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2010年10月13日 (水)

衣食足りて礼節を知る

 9月7日、中国漁船が海上保安庁の巡視船と衝突し、中国側の強硬姿勢が鮮明化した先月下旬以降、その関連のエントリーを9本も続けてしまった。ということは、今回も中国ネタである。

 その間に塾頭の考えも微妙に変わっているかも知れないし、今後も断片的に続くかも知れない。そこで、読み返す便宜のため、これらをカテゴリの「東アジア共同体」にすべてまとめた。最初が9月20日で、以後ほとんど連続している。

 前々回の9日に書いたことだが、中国民衆は高度成長により、「衣食足りて礼節を知る」になるのか、逆に「衣食足りて人権に目ざめる」ようになるのか、などと、紀元前の中国「管子」以来の慣用句を引いた。

 あとで気が付いたのだが、これにはやや解説がいる。中国の「礼節」とは、帝王に対する礼節であり、庶民間の礼儀ではない。「礼節」のかわりに「栄辱」が使われることもある。「東方礼儀の国」といえば、中国から冊封を受け、中国以上に儒教を重んじた朝鮮、特に李氏・朝鮮をさした。

 日本が「礼」をめぐって中国と打々発止のつばぜり合いをしたのは、7世紀607年のこと。有名な推古朝・聖徳太子の話である。

 日出ずるところの天子、書を日没するところの天子に致す。恙(つつが)なきや

 隋の煬帝(ようだい)に差し出す国書にこう書いた。怒ったのは煬帝。

 蕃夷の書、無礼なるもの有り、復たもって聞する勿れ

 2度と聞かせるな、と外務大臣に怒鳴りつけた。

 「謝罪しろ」と言ったかどうかはわからない。しかし翌年には、手土産を山積みにして答礼の使者を派遣、関係は見事に修復した。使者に会った天皇(おそらく聖徳太子)は、『隋書』によると次のようにコメントした。

  大唐は礼儀の国と聞いて朝貢の使いを出した。わたくしは夷(えびす)で、かたよった海中にあり、礼儀を知らない。

 と、よいしょ。あらかじめ、水面下で打ち合わせてあった筋書?かも知れない。今ならお見事な外交手腕である。このあと701年には、最初の遣唐使が楚州の沿岸に上陸した。所要の問答の後、唐人が言った。

 しばしば聞く、海東に大倭国あり、これを君子国という。人民豊楽にして、礼儀敦(あつ)くおこなわれる、と。いま、使人をみるに、儀容はなはだ浄(きよ)し。あに信(まこと)ならずや

 ここでもまた「礼儀」である。隋も唐も漢民族の王朝だが、元や清など多民族の帝王に支配された歴史もある。それだけに、中華思想というのは年季が入っており、アメリカの開拓魂と同様体質にしみこんでいる。こういったことを念頭に、長い友好の歴史を刻んできた隣国と付き合うのが大人の外交の智慧である。

 まちがっても、「悪しき隣人」と公言してはばからない枝野前幹事長ような人物を、表にだすことは避けなければならない。(以上歴史については、『日本の歴史』中公文庫ほかを参照)

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東アジア共同体」カテゴリの記事

コメント

『東アジア共同体』のカテゴリー名は実に良い名前ですね。
当方も今度の中国漁船拿捕事件に関連して『これは日本側が仕掛けた騒動ですよ』との趣旨の連載記事を書いているのですが、入れているのが以前からの『朝鮮、台湾、チベット』なので、カテゴリー名が何かしっくりといかないのです。
ですからこの際思いきって反戦塾さんのところのこのアイデアを頂いて『東アジア共同体』と真似をさせてもらいます。

欧州ですが色々あるようでも宗教的文化的には比較的均一なのですが東アジアは多様です。
ですからEUのような『共同体』は無理で内政不干渉とか政経分離の原則などの平和五原則とかその発展形のバンドン会議の10原則での共同体構想が正しいように思います。

投稿: 宗純 | 2010年10月14日 (木) 09時34分

 コメントありがとうございました。

 カテゴリ、真似していただくとは光栄です。「東アジア共同体」はもともとEC/EEC/EUの誕生も含め、平和の恒久化を目指すものとして、当塾で重視し収録してきました。

 ヨーロッパとは違う、という意見は当たりません。仏・独間の何百年にもわたる抗争、ツールの国境問題など、両国間の厳しい現実があったからこそ、石炭鉄鋼共同体が生まれました。

 ヨーロッパは、一神教(各派キリスト教)ですが、アジアは多神教という面で一致でき、東アジアに限れば、仏教や漢字文化圏という共通面もあります。一神教圏よりはまとまるのではないですか。

投稿: ましま | 2010年10月14日 (木) 10時06分

欧州と東アジアとの比較ですが、歴史を調べると欧州の方が国境線の移動であるとか国家の興亡や戦争が桁違いに激しくて、人口が激減したドイツの30年戦争や英仏100年戦争のように長いし厳しい。
欧州に比べれば他国との全面戦争で領土を積極的に奪いに行ったのは脱亜入欧で欧米の真似をした日本ぐらいで、インドパキスタンなんか3度も全面戦争しても占領しようとの意思が無い。
欧州ですが言語の基礎にラテン語があり隣国との間には語源が同じなので共通項があるようです。
良く似ているが勿論他国なので当たり前ですが違っている、
その『違い』が大きな問題になり騒動が起きる仕組みなのですが、アジアでは『其々の違い』を最初から認め合うことで争いを小さくする方向に動くのではないでしょうか。?
今度の騒動での反中感情ですが、日中の間の文化の近さが逆に悪い方に影響している気がしますね。
枝野前幹事長の『アメリカは日本と同じだが中国は別の国』的な発言がありましたが、これは何かの考え間違いで日米の間よりも日中の間の違いの方が人種的にも宗教的文化的にもはるかに小さいでしょう。

投稿: 宗純 | 2010年10月14日 (木) 13時42分

 鳩山、岡田をはじめ、東アジア共同体を口にするが、実は「戦略的互恵関係」と同列に置く程度で、共同体の本質を見定めていないように思います。

 「特定の問題について主権を共同体に委譲」、そこまで考えているでしょうか。文化の違いがあるとすれば、古くはカントに始まり、直接的にはチャーチル元英首相やオーストラリアのカレルギー伯の「汎欧州主義運動」への情熱と、各国議会人などの同調という歴史的経緯でしょう。

 東アジアには、その土壌が、特に日中韓ともににないことです。しかし、軍事、経済その他の軋轢が極限に達しないとそこへは至らないのでしょうか。

 世界が米、EU、中ソの3極化に向かいそうで、このままでは日本は置いて行かれますね。日米同盟の深化は日本が言っているだけで、アメリカからはおつさあい程度のことしか聞こえてきません。
 

投稿: ましま | 2010年10月15日 (金) 08時49分

ましまさん、「悪しき隣人」と言っているのは枝野元幹事長ではないでしょうか?確認していただけるとありがたいです。

投稿: カーク | 2010年10月16日 (土) 19時53分

カーク さま
ご指摘ありがとうございました。その通りです。訂正します。枝野さんでした。実は枝野さんは、野党議員時代から政策調整能力などで買っていた部分もあるのです。

 原口さんも枝野さんも今は冷や飯ぐみ。とたんに言いたい放題になりました。まるで野党気取り。民主党の悪いところです。それでどうやら筆がすべったらしい。m(_ _)m

投稿: ましま | 2010年10月16日 (土) 22時11分

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