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2011年1月27日 (木)

当塾採録のテーマと論壇

 自分の書いたことがどこまで正しいか、間違っていないかということは、日頃たえず気になるものである。したがって、関連のありそうな新聞記事は、すぐ目に飛び込むし、旅行の途中現地取材を省いたところへは、回り道をしてもできるだけ寄るようにしている。

 記述が正しかったと思えば、ひとり自己満足にひたり、疑問があれば言い訳か、別のところで訂正かを考えたりする。幸いにしてこれまで大失敗というほどのものはなかった。

 たまたま、今日の新聞の論壇時評を見ていたら、ウィキリークスで外交秘密資料を暴露したアサンジとアナーキズムというテーマで評論家・佐藤優が執筆し、また「中国・辛亥革命と日本人の100年」と題する、孫文と日本人の描いたアジア主義についての特集が、いずれも『中央公論』2月号にあることを知った。

 孫文に関しては、前々回の「菅首相の歴史認識」に書いたばかりであり、ウィキーリークス問題は、最初の報道があったばかりの頃、「これはもうアナーキズムだ」と題する記事を掲げた。アナーキズムについてことさら研究をしたことはないし、当時そういう論調もなかったことから、「やや、説明不足かな」という気がしないでもなかった。

 佐藤は、アサンジの発言や声明から、日本のマスメディアや有識者がWL(ウィキーリークス)を企業や官庁における内部告発の延長線上でとらえているが、それは間違いで、確固とした思想に基づく政治運動である、と断じている。

 アナーキズムを日本では「無政府主義」と訳しているが、自らをアナキストと規定する人はまずいない。国家の強権やシステムに抵抗はするものの、その前に「自由人」であること第一義とするからである。また、これまでも語感からして必ずしもいい意味ではとらえられていなかった。

 アサンジ自身もそうは言っていないが、佐藤は「19世紀フランスのプルードン、ロシアのバクーニンやクロポトキンなどのアナーキズムときわめて親和的だ」としている。そして、

 どの時代にもアナキストはいる。普段、アナキストの政治や社会ん与える影響は限定的だが、戦争が近づいたり、国家が社会に対する強権的姿勢を強めると、アナキストの活動を普通の人々が積極的に支持しないとしても、消極的に支持、もしくは容認するようになる。

といい、現在の国際情勢の不安さと国家の社会に対する管理・監視体制強化が民衆の不満を蓄積させ、特にヨーロッパ(ロシアを含む)では、伝統的にアナキズムが社会の一部に根付いていることから、力によってWLを封じ込めようとすると、WLに対する社会的支持が拡大するという逆の効果をもたらすと警告している。

 もうひとつの、孫文と日中関係の方だが、拙記事については、dendrodium の和久さまから「大変参考になった」と丁寧な紹介をしていただいた。それにしては甚だ不十分なもので、気にしていた。

 『中央公論』の特集は、松本健一内閣官房参与・麗澤大学教授の総論に始まり、「革命を支援した日本人たち」10人の紹介、革命当事者の人物評、「支那革命の真相」など38ページにわたる膨大かつ詳細なものである。

 とても全部は紹介しきれないが、拙ブログが結論とした、当時の一部日本人の孫文支持とは裏腹に、歴史の結末は孫文の抱いた理想から遠く離れた日本軍の大陸侵略という結果を招いたこと、またそれに触れることなく、日中友好の証とすることの不条理について、更めて訂正する必要がないという確信を持てた。いずれにしても企画は時宜を得たものといえよう。

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コメント

TB有難うございます。
いつもこちらのブログ、歴史的記述など特に興味深く読ませていただいています。
私は無学な上におっちょこちょいで、先日も記事のタイトルを、マインドをマイルドと書き間違えていることにも気がつかないまま、あちこちにTBしていたのでした。

こんな私で恥ずかしいのですが、
ご指導の程よろしくお願い申し上げます。
これからも貴ブログの更新楽しみにしています。

投稿: 和久希世 | 2011年1月28日 (金) 10時31分

『ウィキリークス外交秘密資料を暴露』に関連する少し面白い話ですが、キューバの首都にあるアメリカの利益代表部内の政府機関から流失した機密情報との触れ込みで、
『キューバ政府がムーアの映画を上映禁止』している、理由はキューバでは賄賂が無いと医療が受けられないのでムーアの映画の内容を知ると国民が怒るというものです。
上映禁止の話はウィキペディのマイケル・ムーアの項目や一時は右翼系の政治ブログでも転載されていたのです。

投稿: 宗純 | 2011年1月28日 (金) 17時15分

その後ウィキリークスソ創始者のジリアン自身がツイッターで『キューバでマイケル・ムーアの映画『シッコ』が上映禁止になった』は米国務省は流していたニセ情報であると書きこむ。
映画は健康保険の無いアメリカを批判的に描いているので皆保険のキューバでは当たり前ですが大歓迎。
唯一の覇権国アメリカですが忙しい。
イラクやアフガンに対する正面からの『大技』だけでなく裏に回った『小技』も小まめに色々行っている様です。

投稿: 宗純 | 2011年1月28日 (金) 17時19分

和久希世 さま
 ブログでは私もよく間違えます。ロードするまで3~4回読み返すのですがそれでも防げません。一冊の本の出版にはすくなくとも3人が複数回以上校正しますが、1万語に一つはミスが出るといいます。

 歴史も読んで知るのと、体で知るのの併用が一番身につきますね。これからもよろしく。

投稿: ましま | 2011年1月28日 (金) 20時06分

宗純 さま

おもしろい話をありがとうございます。

ウィキリークスの口座凍結をした金融機関に猛烈なサイバー攻撃がかかり、当局はそれを必至で摘発しようとしているらしいが、民衆の支持をさえぎれない現象が、今後ますます出てきそうですね。

アナーキズム全盛も褒めたこととは言えませんが…。

投稿: ましま | 2011年1月28日 (金) 20時18分

Wikileaksの情報流出ですが、08年イラクのロイター記者など多数の一般市民が米軍へりに殺された銃撃事件をすっぱ抜いて一躍有名になったが、この情報は『誰も知らないニュース』ではなくて、実は撃たれた側のバクダッド市民の方はみんなが知っていたのです。
『北朝鮮崩壊は近い』も韓国政府高官が喋った内容で、旧軍事政権の流れを汲むハンナラ党の現政権の『北朝鮮はもう直ぐ倒れる』との何の根拠も無い無責任な主張(願望)は韓国の国内では誰でも知っている。
今まで流出したものは『機密』ではなくて、今までみんなが知っていたことだけ。
本当にアメリカが知られては困ることが一つの出て来ない。
ムーアの『シッコ』のキューバ国内上映禁止の報道も、ハバナのアメリカ政府機関資料からの『流出』自体は事実の様ですよ。
大騒ぎになりかけたので(信憑性を無くすので)慌てて抑えにかかったのかも知れない。
タモ神さんのソ連の情報機関からの機密情報だから間違いないとの『張作霖爆殺犯はソ連』と同じで『いくら何でもそれはないでしょう』的な話なのですね。
ですから無政府主義など何かの過激運動ではなくて、その正反対の可能性も有りそうなのです。

投稿: 宗純 | 2011年1月29日 (土) 16時48分

宗純 さま
 兄から発信されたコメント、28日から29日にかけて26通もスパム扱いの箱に入っていました。TBが相手に届かないということは私もよく経験しますがコメントでは体験したことがありません。

 どれがいいのかわかりませんが、日付の最初にあるのを復活させておきました。原因を究明したいのですが私の能力では??です。

 なお、私がアナキズムといったのは、彼の言い分についていったので、彼が公表をコントロール(これも周知の事実)している理由ついては、「不明」というしかありません。

投稿: ましま | 2011年1月30日 (日) 10時02分

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