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2010年11月 4日 (木)

世界の軍国主義国

 塾頭は「軍国日本」に生を受けた。当時、「軍国」であることを恥じらう人はなく、息子をけなげに戦地に送りだす婦人を「軍国の母」といって励ました。そしてありえなかった敗戦、肉親の死、飢餓、財産の喪失そして屈辱、それらは議会も内閣も財界も情報も教育も、果ては天皇さえも牛耳ってしまった軍部――、軍国のなせるわざだと思った。

 世界広しといえど、今どき軍国を売り物にしているのは、北朝鮮しかない。「先軍主義」といい、手を振らずピョコンピョコンとケツを上げるあの一糸乱れぬ軍人パレードを、恥ずかしげもなく世界中に振りまいている。

 あとふたつ、かくれ軍国主義国にアメリカと中国がある。当塾では、かねてそれとはなしに触れてきたことで、「仮想敵国には朝鮮のほか米中両国を」などと書いたこともある。
 
 ところが今日の毎日新聞(11/4東京判)には、別々の記事で露骨にそう書いてある。こういった側面を明らかにすることは、マスコミにとって重要なことで、産経であろうが赤旗であろうがそれは同じであろう。

 簡単に紹介しておこう。ひとつが「発信箱」というコラムで、筆者は論説室の布施広氏である。

 米国在勤時、知人から「この国は軍国主義的民主主義と考えると分かりやすい」と助言された。もちろん軍国主義とは違うのだが、軍事力こそ米国を世界一たらしめる源泉、崇高な理想を実現する手段、と考えているのは確かだろう。日本にはない感覚だ。(以下略)

 
 塾頭の想像を加えると、アメリカ大陸には、イギリス、ドイツ、フランス、スペインなど欧州各地からの開拓者、さらには奴隷としてのアフリカ人など、多くの人種や異なる宗教の人々がやってきた。

 それらの人々が遭遇したのが独立戦争、南北戦争、先住民との抗争などである。そこから、銃こそ自由と発展と生存を保証するかけがいのないものだという思想を生んだ。また、ヨーロッパ各国より大きな力を得るためには、一つの国としての団結が必要だった。州の数だけ星を並べた星条旗はその象徴である。

 多様な人種が集まり、また大富豪から底辺の階層まで格段の差もある。しかし、最下層にいる人であろうとも、アメリカン・ドリームを信頼し、「世界一」の国民であることに誇りを持つことが、軍国主義的側面を支えているのであろう。

 もう一つは、金子秀敏専門編集委員担当のコラム「木語」にある「危うし温家宝首相」である。先月29日にセットされていたベトナム・ハノイの日中首脳会談のドタキャンや、その直後の10分間懇談など、最近相次ぐ温家宝氏周辺の混乱ぶりをウオッチしている。

 別の報道記事では、このキャンセルが温家宝の秘書役の猛反対によるものらしいことを書いている。この秘書役は中南海(中国共産党指導部)との連絡役で、中国の楊外相を上回る実力者に位置付けられ、会談をセットした外相は、秘書役を説得できなかったという情報もあるようだ。

 また、10分間懇談で、温首相は菅首相に対し「外交について対外的な表明をするときは慎重に行うべきだ。民意は非常にもろいものだ」と言ったとされ、馬脚といっては悪いが、強硬姿勢が中国内部の問題に起因していることが浮き彫りになってきた。

 金子氏のコラムに戻るが、中国共産党機関紙「人民日報」の記事に掲載された論文のタイトル「正しい政治の方向に沿い、積極穏健に政治体制改革を推進せよ」を取り上げ、中国人が眼光紙背に徹いて読むと、「政治の正しい方向」とは、硬直した社会主義のことで、「改革を積極穏健に推進する」とは、改革をやらないのと同義語だと解説した。

 そして香港の新聞は、これを温家宝が政治改革(党幹部の特権廃止や汚職追放などの改革を意味するといわれる)が急務だ、とする呼びかけへの温首相批判、と読んでいることも紹介した。

 さらに、「温首相の政治改革を批判する背後の勢力は軍ではないのか。そうは書かないが、読者にはそう伝わるのである」としめくくっている。新聞が書いたとはいえ、これは憶測である。しかしこれでは、まるで暗号だらけの国だ。

 塾頭は、共産党の一党支配をかつて中国を支配した「帝王」に当てはめてみた。そしてこの帝王の正体は、革命前夜の党の軍隊八路軍、さらに蒋介石の国民政府軍との死に物狂いの戦闘で成り立った「中国共産党」そのものである。軍がなければ党がなく、党がなければ国もない、というのが軍国主義中国のバックボーンである。そう考えれば、納得できそうな線である。

【関連エントリー】
「アメリカ人の性格」
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-b06b.html

「日中関係構築の好機」
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/post-f578.html

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