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2011年4月24日 (日)

「脱・原子力ニッポン!」を②

  前回、「原子力体制」と名付けられた日本の政策キャンペーンの話をした。意識して生まれたものではないが、「55年体制」と呼ばれた体制も、50年とは持たなかった。ところが、「原子力体制」は60年近く命脈を保ち、この度の事故がなければまだ続いたに違いない。

 冷戦が日本の原発を産み落とした」というと、「エッ?」と思う人もいるだろう。「原子力体制」作った時の客観条件がなくなっているのに、そのままの「体制」を引きずっているのは、占領軍を引き継いだ形で安保条約が結ばれ、1960年以来変えようともしなかった「惰性の政治」そっくりそのままくりである。

 占領時代は、GHQにより、原子力の研究は禁止されていた。それが、復活し、米仏に次ぐ第三の原発大国になった裏には、米ソ間の熾烈な核開発競争があった。例をあげてみよう。
 ・1953/5 米、ネバタで原子砲実験
 ・1953/8 ソ連、水爆実験に成功
 ・1954/1 米、原子力潜水艦進水
 ・1954/3 米、ビキニで2度目の水爆実験
 ・1954/6 ソ連、世界初の原発送電開始
 ・1955/3 フランス、原爆製造開始
 
 そして、わが国の原子力体制の骨格がほぼ固まったのは55年末頃である。

 日本の原子力政策の特徴は、国家安全保障の基盤維持のために先進的な核技術・核産業を国内に保持するという方針(これを「国家安全保障の基盤維持のための原子力」の公理と呼ぶ)を不動の政治的前提としている。

(中略)「国家安全保障のための原子力」の公理というのは、日本は核武装を差し控えるが、核武装のための技術的・産業的な潜在力を保持する方針をとり、それを日本の安全保障の主要な一環とするということである。

 それによって核兵器の保持を安全保障政策の基本に据えるアメリカと、日本の両国の軍事的同盟の安定性が担保されている。「国家安全保障のための原子力」という言葉の付帯的意味には、先進的な核技術・核産業をもつことが国家威信の大きな源泉となるという含意がある。(吉岡斉『原発と日本の未来』岩波ブックレット、より)

 当時の日本人は、54年にマグロ漁船第5福竜丸がビキニ沖で死の灰を浴びたり、55年に第1回原水爆禁止世界大会が開催されるなど、放射能被害には敏感だった。 その一方で、これから超エネルギーである原子力が技術の力でコントロールされ、人類の平和に貢献する、新生日本は、それには乗り遅れないようにしたい、こういった願望は「鉄腕アトム」にも表現された。

 アメリカにとってはどうか。極東で核兵器は持たないが、核技術すべての工程をこなせる国が西側陣営に加わっている、これは核競走にとってプラスにこそなれ、マイナスではない。そういった日米の戦略は、当時あまり表面に出てこなかった。

 しかし、東西冷戦の終結、ソ連の解体、日本の高度成長、電力需要の急増などで「原子力体制」の背景は全く変わった。そのあと、さらに変わっている。スリーマイルやチェルノブイリの事故などを受けた原発立地反対運動、これから増加する耐用期限切れの原発対策や安全対策、放射性廃棄物処理などのコスト増である。

 先進国では、この先原発が斜陽化しかねない状況だったが、そこに現れてきたのが、地球温暖化防止策としての原発と発展途上国からの需要増大である。これを原発関連事業者や「体制」に依存してきた面々は、「原発のルネッサンス」と呼んでいるようだが、もはや「体制」が形骸化していることを裏付けたようなものだ。

 政府の援助を期待する「体制」を残す道は、内外に向けて「脱原発」に全勢力を傾けるしかないだろう。それは、決して後ろ向きの事業ではない。原発はますますコストが高騰し、住民への補償などを考えれば、民間会社としてリスク負担をこえる原発の新設・運営を続ける会社はなくなるに違いない。

 核の技術は、原発からのリーズナブルな撤退、廃棄物処理、核軍縮に伴う業務などに活用して海外にも売り込み、併せて新エネルギー開発、環境保全などが営利事業として成り立つよう、新たな体制としての再構築が期待される。これまでの方針の延命策は、亡国への道でしかない。

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