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2010年12月25日 (土)

民主の外交勉強会

 民主党政権が誕生する直前、約2年がかりで、党中堅議員に日本の現近代史を講義した先生がいる。松本健一さんといい、歴史家であり評論家であり、小説家でもあるという多彩な顔を持つ麗沢大学教授で、現在は内閣官房参与をつとめている。

 講義を主催したのは、長い付き合いのあった仙石由人現官房長官で、中心メンバーが、枝野幸男、前原誠司、細野豪志、福山哲郎、小川純也、笹木竜三、若手で松浦大悟、さらに古川元久、足立信也、鈴木寛、松本剛明、蓮舫、小宮山洋子議員などが加わり、総勢30人ほどであった。

 顔ぶれは凌雲会つまり前原グループが中心で、講義内容がそのまま政策に反映しているとは思えないが、現在の外交政策の中枢をになうメンバーが含まれており、関心の持たれるところである。幸い、講師がその一部をまとめ、『日本のナショナリズム』(ちくま書房)として刊行されているので読んでみた。

 当塾は、過去にシリーズとして「朝鮮・韓国」1~23、「日中関係史考」1~12(カテゴリの「INDEX」からリンクできます)およびカテゴリの「東アジア共同体」を設け、「反戦」の立場からの考察を記事にしてきた。

 そこでまず驚いたのは、日本が中国に対する侵略的意図をあらわにし、中国の反日感情を決定的なものにしたのは、第1次世界大戦後の「対支21か条要求」からで、そこに歴史の転換を見る、という点と、日中の解きがたい対立は、将来EUを参考にした共同体(経済ブロックを超えた)を考えるべきだという点が、当塾の考えとほぼ一致していたことである。

 明治維新後の「富国強兵」や日清戦争は、帝国主義的侵略を目的としたものではなく、むしろそういった列強の侵略から身を守る必死の努力という面があった。また、ことさら統帥権とか天皇とナショナリズムを結びつけるような世相はなかった。

 こういった考えは、明治維新以降太平洋戦争に至るまでを一体化し、帝国主義への道程と見るマルクス主義史学とは違うし、もちろん戦争を美化しようとする歴史修正主義とは相いれない。松本氏は、対支21か条要求を中国に突きつけたのは、大隈重信内閣のポピュリズムだったとした。

 それが、外交関係を損ねる原因の大きな要素となった。ポピュリズム第2の失政が、シナ事変の収拾がつかず「国民政府を相手とせず」と宣言をして和平の道を閉ざした近衛文麿内閣、そして、第3のポピュリストを小泉元首相と位置付けた。

 目が国内の国民の方だけ向いていて、とどのつまり国民が喝采するようなイシューしか出さない。対外関係でいえば、外に敵をつくってこれを叩くというかたちにすれば、必ず国内はまとまるのである。

 わたしはこの戦略をむ「ハンチントンの罠」と呼んでいるが、これは国際政治学者のハンチントンが『文明の衝突』で述べていた論理で、国の中を一つにまとめるには外に敵をつくってそれを叩けばよい、という考え方である。

 まさにポピュリストがやる外交がこれで、ブッシュ大統領の対テロ戦争の戦略や、それに追随した小泉元首相の対外政策もこれと同じであった。(前掲書)

 小泉元首相を、大隈、近衛両首相と並び称すことにはやや違和感があるが、松本氏はこれまでバイプレーヤー的な扱いをされてきた大川周明や北一輝などの右翼、また、孤立を恐れず反軍演説をして除名された斉藤隆夫議員を取り上げ、ユニークな分析をしている。

 詳しく書く余裕はないが、それらの人々の中にあるアジア主義や、天皇機関説を肯定的にとらえた考え方を紹介した。そういったことで、この講義を聞いた民主党の要職をしめている人が、近現代史の知識もなく人種差別意識を持ったり、偏狭なナショナリズムに親しんだりすることは、あり得ないものと信じている。

  

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