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2011年2月24日 (木)

「たて」と「やり」 3

 近代戦で「やり」といえば、まっ先にくるのが核兵器です。核実験に成功しても、放射能のある危険物を手にすることはできるが、それだけでは核兵器といえません。起爆装置をつけた核弾頭を作りその運搬手段を持ってはじめて兵器になるのです。

 広島、長崎の運搬手段は爆撃機でしたが、今はもっぱらミサイルで勝負することになります。アメリカとロシアが核軍縮交渉をして合意したのは、大陸間弾道弾(ICBM)という長距離ミサイルとその弾頭です。アメリカはカナダ、ブラジルなど近接する国が中短距離核ミサイルを持たない限り、ICBM対策をすればいいのです。

 逆に、アメリカがICBMで優位を保っていれば世界中どこでも攻撃できます。これを「戦略核」といいますが、中・短距離用のミサイルを使うものを「戦術核」ということがあります。この核兵器は、ヨーロッパに配備されていますが、削減の方向にあるものの撤去はこれからの課題になっています。

 日本にとって厄介なのは、このミサイルです。北朝鮮には、日本が射程に入るノドンが200基もあるといいます。なお、念のため付け加えますがミサイルには核でなく、生物化学兵器その他大量破壊兵器など、なにを積んでもいいわけです。日本国内はもちろん、アメリカも戦術核を原子力潜水艦に積むなどの方法はありますが、現在は配備されていません。

 したがって方法は2つ、相手国が日本にミサイル攻撃をする原因をつくらないことと、飛んできたミサイルを途中で撃ち落とす(MD計画)ことしかありません。アメリカの「核の傘」というが、アメリカが北朝鮮の日本に向けた戦術ミサイルのために、大陸間弾道弾で先制攻撃をするなど、よほどのことがない限り考えられないでしょう。

 アメリカが冷戦さなかに力を入れてきたのは、ミサイルや情報などの近代兵器の開発競争で、第2次大戦までの地上戦に重きを置いた陸軍、巨砲・巨艦の海軍は後退しました。ソ連に勝てたのはその競争にソ連が追いつけなくなったからです。さらに、イラクでもアフガンでもアメリカの地上軍の犠牲はとめどもなく増え続け、反省点になっていると思われます。

 手で持つ「やり」ではなく、飛び道具で世界はすっかり狭くなったのです。各地に基地を分散しておく必要はありません。陸・海・空・海兵隊など各地に基地をおくより、できるだけ1か所にまとめて、総合力を瞬時に発揮できるようにした方が効果的で経済的なのです。

 パキスタンのタリバンを殲滅するといって、アメリカの某基地で家族と朝食をとったあと出勤した若い兵士が、ディスプレーの前で無人機から送られてくる画像をもとに、人影を見ると機銃の引き金を引くという、戦争が果てしなくゲームに近づいたのです。

 「米軍再編」といって、総合力を持つ基地を、太平洋からアジア各地・中東までにらみのきくグァムへ移転する計画がすでにあります。沖縄の海兵隊もその対象になっています。アメリカのロバート・ゲーツ国防長官は、講演の中でアフガン戦争やイラク戦争の例を引き、

 現在では、上陸作戦を実施する上で、現在の敵国が持つ、ミサイル類の陸上からの艦船攻撃能力を考えると、強襲揚陸艦による大規模な戦争は考え難い。その結果、「第二陸軍」としての海兵隊の兵員数は肥大化した反面、役割の独自性が薄れている。(我部政明「東アジアの中の日米安保」『普天間基地問題から何が見えてきたか』所載)

 と明言しています。こう見てくると「沖縄に基地を残してほしい」「辺野古に海兵隊が訓練できる新基地をつくってほしい」「核の傘は維持してほしい」などと言っているのは、アメリカではなく、日本の防衛・外交官僚の方ではないかと思えてしまうのです。

 鳩山前首相の、普天間移転先の日米合意で理由とした、海兵隊と抑止力の話は「方便」だったという暴露は、まさに「真相をさらけだしたな」という感じでした。グァムに基地を集約したいアメリカにとって、沖縄にとどまってくださいというのは、相手に迷惑だと思うのですが、アメリカが前政権と決めた辺野古移転を頑として譲らないのは、それなりのメリットがあるからだと思われます。

 まず、グァム移転には相当の費用がかかるが、リーマンショックなどが重なって軍事予算の削減が厳しい。日本側から防衛についていろいろ注文がでているのをいいことに、これを最大限に利用しよう、ということです。

 直接的には、グァム移転費の肩代わり追加、思いやり予算の増額と、住み心地のいい新基地の無償提供などです。また、日本側が「抑止力」というなら、なにもわざわざ否定することはない。米国内のタカ派にも通りがいいし、他国がそう思うなら、それで実害はない。

 それよりも、世界でアメリカ一国主義が崩れ去り、エジプト革命のようにアメリカの盟友がどんどんはなれていきかねない昨今の情勢から、無理が利いて愛玩犬のようについてはなれない同盟国があることは、孤立感をいやすうえでかけがえのない支えとなります。鳩山前首相のいうように、アメリカにとって沖縄基地の存在は、当面は「パラダイス」なのでしょう。

 その程度の外交力と、度重なる首相の交代で足元を見られているのが日本です。それが、尖閣諸島沖漁船衝突事件の中国の強硬策や、北方4島へのロシアの態度変更につながったと言えましょう。ついでに、尖閣列島事件以来公然と起こってきた「中国脅威論」に触れておかなくてはなりません。

 中国が海軍力を飛躍的に向上させ、琉球列島を抜けて太平洋側まで潜水艦などを進出させるようになった、などと、まるでアメリカとの覇権争いが今すぐにでも起きそうな議論が支配的です。また的確な情報がないため、依然として前の民進党政権当時の台湾は独立志向、中国は武力制圧といった、台湾海峡問題が存在すると思っている人がすくなくないことです。

 2008年に国民党の馬英九政権ができて、中台は現在の体制を急変させることなく、双方ともに最大の利益を追求する新方針に変えました。いわゆる三通政策で人・情報の往来が大幅に自由化され、オリンピック・万博・台湾観光など、双方に大きなメリットがでてきています。

 香港の一国二制度も試行期間を過ぎ、大きな波乱はありません。現在台湾では、本土との友好関係を高め、双方の距離を縮めることに反対する意見が少数派になったようです。最近、地方選で民進党の優位が目立つようですが、以前のような独立を前面に出す政策は修正されています。

 日本の産経新聞などは、中国の邪悪な陰謀だとか、馬英九は島民を中国に売ったなどと、さかんにおせっかいを焼いていますが、台湾の大多数の人の気持ちではないでしょう。仮にこのまま平和統一に向かうとすれば、気に入らない人はいるでしょうが、米国がかねて主張していたことでもあり、日本としても反対する理由がありません。

 そうなれば、中国の軍艦が太平洋側にでるのは当然で、誰も異論を唱える理屈がなくなるわけです。アメリカは、そこまで読んで米中関係をすすめていると思います。ただ悲しいかな、アメリカのポチが気がついていないだけなのです

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【 講師 】評論家・副島国家戦略研究所主宰 副島 隆彦 先生

【 演題 】『 民の自覚が生まれつつある世界各国の政治 』

どなたでもご参加いただけます。ご希望の方は お申込みフォーム より送信してください。追って案内を送らせていただきます。

投稿: ASA-YASU | 2011年2月25日 (金) 10時18分

ASA-YASU さま
 ご案内ありがとうございました。

 国際的な目を養う……、これがすべての出発点だと思います。特に若い人、海外に出なくても勉強できます。成功してほしいですね。

投稿: ましま | 2011年2月25日 (金) 12時41分

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