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2011年1月18日 (火)

あなたにとって国とは?

 どんな答えになりますか?。①税金、②日の丸、③国会、④総理大臣、⑤年金、⑥旅券……。日頃あまり考えたことがないせいか、とりとめない空気のような答えになってしまいますね。

 戦中なら「天皇陛下」という答えが多かったかも知れません。男の子は命をささげる対象が国でした。江戸時代なら、「お上」といって、幕藩体制の中でのお役人とそのトップ、将軍になるでしょう。日本人は、極東の島国に住み外国から侵略を受けたこともなく、「国とは何か」を真剣に考える機会が少なかったようです。

 この点、ヨーロッパは違います。同じ土地に多くの民族が大移動で出たり入ったり、支配者が宗教の違いや領主や王族間の争いで変わり、そのたびに農民や庶民が大きな被害をこうむります。

 イギリスの哲学者・トマス・ホップズは、日本でいえば秀吉の天下から徳川初期の時代に生を受けた人です。その人は「リヴァイアサン」こそ国家である、と定義づけました。リヴァイアサンとは、キリスト教の「ヨブ記」四十一章にある卓絶した力を持つ伝説上の怪獣です。

 リヴァイアサンは、誇り高い地上の王である一方、それは、ワニのような、蛇のような、あるいは鯨のような巨大な怪物だが、その力で人間を守ってくれるなら便利な存在だ、としました。リヴァイアサンなくして、平和もなく、人間の存在もないと考えたのです。

 日本のように、気がついたらそこに国があった、というのとは違うわけです。ホップズ自身も危険を感じて、生まれ故郷を何度も離れています。宗教も、民族も、王侯も平和を保障するものではなかったのです。それからの3世紀余は、ヨーロッパ各地で国家をつくることに狂奔する時代になります。

 国とは「政治で」す。人々と権力者の「契約」です。それは「法」のもとで力を発揮します。こうして議会が生まれ、立憲君主国が生まれ、共和国も生まれます。これで国民の安全が図られるようになる一方、怪獣ですから警戒を怠るととんでもない害をもたらしかねないこともありうるのです。 ここで時代は、200数十年あとの1919年まで飛びます。第一次世界大戦でドイツが破れ、パリ条約が結ばれた年です。ミュンヘンのある講演会で、ドイツの経済学者・社会学者で志願兵の経験もあるマックス・ウェーバーが言いました。そうです、解職された仙石前官房長官の「暴力装置」発言に関係があるからです。

 過去においては、氏族を始めとする多様多種な団体が、物理的暴力をまったくノーマルな手段として認めていた。ところが今日では、次のように言わねばなるまい。

 国家とは、ある一定の領域の内部で――この「領域」という点が特徴なのだが――正当な物理的暴力行使の独占を(実効的に)要求する人間共同体である、と。国家以外のすべての団体や個人に対しては、国家の側で許容した範囲内でしか、物理的暴力行使の権利が認められないということ、つまり国家が暴力行使への「権利」の唯一の源泉と見なされているということ、これは確かに現代に特有な現象である。

 言わんとしていることは、お判りでしょう。「暴力」の原語は、ゲバルトらしいのですが、かつて過激派の使った「内ゲバ」し同じです。武器・装備を持ち、一般にはない実力を有する組織を作り、それを認める権利は、国だけにしかない、またそれがなければ「国」の態をなさない、ということです。

 日本では、自衛隊に限らず広い意味で警察、海上保安庁も入るでしょう。つまり、国民の安全・平穏な生活を保つため必要不可欠の国家装置ということです。「暴力装置」は決して侮辱した言葉ではないのです。

 逆説的になりますが、ヨーロッパでは、何世紀にもわたって国と平和、そして民衆の在り方を考え続けてきた結果が、EUというより広範な「領域」を生み出したのではないでしょうか。

(参考文献:長井道雄『歴史と国家』中公叢書、マックス・ヴェーバー『職業としての政治』岩波文庫ほか)

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コメント

真島様

 貴方様の指した、暴力装置と言う点で最も性質が悪いのは警察であり、女子層のうちでこれを悪用したりする輩が居たりするために益々始末が悪くなったりします。法的システム(「ローシステム」とも言うでしょうが)の欠陥もありましょうが、警察に魂を売ったりする女子は「悪女」と言うよりなく(そういう輩ほどに特権意識が高く、利己的・保身的で「さもしい」)、「丸坊主と裸褌」の姿にして市中引き回しにした上で刑務所送りにすべきものがあります。あるいは、女子にのみ、再教育と言う意味合いで強制的に兵役に就かせるべきとなりましょう。
 女子だけに限らず、犯罪被害者も断罪されるべきものがあり、国家権力に報復の代行をしてもらうのは「甘え」であり、武士道に反するものがあり、万死に値するものがあります。


 精神論と感情論でものを言うような形となりましたが、法治体制も扱い方を間違えれば、庶民全員が惰弱化して、官僚帝国の打倒も絶望的となるだけです。


 性懲りも無く、生意気なことを申しましたが、御容赦願いたく…。

投稿: 白田川 一 | 2011年1月24日 (月) 18時32分

なにか特定の事案で被害を受けておられるのでしょうか。できれば、特定の女性・警察官なのか、そうでなくそれらすべての属性なのかを区別していただかないと混乱します。

大阪地検で起きたようなことも、法のシステムの欠陥が悪用された落とし穴ですね。

投稿: ましま | 2011年1月24日 (月) 19時45分

 別に冤罪とされかけたり…という被害を受けたわけではありませんが、1999年以来、大都市圏にて無実の男性が女子の身勝手な訴えで性犯罪者に仕立てられていく事例が発生するたびに、「同胞がはめられた」という感情となって女子層と警察に対して激しい報復・断罪感情が燃え上がったりすることがあるのです。これよりも更に昔にさかのぼること1972年頃に吉田拓郎氏が性犯罪冤罪となったりしましたが、これもそもそもは団塊世代の女子らにこそ過失責任を問うべきものがあり、女子全員から年金受給資格と選挙権(と言うよりは、投票行使権というのが妥当)を剥奪したり懲罰的に兵役につかせたりしないと溜飲が下がりそうも無いのです。
貴方様とて、女子風情によってでっち上げされたら憤慨に堪えないはずです。


 昔あった江田島流の鉄拳教育を、女子にこそ叩き込むべきです。でないと、援助交際や性犯罪でっち上げとかいった卑劣なる行為を防ぐ事など叶うはずも無いでしょう。また、男女問わず、「男=狼」という歪んだ悪しき公式を抱く輩をどんどん制裁食らわすべきです(流血とまで行かなくとも、年金受給資格と選挙権をそれぞれ剥奪)。

投稿: 白田川 一 | 2011年1月24日 (月) 23時32分

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 ひつこいけれど,もう一度,暴力について書いてみる. 「暴力」とは非合法なものであり,社会的に容認されないものという一般的イメージがある.そういう言葉であるから,自衛隊... [続きを読む]

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