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2011年4月26日 (火)

「脱・原子力ニッポン!」を(3)

 科学史、技術論などの分野で論文を多く発表し、『思想の科学』の創刊など、科学のあり方を鋭く問い続けてきた物理学者、武谷三男氏(2000年4月没)が編纂した『原子力発電』(岩波新書)という著作がある。

 この本は1976年2月、つまり35年前に発行された本だが、その冒頭「序にかえて」で、今回の福島原発を予測したかのような名文がるので、今回はその紹介にあてたい。

 原子力利用の長い道のりは、目前の目的のためにあせればあせるほど、ますます遠い見果てぬ夢となっていく。原子力はまだ人類の味方でなく、恐ろしい敵なのである。日本の諸所方々に建設され、さらに計画されている大型の原子力発電所が何をもたらすだろうか。さらに世界の原子力発電所が人類に何をもたらすだろうか。われわれは無関心でいるわけにはいかないのである。

 現代はいまだに原水爆時代であって原子力時代ではない。これは私がすでに東海一号原発導入のとき以来唱えつづけてきたことであるが、現在もそのまま成立する。一般にいって戦後の技術革新をになう主要な技術は、第二次大戦中に開発されたもので、戦争の性格を強くもっている。圧倒的規模での大量生産、大量消費は、第二次大戦の「みな殺し戦争」のやり方を、利潤場面に転用したやり方であり、戦争は勝つことだけに目的があり、あとは野となれである。戦後平時の各国独占資本のシェア争いの場面で同じことが行われ、あとは野となれ式競争が、地球汚染をまねき、特にブレーキのない日本で公害天国を現出させた。

 第二次大戦およびその後の技術革新の特徴を象徴的にあらわしているのが原子力である。これは戦争技術としては人類の滅亡を、今日直ちに用意しており、平和利用も不用意にやられたとしたら、やはり、じわじわと人類を滅亡に導くであろう。

 結論的にいうと、原子力平和利用は一方において、原水爆を克服しない限り、人類のものとはならない。他方において、世界で利潤機構が本質的な役割を果たしている限り、人類を蝕む脅威をますます増大させていくだろう。

 今日、原子力を考え、それに対処する場合に、今日までの道のりを常に念頭におかねばならない。原子力との取り組みの苦闘の歴史が最近ほとんど忘れられているのは残念なことである。故坂田昌一博士は三害として「歴史の忘却」「経験主義」「固定化」をあげていたが、歴史の教訓を高度の意味でとらえることが必要であろう。

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コメント

昔から『目明き千人に目暗千人』と言われますが、素人が判らなくても専門家なら良く知っている。
今テレビなどで平気で『想定外だった』なんて喋っているのは専門家でもないし、目も見えていない。
実は原発の過酷事故でも専門家はやっぱり知っていたらしいのですよ。
独立行政法人の原子力安全基盤機構が去年の10月の段階で原発の全電源が喪失した場合には3時間でメルトダウンすると報告している。
毎年更新しているのですが、
何と去年の12月にだした地震に係る確率論的安全評価手法の改良. に関する報告書には今の福島第一原発事故を想定していて、その中で今起きている恐ろしい結果が書かれているのですから驚きです。
報告書によると原発敷地高さが10メートル(福島第一の1~4号機と同じ)と想定した場合には、何と、津波高が7メートルで最高の被害が出ると書いてあるのですよ。
波高3~23メートルまでの想定値で炉心損傷の頻度が最も高いのは波高7メートルの場合なのです。
この条件ではほぼ確実に炉心損傷に至ると判断しいるのです。
また高さが13メートルの防波堤があった場合では波高15メートルで一番被害が大きいとしていますが、福島第一ではこのような防波堤は存在していません。
この想定どうりに矢張り津波の波高は7メートルが正しいでしょう。
福島第一の南50キロの福島県いわき市では4メートル弱程度の津波高です。

投稿: 宗純 | 2011年4月27日 (水) 16時48分

宗純 さま
津波の高さというのは、特定の場所で検測された潮位計のデータと、波がここまで来たという波高とでは明らかに違いますね。すべては、現場でなくてはわかりません。

福島原発では、低い位置にあるポンプ室が砺波で破壊され、タービン建屋の内部まで水につかって自家発がだめになってたことは、たしかのようです。

津波のせいか地震のせいか水素爆発のせいかわかりませんが、圧力容器につながる配管が相当やられているようです。

素人考えでも相当ヤワな設計だったなと思わざるを得ません。設計を承認するのは、原子力安全委員会で唯一の仕事らしい仕事とされています。

投稿: ましま | 2011年4月27日 (水) 18時17分

福島第一の北120キロの震源地に一番近かった東北電力の女川原発は敷地高が14メートルで、東北電力が発表した津波高が13メートル。
原発敷地の方が1メートル高かったのですが、東電の福島第一と全く同じ損傷を受けているのですよ。
ところが大きく結果が違って仕舞った。
福島第一では敷地内の鉄塔が倒れた為に外部電力が絶たれたが東北電力の女川ではこの外部電源が維持されたのです。
違いは基本的にこれだけですね。
非常用の発電機が両方とも取水口から逆流した海水で浸水して動かないのです。
津波高ですが、これは仰られるとおりで潮位計は海の側にあり津波の高さを測定するもので、押し寄せた津波の高さは海底地形に影響されます。
ところが上陸してからの津波は地形によって影響され数十メートルの高さまで遡上するのですが、これは遡上高で、沿岸に設置された潮位計とは大きく違ってきます。
それなら東北電力は潮位計の津波高を発表して、東電は遡上高を発表したと善意にも解釈出来ますが、その東電も津波到来時(地震直後の当日)には東北電力と同じ潮位計の基準で7メートルと発表している。
原発事故の深刻化で、当初の潮位計での測定値を黙って修正している形跡が残っている。
これは実は気象庁も同じで地震のマグニチュードの計測方法を原発の深刻化が明らかになると大きくなる様に変えている。
何も基礎知識が無いと、計測方法が違うことは判りません。『トンデモナイ大きな地震や津波だった』と誰もが思います。
ですから発表するときに前の低い数値と現在の高い数値は計測方法が違うと明らかにしないと、駄目でしょう。
別の物差しを使った理由ですが、『想定外だった』との言い訳の為の印象操作の疑惑があるのです。

投稿: 宗純 | 2011年4月28日 (木) 11時07分

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