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2010年9月13日 (月)

アメリカの文民統制

  昨日、沖縄県名護市の市議選が行われた。普天間基地移転先として受け入れに反対する稲嶺進市長派が定員27のうち16、容認派は11で、これまでの賛否同数中立3から中立がなくなり、反対派が5人の差をつけて優勢を確実にした。11月の知事選がどちらに転んでももう辺野古沖に基地はできない。

 それでも政府はまだ、日米合意実現で話し合いの余地があるとしつづけるのであろうか。こういうのを、市民・県民・国民そしてアメリカに対する「欺瞞」という。市民運動が原点の首相からは、何の解決策も示されていない。

 前回、「防衛白書を撃破せよ」というエントリーを掲げたが、その中で「抑止力論」を持ち出したのは日米どちらが先かを問い、いわゆる「抑止力」が虚構であるこを繰り返して強調した。一方、アメリカの国内世論や、米軍再編などのアメリカの世界戦略に照らし、まったく交渉の余地のないものではない、ということはアメリカの断片的な報道から知ることができる。

 つまり、アメリカはベストとはいわないがベターだ、といっているのに過ぎないのだ。これについて、かつて『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の著者、エズラ・ヴォーゲル氏を実父に持つカリフォルニア大学バークレー校政治学教授Steven Vogel (スティーヴン・ヴォーゲル)氏の、興味深いインタビュー記事を目にした。(ダイヤモンド・オンライン、9/13)
http://diamond.jp/articles/-/9357

 日本のマスコミにある日米関係悪化の論調に、まず「何と比較するかによって答えは違ってくると思うが、私は日米関係が揺れているとか、大変な時期にあるとかそういうことでないと思う。また、米国側が不信感をもっているというのは言い過ぎだろう」とした。

 そしてさらに「私はこれだけの規模の在日米軍基地は必要ないと思っている。すぐに大幅縮小したらアジアの安全保障に悪影響を与えかねないが、少しずつ縮小していけば何の問題もないだろう」と観測する。

 したがって、日米両政府は交渉をやり直すべきで、米国のためにもそうした方がよいとし、「米国の安全保障のために5万人規模の在日米軍が本当に必要なのかどうか考えるべきだ」と断定した。それが直ちにその方向に向かないことについて、次のようにいっている。

 実際、「沖縄に海兵隊は必要ない」と主張する専門家もいるが、米国政府はそれを海兵隊のトップになかなか言えない事情がある。これは日米関係だけの問題ではなく、日本の国内政治、米国の国内政治、それに米軍陸・海・空・海兵の統合運用体制の問題なのである。

 ここで「日本の国内政治」とだけしか触れていないが、「防衛白書を撃破せよ」で触れた沖縄米軍抑止力や核の傘など、日本から持ちかけた防衛・外交・官房官僚の現状維持攻勢をうかがわせるものがある。そして米国側の事情について次のようにいう。

 大統領が「在日米軍の規模を半分に縮小しよう」と言った場合、どこをどう切るかが問題となる。海兵隊を切ろうとすれば、当然海兵隊のトップが反発するだろうし、陸・海・空軍との関係も悪化する可能性がある。イラク、アフガニスタンの戦争を抱えるオバマ大統領としてはいま米軍内の問題を起こしたくないので、「普天間基地移設問題は従来の合意案に従ってほしい」と日本側に迫っているのだろう。

 オバマにとって、軍が優位に立つ事情はわからぬわけではない。シビリアン・コントロール、文民統制は、近代民主主義国家にとって金科玉条である。ブッシュが始めた条理なきイラクの戦争を、勝利とはいえない状態のもとで撤兵させ、増派したアフガンも戦火をパキスタンに広げて解決の見通しが立っていない。

 内向する軍部の不満がそのままオバマに向かう。殺し文句は「彼らは命をかけて国のために戦っている」である。日本の戦中にもよく使われた。「靖国の英霊に対し……」「特攻隊の赤心に恥じず……」などなど。日露戦争で見られたように犠牲者が多ければ多いほど、文民統制の困難さを増す。

  その点、日本の為政者の文民統制フリーハンドは、戦争をかかえるオバマの比ではない。前に塾頭は「普天間などオバマにとっては小さな問題」といったことがある。そう「小さな問題で大きな問題なのである」。たしかに、陸・海・空・海兵隊間の勢力争いがあり、日本でも陸・海軍の角逐が敗戦の原因といわれるほど激しいものだったことはよく知られている。

 現在でも予算比率が毎年同じという批判があるが、米軍基地問題と直接関係はない。政府は、沖縄県民と果てしない不毛の交渉をするのではなく、オバマの懐に飛び込んで彼を助けてやることを考えなくてはならないのではないか。

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