネルギー発電へのシフトや研究開発に総力を挙げるということである。

 なお、弊ブログが連載して主張してきた「脱・原子力」は、核兵器までを対象にし、核拡散防止・核廃絶までを含めた思想体系である。「原子力は国家なり」と信じている国は、北朝鮮・イランなど限られた国になった。日本もスタート時はこれに近く、「原子力体制」と関連産業を育ててきた経緯がある。

 これから先、原発を持ちたがっている国は、ベトナムをはじめ多くの発展途上国である。日本の今回の事故は小規模な核爆発といってもよく、アメリカが恐れる「核拡散」と選ぶところがない。「脱原発」と「核廃絶」は、もはや同列で考えるべきなのである。

このところ、原発問題を真剣に考える人の間では、「脱原発」が相当市民権を得るようになってきたと思われる。しかしそれに抵抗感を持つ人は、多分、菅首相の浜岡原発停止勧告に「唐突すぎる」と反応した人と重なるようだが、概ね次のようなことだろう。

 1.安全性を高めることにより、これまでの政・財・官による「原子力体制」を崩したくない人。米倉経団連会長や産経新聞などで、いまなお原発輸出に幻想を抱いているようだ。

 2.電力不足でこれまでの生活環境がおびやかされる「節電はいやだ」と考える人、さらに輸出産業に打撃を与えるので不況から抜け出せなず、雇用不安になると信ずる人。

 3.地元で原発の恩恵をこうむり、もし撤退するならその補償金を要求したいという人。こういう人は、福島のような事故があって故郷を捨てても我慢する覚悟なのであろうか。

 共通して言えることは、まず、被害が及ぶ範囲が広大で影響が後世まで残るという事故の深刻さが、他に比較しようのないものであることを認識していないことである。中曽根元首相が言う、墜落をこわがっていれば飛行機の発明ができなかったという詭弁や、某タレントが聞きかじりでいう、風力発電は野鳥が衝突して死ぬ、など語るに落ちたというべきだろう。

 さらに、核反応は人類が完全に制御しきれるものでないということや、福島原発の事故調査で明らかにされることになるだろう、組織や人間の不注意・失敗・誤認を完全防止できないことなど、どこまで留意しているか疑問なことである。

 今回の地震・津波と原発事故が、たとえば武士と町民の文化、軍人と官僚の時代、戦後経済第一主義などのあとにくる、日本文化が大変化を遂げる結節点になるかもしれない程の事態だということを感じていない。そんな人にとっては、菅発言が「唐突」に聞こえるのはある意味で当然だ。

 今までの生活を変えたくない、貧乏になりたくない、これは本音だ。しかし電気はふんだんに使いたい、電気料金はそのまま、増税も困る、それができない政府は無能だ、などと言っていれば日本は滅亡の淵に沈むしか途がない。

 日本が元気になるためには、いち早く「脱原発」を宣言する事、ことに政治家は早い者勝ちだ。原子力学者は、運転中の原子炉の安全確保を慎重に再点検する。さらに国内外の廃炉処理、放射能廃棄物の保管法開発、核軍縮のお手伝いに邁進していただく。ただし、原発安全神話に協力してきた学者だけは、「学者生命」を終わりにしていただきたい。 

 「脱原発」宣言を機に、新エネルギー開発の国際的遅れを挽回し、環境立国で世界のトップに立つことを国是にしたらどうか。2年、3年後のことではない。30年、50年さきの長丁場の目標だ。そのための貧乏なら、ここはしばらくは我慢しなければならない。そのような国民の良識に、原発推進組はあせりをみせはじめている。

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コメント

貧乏になりたくない、というのは勘違いです。

既に貧乏になったことに気付いていない。

収入が落ちたことを正確に認識し、対策を取れれば破綻はしません。

資源増殖という夢を見て、廃棄物処理の問題は技術の進歩が解決すると夢想し、どうにもなりそうもない危険物を大量に生み出した。

これは、家計でいえば、収入が心もとなくなったがもっと贅沢がしたくなったので先物取引に手を出し、資産がなくなる前に大儲けできると思ったが莫大な負債を残した、ということです。

投稿: くまごろう | 2011年5月20日 (金) 03時47分

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