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2011年2月28日 (月)

「たて」と「やり」 5

 今週のTBS・サンデーモーニングにコメンテーターとして出演した、元自民党総裁で前衆議院議長の河野洋平さんは、最近の国際世論、特に中東では日本がアメリカ追随の政策をとり続けていることで、かつての信頼を失いつつあるという趣旨の発言をしていました。

 外相としての経験のある河野さんですが、衆議院議長は、日頃表敬訪問などで海外の要人と接することが多く、1年ともたない外相や首相より、はるかに国際感覚を的確につかめる立場にあります。かつての最高機関の長がテレビで公言するようになったことは、国民として重く受け止めなくてはなりません。

 シリーズも5回目に入り、そろそろ<難関>の「たて」の話に取り組まなければなりません。なぜ難関かというと、多くの兵器を「たて」と「やり」に区分するのは困難だということです。これまでに、シリーズの中で「やり」の最たるものはミサイルだといいました。

 ところが、「たて」の役割を果たす防護用ミサイルというのもたくさんあるのです。MD(ミサイル防衛)システムの中のPAC3などというのもそのひとつです。もう昔になりますが、イラクのフセイン政権がイスラエルのテルアビブ上空にミサイルを飛ばし、イスラエル側がパトリオットという迎撃ミサイルで迎え撃つ花火のような映像をご記憶の方もあると思いますが、あれです。

 防護専用のミサイルなら、北のノドンを撃ち落とす目的で日本が持つのは当然だ、ということになるでしょう。しかし、百発百中というわけにいかず、日米共同開発のテーマにのせられています。大変お金のかかる研究であるばかりか、配備に反対する国もあるのです。

 それは、核兵器削減条約でICBMの本数を制限しているのに、当事者の片方だけが撃ち落とす能力を持つと本数を決めた意味がなくなるというものです。「やり」を持たない日本のためだけであれば、そんな理屈は通りません。

 ところが、MDシステムは偵察衛星による発射情報の把握、イージス艦などによる軌道計算、迎撃ミサイルの発射などが一体化して機能するものです。これまで、偵察衛星の情報は全面的にアメリカに依存しており、日本独自の衛星計画も進んでいますが、敵国上空を偵察する衛星が「やり」でないといいきれるかどうか、疑問も残ります。

 ミサイルの話から離れて見ましょう。シリーズ 4 で、日本が「たて」だけで守れる理由の一つに、島国だからということを言いました。前大戦もそうでしたが、制空権、制海権を奪って本土に接近、艦砲射撃や空爆を繰り返す中、海兵隊が上陸用舟艇で殴り込みをかけて根拠地を築き、陸軍を投入して首都を制圧、だいたいそんな筋書で戦争が進みました。

 ここで、前回取り上げたアメリカのゲーツ国防長官の言葉を思い出してください。現在は地上からの艦船攻撃能力が発達しているので、海兵隊の上陸などは不可能だ、と言っているのです。陸続きと違って大勢の陸軍兵士を送りこむには船しかなく、すぐ発見されて撃沈されたら膨大な兵員の損害を招き、作戦が立たなくなるのです。

 日本に、その備えがあり、憲法で攻撃する「やり」も持っていないとわかっていて、どうして損を承知で日本に攻めてくる国があるでしょうか。さきほども言った通り、「たて」と「やり」の仕分けはなかなか難しい面があります。それは、兵器の進歩や戦場の様態が時代と共に変化していることにもよります。

 しかし、憲法で「やり」は持たない、使わないという国是が徹底すれば、兵器のこまかい機能面などそう神経質に考えることもないでしょう。ただ、これまでの自衛隊が、どこまで自主的な判断をしてきたか疑問です。

 兵器産業とつるんでいたり、米軍の思惑や兵器購入要求に盲従していたとしか思えない点もあります。当塾では、非人道兵器・クラスター爆弾禁止条約加盟をシリーズを書いて要望しました。自衛隊にそんな国内で使えないような兵器を持つ理由がないと考えたからです。

 これは、しぶる防衛庁を押し切り、加盟を決断した当時の福田首相と、後押しした公明党を高く評価します。「学べば学ぶにつけ」内閣よりよほどましだったと思います。また、同様に国内でどう使うのかわからない新鋭重戦車について、「怒!高いおもちゃ」というエントリーをあげたこともあります。予算要求に陸・海のバランスを保つよう額を決めるという話もありますが、とんでもない話で、「たて」にならないような装備は、どんどん仕分けしてしまいましょう。

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アル政権の末期的な症状として、普遍的なものは開き直りである。この開き直り現象として更に共通しているのは、いまは改革途上である、その途上で評価する国民が悪いという論法で ... [続きを読む]

受信: 2011年2月28日 (月) 12時46分

» 二条河原落書からインターネット(1334年〜2011年) [逝きし世の面影]
鎌倉政権を運よく倒したのは良いが、半世紀以上続いた自民党政権を倒した今の民主党政権とそっくり同じで、新しい政治を担うお公家さんたちは政治のど素人で『建武の新政』の政治や社会は大混乱する。 新政府の政治運営を揶揄する、此比都ニハヤル物。夜討強盗謀綸旨などと書かれた『二条河原落書』 が1334年ごろ都に掲示されている。 『2011年このごろ都に流行るもの』 俄か政党まよい者、下克上する成出者。小沢神話を煽るもの。本分は離るる訴訟人、無罪見込も強制起訴する検察審査会。 言いがかり問責の無責任、即辞任... [続きを読む]

受信: 2011年2月28日 (月) 15時02分

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