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2011年3月22日 (火)

中国の思想

 このたびの大地震で、海外のメディアは日本人の冷静な対応を驚嘆をもって伝えているようだ。特に中国では在日特派員、留学生、旅行者などを通じて、危機に臨んでも秩序を失わず、謙譲と助け合いの精神で中国には見られない団結力を発揮、災難を克服していると驚きの目で見ているという。

 ネットの書き込みに「ざまを見ろ」的なものがないではないが、たちまちにして非難の声にかき消され、中には、将来中日が戦うようなことがあれば、中国は必ず負けるに違いない、という「自虐史観?」まであるようだ。

 えらい様変わり、と思う人がいると思うが、実はそうでもない。世相は時と共に移り変わるという「革命思想」は、古来から中国に一貫したものがあり、「共産中国」だけが中国だと思っているような視野の狭さでは、将来必ず道を誤ことになる。

 塾頭が子供の頃、「メンファーズ」という日本語化した中国語があった。「仕様がない、あなたに合わせよう」といった感じで、帰還兵などを通じてもたらされたものだ。漢字で書くと「没有法子(メイユーファーツ)」である。

 ニム・ウェルズの観察によれば1937年頃の、老朽中国の精神をあらわす常套語は「没有法子」のほか「馬々虎々(ママフーフー)」「不要緊(プヤオチン)」「差不多(チヤプトオ)」などであった(竹内実『中国の思想』NHKブックス所載)。

 「馬々虎々」は文字に意味はなく、音で表現したもので日本語にすると「マアいいんじゃないの」程度の意味、「不要緊(プヤオチン)」は、どうでもよい、気にするな、「差不多(チヤプトオ)」は、でたらめ、中途半端な仕事ぶりのことをいう。

 魯迅もこれらのことを日本人の「生真面目さ」と対比して論じているので、別に外国人の見た一方的な偏見ではない。それが、昨今の反日感情や抗日姿勢で全く逆に見えたのは、共産革命に身を挺したエリート青年共通のモットーが、古い中国からの脱却であり、現在もそれが続いているからだ。

 そういったモットーや建前で、4000年の歴史を持つ中国人の深層まで変わってしまったわけではない。言わんとしていることは、日本人は中国人を理解しきれていないし、中国人の日本観も誤解に満ちたものであるということである。

 ひとつお断りしておくが、前述の老中国を表す言葉は、俗界や政治から距離を置き隠棲した聖人君子や、「中庸」といった中国思想と無縁ではなく、美徳として考えられたこともあるのである。

 中国文化や儒教移入に熱心だった中世から江戸時代にかけて、日本に多くの影響をもたらした。したがって、相互の思想の中には底流で相通じるものがある、ということに気付かざるを得ない。反面、絶対同化しきれないものがあることも事実であるが、二者択一しかない欧米の一神教諸国より近い考えが持てるはずだ。

 その障害になっているのは、政治の硬直化、相互不信と誤解の増幅、それに低次元のナショナリズムやポピュリズムなどである。大震災で情報疎通が進展したことは、不幸中の幸いであった。さらに人的交流や文化交流がより活発化することにより、障害がひとつひとつ取り除かれる日がやがてくるにちがいない。

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