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2010年11月21日 (日)

「暴力装置」

 先週18日の木曜日、「痴耳(オクミミ)」と題して、明治の文明開化の世相を記事にした。その作業中に、仙石官房長官が国会答弁の中で「自衛隊も暴力装置……」という文言をとらえられ、質問者や野党議員の猛反発で発言を撤回、謝罪したというニュースを知った。

 それに対して、その言葉はドイツの社会学者、マックス・ウェーバーにより定義された一種の学術用語で、それを暴言・失言ととらえるのは抗議をする方の無知である、と指摘しておいた。さらに柳田法務大臣の不用意発言などがからんで、このところ菅内閣が危機に瀕している。

 前述の記事以降、公開日時を翌日にした写真をのせたまま外泊し、パソコンにご無沙汰していた。その間、今日日曜日になってもマスメディアは、失言と位置付けたままで、仙石長官の発言の意図を解説しようとするところが、私の知る限りではなかった。

 自衛隊を「暴力装置」という位置づけで発言している前例に、石破元防衛庁長官があることに触れたマスコミはあるようだが、その意味するところまで深入りしていないようだ。これについては、高名な政治ブログ「kojitakenの日記」で豊富な情報を載せている。

 しかし、圧倒的な世論誘導の前には為すすべがない。民主党内閣が窮地に追い込まれているのは、仙石長官が「不本意ながら発言を撤回」――これについては、その前のエントリー「偽悪者・仙石長官」に「首相の泥をかぶる」彼の姿勢として書いておいた――したことである。

 それにもかかわらず、その撤回と謝罪をなぞっただけで何の弁護もしない菅首相に全責任がある。失言ではない。撤回などせず、その抗議が誤解によるものであることを指摘し、正々堂々と議論すべきであった。なぜならば、「暴力装置」の意味するところは、民主主義国家の根幹をなす文民統制の由来を語るうえで、重要なキーワードであるからである。

 それを議論し、国民に深くアピールする機会をむざむざと放棄したのである。下手に撤回してしまったので、マスコミも議論の俎上にのせることをためらってしまった。たしかに、「暴力」という日本語は聞こえが悪い。「暴力団」「暴力バー」「暴行」などロクなものがない、私自身、かねてそう思っていた。

 この用語を変えるならあとで、石破さんや仙石さん、前原さんなどが相談して決めればいい。しかし、今や手遅れになった。指導力を疑われ、力強さに欠け、首脳会談でメモを読み上げる首相の力量では、所詮無理な注文なのであろうか。

 期待した民主党に、鳩山首相で裏切られ、また菅首相の期待が外れ、日本国民は三度政治の泥に足をすくわそうになっている。世界の嘲笑を浴び、ファシズムを頼りにする地獄を再び見なくてはならなようなことは、どうしても避けなくてはならない。ここは、先輩の模倣ではない若い力に夢を託すしかないのだろうか。

「暴力装置」の詳細はこちらをご覧ください。

http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-c54d.html

追記

 11/22朝、「柳田大臣辞任の意向」というニュース・テロップがTVに流れた。多分菅総理は「やむを得ない」として了承するのだろう。しかし、これは首相のこれまでの言明、および柳田氏本人の意向とは異なる。

 首相は、また「有言実行」が中身のないことであることを露呈することになる。こういった迷走ぶりが「市民運動型民主主義」の発想から来るものならのなら、やはり、首相の器ではないといわざるを得ない。それでもなお、「石にかじりついて」でも、政権を維持してほしい。

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コメント

仙石は軍隊を概念的に言ったのではなく、自衛隊を名指しで、しかも国会で言ったから批判されているんですよ。

>「暴力」という日本語は聞こえが悪い。「暴力団」「暴力バー」「暴行」などロクなものがない、

彼はそれが分かっていて、だからこそ嫌いな自衛隊に使ったんでしょう。
アホな左寄りの人がやりそうなことです。

>期待した民主党に、

あんな政党に期待する方がおかしい。
僕は、ここまでひどくなるとは思っていなかったけど、日本は大変なことになるだろうとは思っていましたよ。
民主党に期待して票を入れた人は、現在の日本の政治の混迷の責任の一端を担っています。
深く反省し、二度と、政権担当能力の無いキレイごとを言うだけの政党には投票しないようにすべきです。

投稿: makoto | 2010年11月21日 (日) 17時57分

 「暴力装置」ということば本当にしばらくぶりに耳にしました。なつかしい……。
 仙石官房長官は、ウェーバーというより、おそらくはレーニンの文脈で口にしたような気がしますね。
しかし、安易に訂正などして欲しくはなかったということについては、同感です。
 「暴力装置」という言葉は、確かに国軍や自衛隊の一面を言い当てています。自衛隊の前身が朝鮮戦争に際して創設された警察予備隊であったことを考えれば、議論を待たないでしょう。災害救助などで国民に奉仕する姿は、自衛隊の全部ではなく、一部なのですから……。
 むしろ、われわれは自衛隊にそういった側面があるのだということを肝に銘じつつ、自衛隊とつきあい、制御する必要があるのだと思います。

投稿: 平泉澄 | 2010年11月22日 (月) 00時29分

夜学で大学に通っていた頃、マル経全盛でした。社会科学、論理など得たものは少なくありません。しかし、資本論もレーニンも、すでに社会人だったせいか「ギャーテイギャーテイハラギャーテイ」程度にしか聞こえませんでした。

新左翼となるとさらにわからなく、×派、○同などと言われてても区別がつかず、本を買ってきたほどです。ただ、内ゲバや通勤の妨害をする輩を軽蔑していました。

「暴力装置」も定かではありませんが意識し始めたのは「反戦塾」開始以降です。だから、平泉さまの仙石発言評価は、質問、応答など全体を見ても、「文民統制」がらみ、つまり後者だと感じています。

 ウェーバーは、レーニンより6つ年上でレーニンより4年早くなくなった。同じドイツ語を使ったとすれば、それを区別する意味はないかもしれませんね。

投稿: ましま | 2010年11月22日 (月) 10時15分

思想に基づいて云々する人がおられますが軍隊、警察、消防など普段は危害目的でなく必要に応じて制圧する為の道具を持って又、それを行使するための権力を有する諸団体を暴力装置というのは何の問題も無い
そして、暴力で有るからこそ抑止が働くのである
今の日本は平和であるから暴力団だけを想起するから可笑しな考えになるだけだ 暴力の根源の意味を考えてください
凶器という言葉もそうでしょう、包丁、果物ナイフ、バットなども普段は凶器とは言わないが危害を加える道具になれば凶器となります。 それと同じである

投稿: tontyannnm | 2010年11月23日 (火) 22時56分

 tontyannnm さま
当たり前だと思っていたことが当たり前でなく議論されていることが、意外でした。また「レーニン」といっただけで悪者扱いにする風潮にも驚きました。

スターリンはともかく、レーニンの偉大さは歴史から消えません。本当は、任務に忠実な自衛隊員なら「暴力装置」と言われて、誇りに思ってもいいと思っていたのですが……。

投稿: ましま | 2010年11月24日 (水) 09時26分

宗純 さま
 まったく会ったことも見たこともない人に対する誹謗中傷ならびに本ブログの趣旨に関係のない内容と認め、コメントから削除させていただきます。あしからず。

投稿: ましま | 2010年12月 3日 (金) 11時01分

『まったく会ったことも見たこともない人に対する誹謗中傷』は削除とのお言葉ですが、政治ブログで『まったく会ったことも見たこともない人に対する』誹謗中傷(悪口を言う)を禁止したら、政府など公的機関が出す何とか白書の紹介程度しか書くことが無くなりますよ。
私が指摘した事実には少しの誇張も歪曲もありません。現実に起きている事実を述べたにすぎません。
また、『本ブログの趣旨に関係のない内容』とのことですが一番大事なメインの主張とか関係が薄いだけであり『ブログに書いてある記載内容』には関係しています。
不愉快な事実は誰でも知りたくないし関係したくない心情は理解している心算ではあるのですが、なんとも残念なことです。

投稿: 宗純 | 2010年12月 4日 (土) 09時52分

宗純 さま
コメントありがとうございました。
「見ず知らず」の人にはこういう意味があります。
私は、「公式」というとおこがましいですが、実名でブログを書いています。したがって、議論はするものの、匿名の人のプライバシーに立ちいったり、自らの発言の自由をしばったりするようなことのないよう、自分なりのマナー(自主規制)を課しています。
その点、ブログ界の通念に合わないことがあると思いますが、ご理解くださるようお願いします。

投稿: ましま | 2010年12月 4日 (土) 19時47分

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『ネットウヨ化する自民党議員』 仙石官房長官が国会答弁で『自衛隊は暴力装置』と発言、批判を浴びてすぐに訂正したが、この『自衛隊は暴力装置』という言葉自体は社会科学用語としてまったく正しいので、基本的に訂正したことが間違いです。 警察や軍隊のような組織を指して『暴力装置』という言葉が、一部左翼や護憲派の用語(隠語)ではなくて正式な学術・科学用語として定着している。 この事実は政治や社会学では常識であり、護憲派でも左翼でも無い石破元防衛大臣も過去にまったく同じ意味で『自衛隊は暴力装置である』と語っ... [続きを読む]

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