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2010年12月 6日 (月)

これはもうアナキズムだ

 加藤陽子東大教授が、現今の時世は、5.15事件や満州事変の起きた1930年代にそっくりだ、という声があることを新聞で紹介していた。尖閣諸島漁船衝突問題のビデオ流出問題や、東アジアの緊張、経済危機、政治不信そういったもろもろの背景からくるものだろう。

 そこに飛び込んできたのがウィキーリークスである。秘密暴露の量・質は日本の比ではなく、世界の警察官を自称していたアメリカが火元で、しかもこの先まだ続きそうだということである。個人的色彩が強いとはいえ、反権力・反国家思想が各国をゆるがしているとあれば、これはもう、1930年どころか19世紀末までさかのぼらなければならない。アナキズムの再来である。

 日常的に戦争の危機にさらされ続けてきた欧州で、国家のありよう、存続価値が原点にもどって議論され、さまざまな抵抗運動が続発した。その中で帝政ロシアが崩壊し、共産党政権が目を見るに至った。仙石官房長官の発言した「暴力装置」も、その頃議論の中でできた言葉であり、右とか左とかには関係がない。何が問責の理由なのかさっぱりわからない。

 「国家が情報を独占するのは許せない」というのはアナキズムだ。アメリカは、そもそも銃や、州兵の存在、経済活動の自由、小さな政府など、アナキズムと共通な底流を持つ、右側の代表格・バタリアニズムの本場と考えていい国である。

 日本では、アナキズムの立場に立つ高名な思想家がいたが、「無政府主義」と訳され、天皇の存在を否定する不逞の輩とされた。死刑になったり虐殺されたりしたのは、共産党の弾圧以前のことである。またロシア革命では、アナキストがマルクスと激しく対立していたので、日本でもさかんな議論の対象となっていた。

 結局、マルクスの「国家社会主義」が権力を握り、アナキストを追放したため、他の国でも次第に勢いを失った。塾頭がその言葉を知った頃は、「歴史上あった思想」、同じ「アナ」でもアナクロニズム(時代錯誤)に通ずる蔑称に過ぎないという印象だった。

 それが、突然息を吹き返したのだ。21世紀の今になり、19世紀末と同じように世界に新しい価値観を求める模索が始まっている。この際、勉強のために当時はやった思潮にメスをいれ、20世紀を反省してみるのもいいのではないか。

 

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