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2011年4月12日 (火)

反原発は国論になるか

 震災後1か月が過ぎた。その間、メディアは震災マターで埋め尽くされた。その中身は、地震被災地・被災者と原発事故・電力不足に大きく二分されている。地震の命名は、政府が乗り出して「東日本大震災」に統一したが、どうやらそれでは追いつかない。それに+「東電」が必要だ。

 原発事故の深刻度を示す国際原子力事象評価尺度(INES)を、レベル5から1986年のチェルノブイリ原発事故と同じレベル7まで引き上げることを、政府の原子力安全委員会が決定した。震度的表現でいえば、レベル7弱に達したということだろう。

 当然世界はそれ以上の厳しい目で見て居り、原発保有国では新設凍結、廃止に向けた反対運動なども盛んになっている。ここで、日本が安全性強化・新増設、輸出促進などの政策をとり続けたら、世界の同情を失い大恥をさらすことになるだろう。

 財界、自民党、民社党内の推進派、それに石原都知事などは、なんとか反原発ムードがおさまり、旧に復したいとと思っているだろう。かく言う塾頭も、安全確保、廃棄物処理などの技術が日本の国益に資するところがあり、核拡散や核軍縮にもかかわるIAEAの活動に寄与できれば、その研究を進めるべきだという考えだった。

 それが一挙に崩れ去ったのは、今回の東電をはじめメーカー、学者、政府機関などいわゆる原発村メンバーに対する不信感が爆発したからである。これを世論とし政策として実現させるためにはどうすればいいのか。

 すでに、国内でも反原発デモなど市民運動も起きていることが、ブログ「イサオ プロダクト ワールド」などで紹介されているが、マスメディアは一切報じない。しかし、その一角にも明らかな変化が出てきている。

 本塾が取り上げることの多い毎日新聞(4/12)の「記者の目」、野沢和弘記者による《「原発なき社会」生きる覚悟を》を紹介しておく。こういった考えが一般化し、政党の公約に現れ、国民の投票行動がタレント候補、パフォーマンス候補だけに流れないようになる日を期待したい。

(前略)フェイルセーフが機能しなかった。素人の素朴な疑問や恐れを排し、専門家で温めてきた危機管理への慢心や過信があったのは明白だ。「想定外」で片づけてはいけない。同時に、過去の不祥事批判がどうして慢心や過信の見直しにつながらなかったのか、報道側にも省みる余地がある。

(中略)世界の国々が原発の恩恵を享受する中で、日本は技術も実績もありながらあえて原発を放棄することができるだろうか。飛躍的な技術革新がない限り電気のコスト増はあらゆる経済活動や暮らしに重くのしかかるだろう。

 それでも覚悟を決めるしかない。危機管理の限界に直面した今、原発なき社会の希望と停滞を引き受けて生きるしかないのだ。

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コメント

記事に関係が薄いコメントで申しわけないのですが、
実は、この東日本大震災の名称に違和感があるのですね。
NHKは当初東北・関東大震災と呼んでいたが、
被害者数は3万人と桁違いに大きい被害なのですが、ほぼ岩手宮城副島の東北三県に集中していて、それ以外は0・2程度です。
ですから大震災の名前から『東北』を抜くのは不正確であるだけではなく、根本的な大きな間違いを犯す危険性がある。
東北でも、日本海側ではなく太平洋沿岸に被害が限定している。
それなら東日本ではなく、東北・太平洋大震災の方が実体に即している。
ところが如何も、原発事故の方が後々を考えると影響が大きそうなので、原発の名前が無いと矢張り正しくないが、東北・太平洋・原発事故大震災では長すぎる、
今度の大震災ですが、これは日本にとっても世界にとっても9・11事件並みか、それ以上の価値観の変換を伴う大きな歴史的な転換点になる可能性がある。
それなら3・11大震災の名称が一番相応しい。

投稿: 宗純 | 2011年4月12日 (火) 14時26分

たしかに「東日本」というのは地理的概念をともなう言葉ではありませんね。使い始めたのはJRが最初でしょうが、国民から認知された概念ではない。

古代の「あずま」「みちのく」でしょうが「こし」にも被害がでている。地理的にはホッサマグナの東、東電と東北電力の守備範囲といえばぴったりだ。

もたもたしていると、外国人にFUKUSHIMAで代表させられてしまうかも知れません。

投稿: ましま | 2011年4月12日 (火) 17時38分

反原発というのは原発の危険性を想定してモラトリアムを求めてきた運動でした。しかし、未だに稼働中の原発は一時停止すらしていません。政府や東電の補償という言葉が、原子力帝国ニッポンの「ニセ綸旨」でないことを願っています。

しかしいまさら東電や政府を批判しても虚しいだけです。そこで原発被害に対するオルタナーティブを出していくのが、これからのスタイルになることを願っています。

いまも続いている放射能の拡散については、専門家が何か示すよりも現実を把握することが大事なので、ロボット技術やファイバースコープを駆使して炉心がどうなっているのか把握することが第一です。現在すすめている冷却と並行して想定ではない現実を把握しなければなりません。仮定や想像のコメントはウンザリです。

次に30キロ圏内の避難民をどのように処遇するのかという指針です。原発の放射能漏れが無くなり核燃料が別の地域に持ち出されるまでは、安全宣言ということにはならないでしょう。非常に長い時間が費やされるのは間違いありません。数ヶ月でもなければ2〜3年という単位でもないことは理解できています。
しかし、日本国内には避難民を集落単位で受入れできる土地はあるのでしょうか。原発避難民が流浪の民とならないように、外国への一時移住という選択も考えなければならないでしょう。

3・11は日本の未来を大きく変える歴史的な大事件です。いまだ水蒸気爆発という最悪の可能性と背中合わせにあるなかで、塾頭は未来をどのように描きますか。

投稿: ていわ | 2011年4月16日 (土) 20時58分

ていわ さま
コメントありがとうございました。

 菅首相が福島原発周辺で避難先から数年は戻れないところが出るかもしれないと言った(本人は否定)とかで、攻撃されていますが、これはむしろはっきり言うべきです。

 該当する住民にとっては耐えられないことでしょうが、レベル7とは、そういう事態のことで、隠したり安心させたりすることではありません。もちろん、その全責任は東電と政府が負うべきで、費用をケチってはなりません。

 事態は進行中で、次第に終息に向かうでしょうが、東電の言うように6か月か9か月でかたが付くとは限りません。東電の現場次第で、これも本店や保安院、政府の万全のバックアップがあったとしても、最大級の余震が襲えばほごになりかねません。

 私は、電源自給自足主義を提唱します。町なら町、村なら村で使う電力を自給できるようにします。東京で使う電力を福島で作るというのは、実は膨大な送電ロスがありエネルギー浪費につながっています。今まで「大きいことはいいことだ」という集中主義が支配していました。

 そうすると困るのは人口密集地帯の東京です。域内に大型火力を作るか近辺の余剰電力を買うしかありません。石原さんなら都内に原発を作るかも知れませんが、原発では放射能廃棄物処理や廃炉経費を考え、今回のような事の起らないよう安全対策を強化し、また万一の場合の補償金まで考えれば、他のエネルギー源より高コストになることは明らかです。

 エネルギー分散、小型発電の普及、案外これがエコにつながると思います。

投稿: ましま | 2011年4月17日 (日) 20時42分

原発事故の教訓として、これからは大規模な発電所が増設されることはなくなり、塾頭の考えるコージェネ社会が加速するようになるでしょう。そういう環境は燃料電池自動車が運用されているのですから遠い未来の話しではないと思います。

今朝のテレビでは外部に漏れている高濃度汚染水を炉心の冷却に再利用するなどと報じていましたが、炉心へ続く配管が破断していなければ可能でしょうが、破断していたら絵に描いた餅で終わりです。現実を直視できない原発教団の希望的観測でしかありません。ウンザリです。

投稿: ていわ | 2011年4月17日 (日) 21時51分

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