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2011年5月 8日 (日)

「脱・原子力ニッポン!」を(8)

土下座はしない原子力村学者


 「原発は、大量破壊兵器の原爆とは別だと思っていました。しかし制御不能に至った原発を目の当たりにすると、認識を変えざるを得ません」(毎日・11/5/5)と言ったのは、政治史などが専門で、自らも広島原爆被災者の福島大名誉教授・星埜惇さんである。

 実は塾頭もそう思っていた。戦争目的ではなく、平和利用であるからには、優秀な学者が集まって知恵をしぼり、念には念を入れて安全確保をするものだと信じていた。

 それが一挙に崩れたのは「想定外」発言であり、「事故」を「事象」、「爆発」を「通常とは異なる上方の解放」などと、児戯にも等しい言いくるめ方をしようとした、原子力村の姿勢があったからである。

 いずれ、原因調査委員会により実相が明らかにされると思うので、あえて戦犯さがしをする気はない。ただ、10mを超す津波や自家発の同時不調などは、素人でも容易に想像できたことだ。想定外のことを想定して策をめぐらすのが学者ではないか。

 また、津波の高さだけが想定外のようなことを言っているが、格納容器や圧力容器の系統にも破損個所が複数あるようだ。これは、配管の継ぎ目など衝撃に弱いところが地震動や爆発の衝撃でこわれた可能性はないのか。

 運営をまかされていた東電の清水社長は、避難所をまわり、土下座して被災者に詫びた。それで済むわけではないが、安全のお墨付きを出して運転を認可させた原子力安全委員会のメンバーはどうしたのだろう。発電所の現地に出向いたのは地震後40日たってようやく1人だけだという。

 これまで原発に協力を惜しまなかった、原子力安全委員会や原子力学会に所属した学者16名が、連名で自らの不明を弁明し、あらためて「緊急提言」というものを出した。内閣参与だった小佐古敏荘東大大学院教授は、自分の提案が政府に採用されなかったと言って、涙目会見をした。

 避難を余儀なくされた被災者を考えると、いかにも軽い。原子力安全委員として安全神話を作り上げた責任は、どこに置いてきたのだろう。東電社長の土下座は別世界のよそ事なのか。不思議としか言いようがない。

 旧聞に属するが、かつて考古学研究者が、自分が土に埋めておいた石片を数十万年前の旧石器だと偽って発表した事件があった。学会内では疑問を持つ学者もあったが、結局新聞記者に偽装の現場を押さえられ、考古学者の信頼は地に落ちた。

 考古学者の間では、これに強い危機感を抱き、真相解明と再発防止のため委員会を設け、歳月をかけて、チェックのあり方や学者のムラ意識にメスを入れることなどの自己批判報告を出した。

 原子力体制を支えた学者には、そのような危機感もないようだ。個々の学者の言動は、『世界』5月号や『週刊現代』5/21号などにあるようなので、ここでは代表して有馬朗人・元東大学長語録を、毎日新聞(5/6夕刊)から拾ってご紹介しよう。有馬氏は、原子物理学者で文相の経験もあり、原子力体制の学者の中で大御所的存在といっていいだろう。

 「私も含め日本の科学者たちはなぜ日本の津波対策を考え直さなかったのか。それが私の科学者としての一生の不覚です」

「震災後の今でこそ約1200年前に貞観地震で今回のような大津波が来たことが知られていますが、残念ながら私も地震後に知りました。国もそのことを事前に認識し、十分な対策を提示することがなかった」

「今回は、政府や東京電力が言い訳のように『想定外』と言ったから批判を受けたけれど、自然の中には想定外がたくさんあるんです」

「これを風力や水力の自然エネルギーで代替できますか。自然エネルギーの利用推進はもちろん必要ですが、安全で安心できる原発を造るしかない」

「第二次世界大戦がはじまる頃、ABCD包囲網が作られ、日本は石油を一滴も輸入できなくなりました。それで、日本は石油のあるインドネシアに進出し、開戦につながった。そういう日本のエネルギー自給率はわずか4%。自給率を高めるために原発は必用です」

「福島第2原発にも津波がきています。第2原発の方が第1原発よりも新しいから、冷却の発電機などが建物内にあり被害を受けませんでした。費用はかかるが、被害が出る前に、防災をしっかりすすめなくてはなりません」

 最後のくだりは、想定外だったはずの津波に、第2原発は新しいから対策が効をそうしたという、トンチンカンな発言。その前の項で、資源争奪戦争をいうあたり(注:インドネシア進出は開戦後の誤り)、原爆も原発も同列に置いた「住民より国益」優先の発想につながっている。

 また、彼らの頭の中には「放射能漏れなど起きるはずがない」、ところが「現況は深刻だ」と、その間の思考回路がプツンと切れたままなのである。そこを「想定外」に預けてしまった。冒頭では、専門外の事を知らなかったことが当たり前のように語られる。これを破廉恥と言わずして何と言おう。

 原発にしろ原爆にしろ原子力には、人類にとって制御しきれない放射能被害がついて回る。そしていかなる技術、組織をしても人間のミスはさけて通れない。今回の事故は、まさにそれを証明している。このさき、責任をとらない学者に、どうして国や国民の将来をゆだねることができるであろうか。

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コメント

重要な突っ込みどころとして

原発の燃料もほぼ完全に輸入していますから、原発やっても自給率は上がりません。

プルサーマルで数パーセントは二度使えますが、自給するには高速増殖炉を商用ベースで成功しないといけません。商用ベースは第五段階、完成後殆ど動いていないもんじゅは第三段階、フランスが諦めたスーパーフェニックスは第四段階でした。今もんじゅを除けば、インドと中国が原子爆弾目的で研究しているだけでしょう。
これが実現しなければ核燃料のエネルギーベース総量は石油以下、石油不足時の資源争奪の予防線には全くならないです。ピークオイルも過ぎてしまったのに、2050年に実現すれば幸せだなあ、とか失笑するしかありません。

投稿: くまごろう | 2011年5月20日 (金) 04時06分

くまごろう さま
いちいちごもっともなご指摘ありがとうございました。

手抜きのまとめてレス、ごめんなさい。m(_ _)m

 ウラン、可採年数50年でしたっけ。「石油と同様高くなる一方」と書こうとしたが、むしろ原発の構造不況で生産過剰、安くなるんじゃないかと思い、やめました。

 プルサーマル計画は、お先真っ暗。原発推進派は、札びら作戦という常とう手段を考えていたようです。貧乏を自覚しない、したくない人がこれに乗り巻き返す可能性が49%ぐらいありますね。

投稿: ましま | 2011年5月20日 (金) 10時57分

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